気候変動スタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀をしていましたが、気候変動スタートアップを創業するためスタンフォードにいます。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

書評・読書メモ

原民喜「鎮魂歌」

世界中から学生が集まる場所で、戦争と平和や、倫理の話になった。流血の有無にかかわらず、人々の苦しみや記憶と向き合い続けることは、リーダーに求められる普遍的な資質だと思う。過去に囚われては前に進めず、未来だけを語っても軽々しく感じられてしま…

「自省録」批判:理性・文明・自己啓発の非力さについて

「自省録」が示す理性の痛み ストア派の哲学者が、理性によって自らを導き、人生の苦境や世間の浅薄に感情を揺さぶられることなく、魂を解放しようとしていた基本姿勢に、学生時代の僕は感銘を受けた。 同時に社会に出て仕事を通じて様々な人と出会うにつれ…

書評「リフレクション」

リフレクションや学習の理論を学びたい人は、リーダーシップや組織論の重要理論、経営者の名言集でおなじみのテーマなどが随所で登場する本書を、物足りなく感じてしまうかもしれない。 ただ、忙しい日々の合間に、自分やチームなどで深い内省をサクッとやり…

藤沢武夫「松明は自分の手で」

「企業の中には、前を行くもののの灯りを頼りに、ついてゆく行き方をする会社もある。しかし、たとえ小さい松明であろうと、ホンダは自分でつくった松明を自分の手で掲げて、前の人たちには関係なく好きな道を歩んでいく企業とする」という言葉には、ベンチ…

"Scent of a Woman," "The Majestic,"「怒り」など

Series Bが終わってから数週間、深夜の電話会議がなくなった時間を利用して映画を観ていた。 アマゾンのレビューを見比べたり、知り合いにオススメを聞いたりしては、気に入った作品を観ていて、せっかくなので、簡単なレビューを書いてみる。 「Ford vs. Fe…

続山月記

高校生の時に読んで特に印象深かった文学作品に、教科書にも乗っている中島敦の「山月記」があります。 成績優秀で将来を嘱望されたこともある主人公が、自己に執着するあまり、最後は虎になってしまうという物語。 自分という存在に悩む多感な時期に読んだ…

135週目:2020年読んで良かった本(第一四半期編)

GWで読むオススメの本を紹介してほしいと質問箱に何件もリクエストを頂いたので、今年に入って読んだ本でとくに面白かった本を紹介します! ※本棚の写真はイメージ(願望)です。。。Photo by Alfons Morales on Unsplash 1. 「高橋是清自伝」 日本人初の…

「風立ちぬ」と堀越二郎「零戦」

海外在住者の特権であるNetflixジブリに待望の「風立ちぬ」が登場して、感銘を受けて衝動買いしてしまった一冊。 映画を見たのは大学卒業まじかで、ファイナンスやら戦略やら、外交やら、社会の先端を行く技術に大いなる期待を膨らませて、それを自分の将来…

屈原「漁夫の辞」

中国最古の選集である文選に採録されたこの短編は、楚の王族であった屈原が讒言により追放された実話に題をとっている。 初めてこの作品に触れた高校生の時は、さらっと読み流してしまったのだけど、正月休みにふとこの作品を目にして以来、頭から離れない。…

「アルキメデスの大戦」について

「アルキメデスの大戦」という映画を日本に帰る機内で見た。 第二次世界大戦の端緒が開かれる10年近く前の、戦艦建造をめぐる陰謀との戦い、そしてなお戦争へ向かっていく日本に、このフィクションの主人公である天才数学者が挑む、という内容。 巨艦巨砲主…

Komaza 59週目:「西郷南洲遺訓」と事業に学ぶこと

今週はこの2週間毎日睡眠を削って取り組んできた大仕事が無事に形になる。 来週のクロージングでひと段落と思うと、ようやく一仕事という感じ。 今週末は気分転換に、日本から持ってきた西郷南洲遺訓を読む。 西郷隆盛といえば、幕末という時代に殉じた代表…

Komaza 38週目:「万引き家族」から社会課題を考える

是枝監督の「万引き家族」が衝撃的だった。 ネットで前評判をチェックした時は、「時代を象徴している」とか「日本の暗部に焦点を当てた社会派」だとか、映画の強いメッセージにこころ動かされる人が多い印象だったのだけれど、実際の作品を見た感想はむしろ…

Komaza 26週目:吉川英治「三国志」を読む

このところ、人生に悩んでいる。 ケニアに来て半年が経ち、仕事も充実して、順風満帆なのだけれど、むしろそれが恐ろしい。 うまくいっているということは、挑戦が不足しているということでもあるし、目の前の仕事に没入する姿勢は、忙しさの上では勤勉でも…

斉須政雄「調理場という戦場」

久しぶりの読書ネタは、三田にある高級フレンチレストラン、コート・ドールの斉須政雄シェフの修行時代を描いた一冊。 もともとはライフネット生命の岩瀬さんが講演でおすすめしていたのがきっかけで手にとった本で、歴史上の人物の伝記や自叙伝を含め数百冊…

「不安な個人、立ちすくむ国家」

今週ソーシャルセクター界隈の人々の間で、経産省が発表した「不安な個人、立ちすくむ国家」という資料が波紋を呼んだ。 この資料は、産業構造審議会という2001年から続く会議体の配布資料として、公表されたものだ。 1ページ目をめくると飛び込んでくる「…

映画「沈黙」とあいまい文化の恐ろしさ

遠藤周作が1960年代に書き下ろした原作をマーティン・スコセッシ監督が手がけた映画「沈黙」を観てきたので感想を書き留めたい。 ネタバレもあるので、まだ見てない人はご注意ください。 徳川幕府がようやく安定期を迎える17世紀中盤の日本を舞台に、隠れキ…

働き方の見直し

まだまだ若輩の自分が働き方を語る資格など全くないのだけれど、先月体を壊してから働き方だけでなく生活全般を見直す必要性を痛感しつつあるので、これまでの反省をしてみたいと思う。 ちなみに、今回この投稿をしたのも、「うまくいかない原因は、常に自分…

修行期間

日本におけるマイクロファイナンス投資の第一人者(というよりほぼ唯一のビジネス実践者)の慎泰俊氏のブログや独学で建築を修めて世界で評価される安藤忠雄氏の回顧録など、自分がこれはと感じる先達が若い時に刺激を受けたと激賞してやまない本がある。 し…

Samuel Ullman "Youth"

安藤忠雄の本の「私の履歴書」の中にSamuel Ullman (1840-1924)というアメリカの詩人の詩が出てきて、非常に印象的なので備忘録代わりに。現地では無名だったこの詩人の詩をどこから出てきたのか、日本人が先に取り上げて里帰りをしたのだとか。アラバマ州に…

リラックスする時に眺めて楽しむ本

この前、「リラックスする時は何をしているのか?」と友人から聞かれたので、リラックスする時に読む本を紹介したい。 普段はビジネスや金融、ソーシャルイノベーション分野のコテコテの本やコンサルのレポートが多いので、その合間にビールでも飲みながら寝…

「シン・ゴジラ」考

巷で物議を醸しているシン・ゴジラを観てきたので雑感をば。 ①3.11の再演と日本社会の風刺・批判 今回の作品は疑いもなく、3.11の再演である。 海からやってくる人知を超えた自然災害と、それに対し機能不全となる日本社会のありようがこれでもかと言うほど…

画鬼・暁斎展

今日は仕事の帰りに、オフィスの近くで開かれた江戸末期・明治初期の絵師川鍋暁斎と建築家ジョサイア・コンドルを特集した美術展に寄ってきた。 コンドルについては、明治維新の改革の嵐の中で、日本の形の上での西欧化を担った重要な建築家として知っていた…

「不毛地帯」

初めて山崎豊子を読んだのは、中学2年のころで、国語の先生から勧められた、「沈まぬ太陽」を皮切りに「華麗なる一族」、「不毛地帯」と現実以上にリアルでスリリングな社会小説として、描かれる人々の生き様の不安や悲しさに戸惑いながらも愛読してきた。 …

夏目漱石からの手紙

「勉強をしますか。何か書きますか。君方は新時代の作家になる積でせう。僕も其積であなた方の將來を見てゐます。どうぞ偉くなつて下さい。然し無暗にあせつては不可ません。たゞ牛のやうに圖々しく進んで行くのが大事です。」 若き日の久米正雄と芥川龍之介…

秋元康考

気分転換に日本で放映された秋元康の密着番組を見ていて、これは、と思った部分を。 AKBだけでなく何世代も前の美空ひばりの作詞まで手がける秋元康の、超時代的なすごさはどこからくるのか疑問に思っていただけに、自分自身がプロジェクトに向き合う上で学…

WIRED CONFERENCE 2013

WIRED CONFERENCE 2013というイベントに行ってきた。そもそもWIREDはアメリカで創設された「デジタル・カルチャー誌」であり、日本へ上陸したのはごく数年前のことである。もともと、GQというこちらも世界各国で出版されているカルチャー誌と同系列の季刊誌…