ケニアスタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

Komaza 164週目:年末に向けた追い込み

今週もまあ、本当に忙しかった。

立上げ期のプロジェクトが2本あり、新メンバーをオンボードしつつ、僕単体で3件のプロジェクトを巻き取るという荒業をしており、なまっていたアナリストスキルと複雑な新プロジェクトのワークストリーム整理で脳みそを雑巾のように絞られた。

とにかくも、僕一人ではとても回らないので、新しくチームメンバーを採用して、権限を委譲して、僕自身は大局観とステークホルダーマネジメントに注力する体制をいち早く作らないといけない。

9月からチーム拡充をしてきたのも大詰めで、慌ただしいながらも、チームというかプロジェクトのポートフォリオができてきたのを感じる。

同時に、年内の2週間をいかに有効活用するか、来年所からがっつり仕事をキックオフできるかはこの一週間にかかっているといっても過言ではないので、最後のエネルギーを振り絞って向かう所存。

 

日本ではコロナが再燃しつつあるようで、今年のお正月はケニアで過ごすことになりそうな雲行き。

自宅に籠りきりで本を読んだり勉強をしたり、考え事をしようともくろんでいる。

家族や友人に会えないのは残念ながら、この数年間まともな正月がなかったので、しっかりインプットに時間をとる良い機会かもしれない。

 

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(家財道具は増やさないように注意しているのだけれど、カップは例外。コロナで退去したフランス人が出雲焼の茶器を売っており、一目惚れして買ってしまった。。。)

 

 

ケニアから見たアフリカスタートアップでのキャリア形成

ケニアのスタートアップに限らず、成長する企業に欠かせないのが人材だ。

知り合いなどと「いいプログラマーはいないか」とか、「どこのヘッドハンターが優秀か」とかそんな話ばかりしていた時に、ふと外国人としてスタートアップに参画している自分も広い目で見ればこの人材マーケットの一部なのだと実感する出来事があった。

ときどきTwitterなどでキャリア相談を受ける機会も増えてきたので、例によって独断と偏見に満ちた印象論で、当地から見たアフリカのスタートアップでのキャリア形成について概観してみたい。

 

エントリー

3年前にケニアにやってきたとき、僕の肩書はSenior Fellowというもの。

とりあえず優秀でイキのいい若者をリクルートするためのポジションはスタートアップやNGOにも数多く存在する。

東アフリカのローカル優秀層は大企業志向が強めな印象なので、案外スタートアップのようにとがったことをやっている事業者は人材獲得に苦心していたりする。

したがって、日本や海外出身であっても投資銀行や戦略コンサルなどグローバルブランドの経験を持っていると仕事を見つけるのには困らないと思われる。

いきなり起業したりも可能ではあるものの、ビザや生活環境、事業開始のための下準備などを考えると、適当にバイト感覚でこうしたポジションにとりあえず入ってみるのもいい気がする。

ちなみに、当地の人材流動性は高く、若手ポジションの場合2年くらいで転職するケースも少なくないし、18か月とか20か月とかも目にする。

 

プロフェッショナル

開発もスタートアップも基本的にはGlobal Northから資金が流入するのがアフリカ投資とビジネスの流れ。

最後の巨大市場などともてはやされてグローバル企業の進出も盛んな昨今、プロフェッショナル職の需要は高いといえる。

コンサルファームにしても、MBB(ケニアはMcKinseyとBCGがある)に加えて、新興国のスペシャリストDalbergや地場のアドバイザリー(Open Capital Advisors, CrossBoundary, etc.)は常に優秀なプロフェッショナルを求めている。

エントリーで述べた通り、こうしたファームに実務経験を売り込んでいきなり転職も可能だろうし、当地のベンチャーなどで数か月~1年くらい経験を積んで、レジュメに「アフリカ」スタンプを押したうえで応募するのもアリ。

スタートアップを外国人として創業したり創業メンバーでジョインする場合にもこうした経歴・ネットワークは役に立つ。

 

起業家

起業はしたことがないので、あくまでも目測ベースだが、いきなり飛び込んで起業するケース、プロフェッショナルファームなどで仕事をして副業的に始めるケース、MBAなど海外からアイデアをもって乗り込んでいくケース、などパターンは多種多様。

本人の経験・スキルセット・バックグラウンドによって戦い方は変わってくる(当たり前か)。

外国人起業という目線で考えると、先進国で得た教育・経験をレバレッジする、先進国からの投資家を引っ張ってくる、あたりが現地人起業家との差別化ポイントと思われる。

いまのところ、スタートアップとVC界隈はローカル起業家と外国人起業家それぞれコミュニティがあり、外国人には資金面・ブランディング面で優位性があるように見える。

一方で、ナイジェリアのようにローカル人材の質・量ともに充実している市場であれば、徐々にローカル起業家が強く、アフリカ全体として外国人としてのメリットは薄れていく気がする。

これはある意味、スタートアップという事業のあり方を知っていて行動を起こした人への先行者利益のようになっている。

外国人がローカルマーケットに先進国モデルのサービスを提供するのはメリットもある反面、ローカル起業家が出てきて主流化していくことが健康的なトレンドだと思う。

 

ちなみに、インパクト投資業界では、投資家の8割が外国人であり、投資先の9割がファウンダーに欧米人が含まれていたという衝撃的なレポートもある。

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CXO(特にCFO)

このあたりは圧倒的にExpatが強い印象。

そもそもローカルで外資企業が本格展開しはじめたのがこの10年程度なので経験豊かなマネジメント人材そのものが、外資系大企業にロックインされているか、自分で事業をやってしまっているかで、出回っていない。

Expatでみればこの20年程のNGOブームやアフリカブームでやってきた人たちが、「経験豊かなグローバル人材」として散見される。

この層は40代ーで家族もいて冷めた目でマーケットのブームを見つつも、こなれた仕事をする印象。

最近多いのは、20代を先進国のプロフェッショナルファームで過ごし、アフリカにやってきて同じくアドバイザリーや投資ファンドで経験を積んだ20代後半から30代中盤。

とりわけ、資金調達やCXO的な経験は、それなりに優秀な人ならあっという間に身に着けられるので(新興国の評価基準ではという意味、先進国のようにプラクティスが固まっていないので基本的に体力・知力勝負)、この層がじわじわ増えているのではないか。

アフリカは絶賛アドバイザー・投資家バブルが到来中なので、各社絶賛採用中ではあるものの、Foot Soldierのニーズが依然として高くマネジャー層は意外とリテインされずに放出されて、やりがいを求める経験豊かな働き盛りのプロフェッショナルExpat層がスタートアップの経営幹部化していくのではないかと予想している。

自分の場合は、Fellowという超歩兵からのたたき上げキャリアでたまたま最初に入った会社に残っているが、こういうケースはとりわけファイナンス・投資・戦略のカテゴリでは珍しいパターン(もともとは適当に経験を積んであとは現地で考える戦略であった)。

起業家層は、ローカルに根差すことが強みになるが、プロフェッショナル経営幹部層は、グローバル基準での職業経験が超重要なので、引き続きExpat人材の需要が高いと思われる。

一方、シニアな人たち(大手会計事務所のパートナー、投資銀行の元MDなど)がセミリタイア後のキャリアとして一本釣りされるケースも増えてきているようなので、若手・中堅レベルであれば先進国でのプロフェッショナルファーム経験と新興国での実務経験の両方がないとCXOは難しくなっていく気がする。

そもそも、ファウンダーたちと対等に話ができたり、噂ベースでの情報網が大切なマーケットなので、現地に来てみることがグローバル水準で優秀であることよりも重要になる可能性が高い。

 

以上、いつも思っていることを書き並べてみた。

たくさんのスタートアップがしのぎを削っていく中で、今後も一貫してローカル人材の活躍は増えていくはず。

とりわけ、スタートアップは経験が最大の武器になる可能性が高く、今この時点でExpatにある強みも数年後にはローカル人材に吸収されていく可能性も十分ある(ケニア含め、人口のボリュームゾーンが20代の人口構成は伸びしろ満載)。

なので、興味があるなら下手に準備するよりも最低限の実務経験と根性をもって、乗り込んでみるのも悪くないように思う。

新興国スタートアップやアフリカでのキャリアに興味をもっている方のご参考になれば幸いである。

Komaza 161-163週目:町火消からの脱却

この2週間をほぼKilifiにいるチームと過ごして、週末にナイロビに戻り、月曜日にミーティングをしてまたKilifi。

当初は数週間おきに拠点を行き来する予定が、突発的なイベントですっかり振り回されている。

Kilifiはすっかり夏らしくなってきて、それなりに暑い。

 

先週からは新しいシニアマネージャーが入ってきて、旗艦プロジェクトの一つを丸々お願いすべく、日々ミーティングを入れている。

リモートワークでも十分に稼働するチームであっても、やはり対面で相談したりホワイトボードの前で侃侃諤諤の議論をすると、格段に生産性が高まる。

個別の戦闘力を統合していく作業は、対面でスケッチしながらの方が確実にやりやすい。

「WFHでも大丈夫」と「WFHの方が効率的」は全くニュアンスが違うのだと改めて認識した。

 

一か月ほど前に、このブログを書いたときはすべてのプロジェクトを半ば自分でやろうとして、途方もない量の仕事に忙殺されていた。

自分が常に先頭に立って指揮をとり、町火消しのように炎上している課題に突っ込んでいく、よく言えばハンズオン、実際のところ専制型リーダーシップである。

状況が緊迫しているWartime CFOとしては教科書的なアプローチであるものの、チームの育成や才能を生かすという観点で、専制型リーダーシップには限界がある。

そもそも9月ごろから、ハンズオンですべての案件を把握し、事務を処理できるだけの能力がないことがはっきりしてきて、これはダメだと観念して優秀なチームメンバーをそろえ、彼らに実務のほとんどを任せる方式に切り替えることにした。

幸いなことに、募集要項を出してもいないのに、ロンドンのBig 4やナイロビの投資銀行を経験した優秀な候補がレファレンスで上がってきて、気づいたらチームが出来上がっていた(弊チーム、常在戦場ならぬ常在ファンドレイズの精神が染みついており、いろんなところで案件や人材が獲得されがち。ただ経営的には、採用計画はもう少し早く着手しておくべきであった)。

 

チームが出来上がると、チームが自分がどうあるべきかを教えてくれるようになる。

Quality Controlに使っていた時間を、ディスカッションに使えるようになる。

これをやってくださいではなく、How can I help you?から会話が始まる。

「新しい領域を定義して切り開き、優れたメンバーを採用し、メンバーが成功できるように支援する」という当たり前のサイクルを当たり前に実践できるか。

まだまだ自分は未熟だなと痛感している。