135週目:2020年読んで良かった本(第一四半期編)
GWで読むオススメの本を紹介してほしいと質問箱に何件もリクエストを頂いたので、今年に入って読んだ本でとくに面白かった本を紹介します!
※本棚の写真はイメージ(願望)です。。。Photo by Alfons Morales on Unsplash
1. 「高橋是清自伝」
日本人初の(セントラル)バンカー、高橋是清の自叙伝。
今まで読んだ自伝シリーズのなかでトップ5に入る名作。
仕事ぶりが実に細やかであり、端的かつ的確な判断と行き届いた配慮に、背筋が伸びる。
これだけ記録が残っているあたり、そうとうマメな性格のメモ魔だったんだろう。
英語を勉強するために青年期に渡米するも、一度は騙されて奴隷として売られたり、南米の鉱山開発で詐欺にあって全財産を失ったり、決してエリート街道を描いていたわけでないのに、維新の元勲から絶大な信頼をもって、何かにつけて重役を任される生き様はドラマチック。
めんどくさい問題を理路整然と片付けるところからして、それなら君やってくれ、と言われる天才だったんではないか。
ハーヴィー・スペクターより仕事がデキる男、高橋是清について学びたい方はぜひ。
2.「酔って候」
司馬遼太郎の隠れた名作。
江戸時代末期から明治初期に活躍した歴史の巨人たち(かつ酒豪)を取り上げた短編集。
ストーリーがわかりやすいのに加え、迫力ある意思決定の場面が描かれ、やりとりから学ぶところが多い。
個人的には、大久保利通の出世術が大変趣深かった(読んでみてください!)。
3.「随筆 宮本武蔵」
吉川英治の宮本武蔵といえば、日本歴史小説の金字塔。
その取材に際して得た情報などをまとめた参考書。
小説には書き込めなかったディテールもさることながら、筆者が限られた史料を通じていかに武蔵の人間性を感じ取って、躍動たる小説の主人公を作り上げたかという内省的プロセスが素晴らしい。
「古人を観るのは、山を観るようなものである。観る者の心ひとつで、山のあり方は千差万別する。無用にも有用にも。遠くにも、身近にも。山に対して、山を観るがごとく、時をへだてて古人を観る。興趣は尽きない」という書き出しに心をつかまれる。
4.「稲盛和夫 最後の戦い」
2020年第一四半期で最も感銘を受けた一冊。
周囲から末期を汚すなと猛反対されながら、最後のご奉公といって引き受けたJAL再生の物語。
ファンド側の改善案との対立や、どっしりと座ってマネジメントと真剣勝負する、稲盛氏にしかできなかった意識改革の全容に息をのむ。
真似できないけれども、知っておかないといけない事例だと思う。
ちなみに、ベストセラーの「生き方」や度々特集される意識改革のイメージが先行する稲盛経営哲学がフワッとしているように感じた読者は、「アメーバ経営 」と「稲盛和夫の実学―経営と会計」を読んでいただくと、数字の鬼としての稲盛氏の経営姿勢が垣間見えてくる(会計士を雇わずに自前の会計管理システムで一円の誤差もなく創業時からキャッシュ管理していた。。。)
5.「排出権商人」
排出権ビジネスに絡む思惑やアクターを一通り頭に入れようと読んだ本。
内容そのものはシンプルでわかりやすい。
「世界を救うフレームワーク」との呼び声高いCarbon Creditも、制度化にはそれなりのダークなやりとりがある。
6.「起業家はどこで選択を誤るのか」
夢と希望にあふれて、執念深く成功を追い求める起業家が直面する典型的な失敗を解説する良著。
特筆すべきは、本書の大半が、ビジネスの作り方ではなく、人選(創業者間調整、タイトル、採用)と資本配分(資金ニーズに応じた資本戦略、コントロール)に置かれていること。
成功するスタートアップの秘密を知りたい人には肩透かしかもしれないけれど、実際にスタートアップ経営に携わる側からするとまさにFocal Point。
7.「孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきたすごいPDCA」
タイトルのとおり、ソフトバンク孫社長の社長室長=トラブルシューターとしての経験をいかんなく放り込んだ一冊。
優等生的なタスクマネジメントとは対極的に、ボトルネックにリソースを集中させ、ギリギリの線でGet Things Doneしていく方法を紹介。
無鉄砲な思い付きをスピーディーに実行していく、ベンチャー的方法論。
大企業でやったらたぶんめちゃくちゃ怒られるけど、だからソフトバンクは20年ほどの短期で日本の名だたる大企業を超えていけたのだろうと納得した一冊。