ケニアスタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

アセット系スタートアップにおける総合商社型財務の実践

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AirbnbやUberといったシェアリングエコノミーや、フィンテックのような金融業では、スタートアップにおいてもアセット(バランスシート)の効率化が大切になる。

自分が今仕事をしている林業スタートアップのKomazaは、旧来の不動産所有型のプランテーション林業をシェアリングエコノミー型にする、という事業を行っている。

ビジネスモデルの新旧はあれど、総合商社もまた、油田やプラントのような大型アセットからベンチャーに至るまで世界中で複雑なファイナンスをする、同じくバランスシートの効率化が大切なビジネスである。

 

自分がKomazaのCorporate Financeを立ち上げる際には、総合商社モデルの強みと思われる部分をかなり参考にした。

一般的には資金調達と日々の管理会計にフォーカスするだけの部門を、「攻めの財務」を掲げて、戦略やパートナーシップ、他部門のキャパシティビルディングに至るまで、4年間かけてカバレッジを拡大してきた。

Twitterで話題になる「商社の経験はスタートアップで役に立つのか?」ではないが、自分なりに役に立った考え方をまとめてみたい。

 

1. 専門性の内製化と学習強化サイクル

まずは、専門性の内製化。

総合商社の管理部や法務部、ストラクチャードファイナンス部、経営企画部には、当たりはずれはあれど、ずば抜けて優秀で経験豊かな人材がいる。

アドバイザーを使い倒しつつも、自分自身で調べ、考え、手を動かす最強の実務家集団であり、そういう筋肉質なチームが、社の命運を担うようなプロジェクトに参加していた。

社内人材として事業の詳細を把握しつつ、一流のアドバイザーと仕事をすることで専門家としても有能、というのが総合商社コーポレートの最優秀層である。

 

自社のCorporate Financeチームは、社外の専門家と積極的に協業しながら、社内においてもアドバイザーや投資家と同水準の人材を確保し、プロジェクトを通して知見を内在化させるアプローチをとった。

社内専門家を育成することは、迅速な社外リソースの活用、社内でのアドバイザリーなど転用可能性が極めて高く、有効である。

ひとつのプロジェクトで得た成果が、オペレーションにフィードバックされたり、さらに突っ込んだ案件に発展する、というのが理想的なあり方。

同時に、一緒に仕事をするアドバイザーの質には徹底的にこだわり、評判を聞いてはラブレターを書き、お互いに働きやすいチーム体制を試行錯誤しながら作っている。

 

2. 業務本部化

経営企画への役割の拡大も、「不毛地帯」の業務本部をモデルとして入社当初から構想した。

自分の仕事の良かった点は、入社当初から一貫してCEO直属であったことであり、ファイナンスを軸として自分のカバレッジを広げ、金融という言葉を使って事業に一貫性を持たせる方向性を模索した。

戦略というと大げさだが、スタートアップにおける意思決定のほとんどは、選択肢の整理、リスクリターンの分析、リソース配分の優先順位付け、資金調達などのマイルストーンの意図ある実行につきるわけで、ほぼファイナンスが関与することになる。

したがって、無理に戦略アドバイザー的な肩書を求めずとも、通常業務の一部として機会を見てアドバイスを提供するだけでも十分この役割は果たせる。

最終的な事業価値へのインパクトを定性的・定量的に分析し、把握する能力が、そのまま意思決定の一助となり、同時に経営企画機能の強化につながる、というポジティブなサイクルを回すのが大きなゴールだ。

細かい話をすると、一連の機能貢献のなかでも、意思決定のラストワンマイルへの助言が最も大切になるのだが、このあたりはまた機会をみて書いてみたい。

自分の商社時代の上司が業務部出身だったこともあり、このあたりの機微や立居振舞も、大いに勉強になった。

ちなみに、アドバイザリー機能だけでは「業務本部モデル」は完成せず、戦略思考からもたらされる周辺領域を事業化し、自前のValue Propositionを持つ事が必須。

 

3. 金融先兵機能

最後に金融先兵機能。

三菱商事の今は無き新産業金融事業グループは、古くは財務部に源流を持ち、30年以上にわたってヘッジファンドやバイアウト、ベンチャー投資、インフラ、不動産REITなど総合商社の持ちうるありとあらゆる金融的接点を事業化してきていた。

この根底にある思想が、金融こそがグローバル市場への窓であり、投資や資金調達を超えた事業的な価値があるという「金融先兵機能」だと、僕は理解している。

自分が新卒入社した部署は、そのなかでも新しいアセットクラス、新しい地域、新しい案件に特化した特殊な部署であり、様々な議論に触れた経験からインスピレーションを得た。

 

KomazaのCorporate Financeにおいても、チームの初期設計の段階から、投資家サイドのディールチームを模倣して作られており、単に受け身の業務を引き受けるのではなく、自前でディールを生み出し、開発銀行など特殊な金融機関を上手く活用した、攻める資金調達を行うこととした。

結果的に、当地の投資銀行やアドバイザー以上の知見と実績を社内のみで出せるようになりつつある。

ファイナンシングという機会をうまく使うことで、お金以上の価値を事業にもたらせるか、経営フェーズを次のレベルに高められるか、という点が重要になる。

戦略的パートナーシップや事業戦略への付加価値付けなども積極的にリードし、「先兵」としてのアクションをとり続けている。

こうした積み重ねが、カーボンクレジットなどのテクニカルでありながら、事業に直接食い込んだ領域の事業化を可能にした。

一般にサービス部門と考えられがちだからこそ、先兵としての自覚をもって攻め続けることに意味があるのではないかと考えている。 

 

まとめ

ケニアのベンチャーで財務というよくわからない自己紹介をすると「商社マンがなんでこんなことやってるの?」とよく聞かれるものの、商社金融という言葉の通りファイナンスと総合商社は切っても切り離せない関係にある。

ここに挙げたのは一例でしかないが、商社の多様な事業モデルや随所に溜まった知見は、宝の山であり、向き合い方ひとつでスタートアップにも応用が利く。

自分自身は2年余りしか在籍していなかったが、とてもいい経験をしたと思うので、感謝も込めてこの記事を書いてみた。

いつも通り、異論反論、コメント大歓迎です。