気候変動スタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀をしていましたが、気候変動スタートアップを創業するためスタンフォードにいます。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

Komaza 79週目:FAOでのプレゼン

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今週は月曜日から水曜日までローマ出張、そこからナイロビ出張、という移動の多い一週間だった。

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(FAOはムッソリーニ時代に植民地省が置かれていた建物で、目の前はチルコ・マッシモとコロッセウム、後ろにはカラカラ大浴場という絶景を眺めながら、屋上のカフェテリアでのむエスプレッソは格別←仕事です)
 
ローマでは、国連の食糧農業機関(FAO)で、サステナブル林業を推進するためのBlended Financeをテーマにラウンドテーブルがあり、NGOからビジネスへの転換、森林ファンドを通じた独自の資金調達を進めるKomazaのファイナンス戦略についてプレゼンをした。
 
業界の集まりは、直接の仕事上のインパクトにはつながりにくいと普段は辞退しているものの、Komazaがアフリカ林業や零細農家のビジネス支援という文脈でIndustry Makingをしていくことは、今後の資金調達にも役立つと考えて参加した。
 
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プレゼンの要旨は、こんな感じ。
  • アフリカ林業への投資額は、年間50兆円に上るClimate Financingの0.01%未満。人口増と経済成長、森林破壊という三重苦にあるアフリカの世界での立ち位置を考えると著しいUnderinvestment。
  • Blended Financeの役割は、コンセプト検証とグロースの二段階に分けられる。Komazaの場合は植林を零細農家と長期パートナーシップを使って行う高リスクな取り組みをNGOとして寄付を中心に乗り切った。その結果として、モデルの実用性が証明された際に株式会社化することによって、NGO時代の寄付は「Derisking Facility」として機能していた。
  • コンセプト検証後、Komazaは株式会社への改組を行った。この時点で、すでに完全な商業ベースへの移行を唱える声もあったが、結果的にはNGOとしての10年近い実績と商業ベースでのサステナブルなビジネス形態に注目が集まり、インパクト拡大をめざす投資家・ドナーからより高額の資金調達ができるようになった。また、ファイナンス目線の投資家が増えるにつれ、彼らからもより低コストな資金(寄付・低利融資など)を調達することへの期待が高まっている。結果として、グロース機関においても、Concessional Financeへの需要は下がるどころか増加しているということがKomazaの経験となっている。
  • Constitutionalityについては、国際機関・開発銀行などから慎重論が唱えられているが、Climate Financeについては再生エネルギー投資を中心に莫大な公的資金が注入されている。一部の金融機関は、分散型ソーラー発電をはじめとする再エネ投資と同程度のFinancial Sustainabilityを求めてきているが、こうした投資案件も結局はアセット側で政府が電力の定額買取に公金を投入しているからこそできるものであり、厳密なFinancial Sustainabilityを林業セクターのみに求めるのは的外れである。
  • 形だけのプロジェクトや資金提供はもちろん不要だが、Financial Sustainabilityを盾に資金提供を拒む姿勢は案件育成の観点からも産業育成の観点からもPublic Financeの役割に反している。事業側としては公的・民間の両方の株主の社会的・環境的・経済的インパクト期待に応えられるリターンを出せる「ストラクチャリング」を行っていくしかない。ソーシャルセクターにあるベンチャーにとって、High-Risk High-Returnの投資家は希少な存在であり、投資家の社会・環境的インパクトへの期待と経済的リターンへの期待をバランスするために異なる仕組みをつける必要があるのだ(下図参照)。

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あとは、今開発しているSmallholder Forestry Vehicleの説明もした。
 
FAOは、以前にも勉強のために来たことがあり、今回で二回目。Blended FinanceやClimate Financeへの興味が高じて、FAOのミッションにアドバイザーとして参加させてもらったりこしたこともあったので、当時お世話になった方々にも再会できた。2年前には登壇者になるなんて想像もしていなかったのがちょっと感慨深い。
 
 
あの時、キャリアの相談に親身になって乗ってくれた方々に改めて感謝したい。週末からはまた元の生活に戻るので、淡々とやるべき仕事を仕上げていきたい。
 
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 (ホテルの近くにもすぐに紀元前の遺構が残る)

 

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(出張恒例の食い倒れ、朝昼晩と仕事で埋まったので、間にカフェでうまいものを物色) f:id:tombear1991:20190401173944j:plain

(エスプレッソ込み5ユーロなのに感激。住みたい笑)