ケニアスタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

参謀の仕事

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大学時代から「人のために仕事をしたい」と言っていて、戦略コンサルに行った友人と話をしたら、「Trusted Advisorになるために経営者の下で働く意味はあるのか?」というテーマで議論になった。
その時はうまく言葉にできなかったのだけれど、スタートアップ参謀2.5年目での理解として、「参謀の役回り」について思うところを書いてみたい。
参謀(Chief of Staff)という大上段の言葉よりは、女房役というほうがあっている気がする。
 
  1. 相手本位でポジションを形成し、能力を強化する:自分の能力を最大化することも大事だけれど、それ以上にCEOの得手・不得手に合わせて自分の能力を変容させていくことが、組織の中で結果を出し続けていくために必須になる。これは、仕えるCEOを選ぶ時点である程度見切りをつけておかないと、後々難しいことになるので、一緒に仕事ができそうで、かつ補完的な立場を築けるか、考えてから仕事を引き受ける。その後は、CEOの仕事をつぶさに観察して評価し、そこから自分なりの付加価値をパッケージ化して強化していく。ロールプレイが明確になればなるほど、大胆な提案ができるようになる。
  2. 先手を読み続け、具体化し続ける:参謀がCEOから仕事を振られるというのは、緊急案件以外あってはいけない。むしろ緊急案件であっても、振られることを予想し事前の聞き取りと状況整理くらいはできていないといけない。先を読み、CEOが対極の判断に集中できるよう、具体的な詰めを行うのが参謀の基本動作。そのための準備と思考を怠らない。あと、CEOがあっぷあっぷしているときに、超長期の視点とかをもっていかない。ビジョンを描きつつも、半歩先を照らすことが大切であり、意思決定・行動までのハードルを最小化する努力をする。
  3. 外部からの知見を含む多様な視点を可視化する:社内外とのコミュニケーションを積極的に開拓する。インプットを峻別して、日常会話からミーティングあらゆるタイミングで吹き込む。自分の視点ではなく、社内外のあらゆるアクターの視点を理解したうえで、可視化することはセンシティブな事案で威力を発揮する。
  4. 節目でCEO目線を入れて同期する:管掌領域や担当案件での最適を目指すのは基本中の基本だが、時には自分がCEOの視点でどうすべきかを考える。特に、ミーティングなどでの感触がいまいちな場合は、部分最適解は明確なのに、全体最適に不安が残っているケースが多い。ここまでカバーしたうえで、判断を促すことが求められる。ちなみに、自分のCEO目線については、照れたり隠したりせずに仮説としてCEO本人にぶつけて大局観で同期できると、全般的に仕事がやりやすくなる。このあたりの会話は、自分の実力の限界値をさらすことにもなるので、紙芝居なりドキュメンとなりちゃんと準備してわかりやすく説明すること。「こいつ、わかっていない」と思われないことも大切なスキル。
  5. つべこべ言わずにデリバリーする:社外の独立プロフェッショナルと社内アドバイザーの最大の違いはここにある。プロフェッショナル・ファームでは、アドバイザーとして案件の趣旨に賛成できない場合に、Walk Awayすることは高貴な判断とされているが、社内の仕事というのはどのような立場でも、Get things doneである。なので、多少スマートさを犠牲にしても、やるかやらないかで不毛な議論をするくらいなら、さっさと終わらせてしまうほうが賢明、という場合が少なくない。このメンタルモデルの切り替えができないで、立場を失ったり何もできなくなっていくExコンサルは多い。社内アドバイザーは個別の案件ではなく、一連の案件の総体評価であることを忘れないこと。
  6. 相手のミスを許容し、自分のミスを許容しない:経営者というのは究極のジェネラリスト業であり、しかも急成長中のスタートアップは経営者がジェネラリストとしてもスペシャリストとしてもあらゆる方向にストレッチされている。その中でボールが落ちることはむしろ自然であり、そこにこだわって怒りを抱いたりしてはいけない。むしろ、ボールが落ちることを事前に察知して手をまわして置いたり、提案する施策の難易度を下げたり、こちらで案件責任を引き受けたりしておくことが黒子としての役回り。CEOのミスは自分のミスとして認めるべきで、自分のミスはきちんと明らかにしたうえで、対策する。一度の失敗を恐れない。
  7. 剣は抜かぬが華:メンターの方に頂いたアドバイスで、参謀として知りうる情報や持ちうる影響力の大きさゆえ、「やろうと思えばできてしまう」強制的な判断・行動は封印するということ。弱みを知る立場にいるからこそ、そういう話に付け込んだり、追い込んだりしない。剣を持っていることを相手がわかっているのなら、無理やり相手に強いたりしないでも十分出来ることがある。
  8. 率直なフィードバックと”How to Use Me":コンサルや投資銀行、大企業でジュニアとして研鑽を積んでいると、仕事が勝手に降ってきて、評価が勝手に与えられて、ポジションが勝手に変わっていくことに慣れてしまいがち。だからこそ、スタートアップの原則は仕事は自分で獲りに行くのを忘れてしまいがち。仕事の内容と自分の能力、お互いのコミュニケーションや個別の反論まで、きちんと自分からイニシアチブをとる。何度か同じような衝突・問題が出てきたら、個別事例を交えてどのように改善できるかをオープンに議論する。CEOは押し続けたらやめるとか不安になりがちなので、そこをこちら側から取り除いて、"How To Use Me"をすり合わせる。もちろん、攻撃的な批判や感情をぶつけるだけではフィードバックとはいえない。問題点を具体化し、パターンを説明し、自分の行動と相手の行動の両面での改善策まで提案する。フィードバックは素直に受ける。自分のVulnerabilityを先にさらすことでしか信頼関係は築けない。
  9. CEOは参謀ではなく、参謀はCEOではない:「誰よりも自分が今このイシューについて考えているのに!」と憤った時に、この当たり前の原点に戻ってこれるか。参謀として触れることになる情報やコンテキスト、個別の専門性から生まれる自分の見解をアドバイザーとして伝えることが参謀の仕事なのは間違いない。ただ、最終的にはCEOが意思決定者であり、その決定に対して頭ごなしに「間違っている!」と怒ることは、実は自分の権限の外にある。プロとしてのObligation to DissentはCEOとしての意思決定の下位にあることを、長く仕事をしていると忘れがちである。同じ戦略・戦術でも、アイデアの有効性は実行者のスタイルによって全く違ってくる。最終判断に対して、決してOverrideしようとしてはならない。参謀はCEOではないのだ。想いが強くなければ参謀は務まらないが、強すぎるそれは独善でしかない。唯一の例外は、倫理や法律の面で、一線を越える時で、その時は辞表を持って最後の箴言をするのがアドバイザーとしてのけじめになる。
いうまでもなく、これがすべてというわけでも完成形でもなく、あくまで通過点として、これからも精進し続けていきたい。