気候変動スタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀をしていましたが、気候変動スタートアップを創業するためスタンフォードにいます。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

180週目:弱者のチーム戦略

しびれる出来事が満載の一週間。それなりに大きなBombshellが投下されて、頭を絞った。

不確定要素やUncontrollableな外部要素が多いプロジェクトは、計画どおりに進めることが絶望的なので、全体観を振り返りながら、1‐2週間おきに主だったシナリオをいくつか想定して、優先順位を変えている。

各プロジェクトレベルでこれを重ねるだけでも必要な工数とチームリソースが削減できて、ボトルネックが定期的に変化する状況であっても、柔軟に対応できる。

短期的に回らない場面やスキルなどでギャップが生まれることを前提にリーンに少数精鋭チームを組み、どうにもならない場合はコンサルを躊躇なく起用する。

スタートアップにおいては時間のロスが最大の禁忌であり、理由なくチームの人材を増やしてオンボーディングに労力をとられたり、にわかの知識で失敗するのは避けるべきだ。

専門性が求められる領域で一番正しいのは、優秀なチームメンバーをプロジェクトマネジャーとして、経験豊かなアドバイザーと二人三脚で進んでもらうこと。

優秀なプロジェクトマネジャーは、どんどん課題をあぶりだしてぶつけることで解決スピードを上げられるし、その過程であっという間に知識移転が進む。

知的・肉体的に体力を消耗するのだが、実際新興国では専門家の知識だけでは課題解決できないことも少なくない。現場を熟知する事業側のマネージャーと経験豊かなアドバイザーが知恵を絞ってこその、付加価値なのである。

 

去年9月からチームの主眼を資金調達+特別プロジェクトのに段組みにした際に、ワークストリームの現実的な実現確度は50%程度と見込んでいたが、おそらく70%くらいで何とか着地できそう。

全部やるのは無理かもしれないが、すべてを計画するほどの大企業的なゆとりもない。

今のシステムは制約下で最大の成果を上げる弱者の戦略だと思っている。

ありがたいことに、チームのメンバーは食いついてきてくれている。

だからこそ、僕も人一倍食らいついて行く所存。ファイティングポーズを大切に。

179週目:正しさの限界点

今週は重たい交渉事が並走していた。

政府関係なり投資銀行なり、大企業なり、ESGやサステナビリティ、植林への関心が高まるにつれ、新しいステークホルダーとの接点が増えてきている。

業界としても世界の未来としても、ビジネス的に関心がなかったプレーヤーが参入するのは良い傾向で、業界用語では”Mainstreaming"(主流化)などと呼ぶ。

同時に、マクロな潮流として、新しいプレーヤーが新しい事業を始めるとき、現場には昔ながらの世界観になれたプレーヤーとの衝突が生まれる。

ある種必然的なのだけれど、小さな業界に往々にして存在する「線引き」や「前提」というようなものが、外から来たプレーヤーによって揺さぶられることは珍しくない。

受け手側の既存プレーヤーは、絶対に譲れない一線を守りつつ、慣習的に認めてきた条件を見直さなければならない。

ここがなかなか難しい。自分の信じる正しさのどこまでが、意味のある正しさなのか?

業界としても事業としても次のフェーズに進んでいく中、何を守り、何を譲るべきなのか?

「正しさ」と「新しさ」の最適解はどこにあるのか、悩みながら、意思決定から逃げずに、立ち続けていきたい。

178週目:Truth behind Udon

この一か月ほど、週末も仕事やらフェローシップやら追われ続けていたので、今週末は思い切って休みを取った。

複数同時進行で進めていた案件も無事に見えてきて、安心することはできないまでも、金曜日に疲れ果ててベッドに倒れ込んで、月曜までに難しい課題を解かないといけない(Or成果物を仕上げなければならない)とかはなくなって、意図的に気持ちを引き離す。

土曜日は朝一にマッサージを入れ、感覚がなくなりつつある肩・首を整え、買い出しをして、同世代の日本人のメンバーでワインテイスティングに参加、夜はうどんをナイロビのエキスパットの知人にふるまうという、それなりに忙しい日程を組んだ。

 

ワインテイスティングそのものの参加は実は初めてだったので、まさかケニアで経験するとは思いもよらず興味津々。

昼間っから飲むなんてめったにしないので、チーズをつまみに白2種、ロゼ1種、赤2種と十分に楽しむ。

言葉遊び好きとしては、毎回テイスティングの後に品評を求められるのが特に面白く、食事の一部としてではないワインの魅力に触れた気がする。

前職のワイン好きの上司は、若手時代にパリ駐在になった際に、毎日一本新しいワインを買って、産地・品種・ビンテージと所感をメモして覚えたといっていたけれど、やってみようかと思い始めた(時代も身分も違うので毎日は飲めません笑)。

Vivinoとかを試していた時期もあったのだが、振り返る機会がほぼないので、あまり体系だった知識になっていない。

 

Udon(今回作ったのはあくまでも日本食に餓えた海外在住者のお手製レシピなので、日本が誇る美食のうどんとは区別すべくこう書かせてもらう)をつくろうと思い立ったのは金曜日の夜のこと。

以前にも一度トライしたのだけれど、打ち粉が足らずに麺がくっついて、巨大な餅状態になるという悲劇に見舞われて以来、リベンジの機会をうかがっていた。

料理好きで、なんでも自分でできてしまうスーパーサイヤ人な日本人の友人に相談したところ、知り合いも呼んでてんぷらUdonにしようということで意見が一致する。

ここは彼のすごいところなんだけれど、知り合いが知り合いを呼び、コロナの制限内ではあるが、結構な人数が集まってきて、慌てて量を増やす。

Udonの面白さは、粉をこねくり回したり、伸ばしたりというアクティビティでもあるので、うまく多国籍チームで回してもらいつつ、スープを作り、てんぷら(たまねぎと人参のかき揚げ、きのこ、エビ)を別ラインで回していく。

結果は大成功で、とりわけ、うどん未経験のメンバーが切ったほうとうサイズの麺を見た友人が機転を利かせて、てんぷら用のえびの頭をスープのダシにしたのがファインプレーだった。

来た人も満足、僕自身も慌ただしいながら楽しい時間だった。

余談だけれど、うどんの生地作りは性格が出るし、手際よくやると「さすが日本人!」となるので(前夜からYouTubeで色々研究済み)、Konmari風に「日本ではうどん作りに人生への姿勢が顕れると認識されており、うどんは人格的な修養の一部」とか適当なことを言って周りを感心させるのもExpat外交的にはアリなのではないか。

 

明日からもお仕事頑張りたい!

 

 

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大好評のエビスープ。意図せずして生まれた太麺(笑)との相性が抜群であった。

 

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かき揚げを先に作って、しょうがタレで食べてもらいつつ、うどんをゆでるオペレーションはなかなか秀逸。またやりたい。

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丸々1時間割りばしでうどんをゆでて筋肉痛になる。。。



 

 

177週目:Comfort ZoneとExpertise

今週も引き続き忙しい。というか、これはもはや恒常化してNew Normalなのではないかと思い始めている。

連日朝から晩までミーティングに明け暮れ、合間に作業をこなし、まとまった思考と準備を週末に。

数週間は何とかなるが、これを定常化していくには体力・ルーティーン含め強化すべき点が少なくない。

 

さて、今週はなかなかしびれる出来事があった。

ケニアの政府機関にレターを届けるという一見シンプルなミッションなのだけれど、担当のお偉いさんがなかなか捕まらない。

直接話すことはできずに半ばあきらめて秘書に渡そうとすると、「これでは読んでもらえないだろう」と取り付く島もない。”This is really shabby job"という言葉に思わず感情もこもる。

時間をかけて推敲した内容なので、「何がいけないのか」と問いただすと、「宛名の書き方がなっていない」とのこと。

三菱商事で高級文房具をしていた時に、ビジネスレターは散々書いていたので、思わず”This is global business standard!"と反問しそうになって、ハッとした。

「自分の枠組み=世界の枠組み=目の前にいる特定の文化的文脈のステークホルダーの枠組み」と思い込んで、ケニアという文化的に特異な地域で、政府機関というローカルに根差したステークホルダーへの対応を、自分の経験則で断罪しようとしていた愚かさに唖然とする。

今の仕事をして4年になり、面倒なことや想定外のことばかり扱ってきた。その意味で、現職における出来事のほとんどは「想定の範囲内」というやつになりつつある。

今回の出来事は、狭い領域であれエキスパートとして経験を積みつつあるからこそできる仕事がある一方で、当たり前という概念が想像以上に自分の中で膨らんでいると直感するいい機会になった。

これは、Expertiseではなく、Comfort Zoneという奴で、まさに成長の敵というべき存在だ。

特定の分野で経験を積み、思考を重ね、理解を深めることはExpertiseの醸成につながり、ひいては自分の可能性を広げてくれる。ただ、よきExpertは常に世界の広さを認識して、Comfort Zoneという自分の城に引きこもらないよう、注意を怠らないものだと思う。

 

などということを考えてぶつぶつ言いながら、ケニアの公文書をいくつかダウンロードして、昔かたぎなお役所英語でレターを書き直している。華金である。

 

 

176週目:新体制

今週は大きなアウトプットが2本重なっており、先週末はずっと仕事に埋もれていた。

その間、いろいろとため込んだ雑務を今週末は片付けることになって、週末なのに結局ほぼ仕事をしていた。

金曜日の夜に、珍しく外食にお誘い頂いたのが唯一の気分転換だった。

 

新卒の会社では、自分からあれこれ手を出したり、過去の案件資料を読み漁ったりして、週末仕事もよくしたものだが、ベンチャー経営に携わるようになって、意思決定とレビューの総量には限りがあるということを実感している。

なんだかだましだましやっているようで、隙間時間やちょっとしたやる気の上下をうまく使って、作業をこなしていった。

参加しているボッシュ財団のフェローシップのインタビューは最たるもので、一見気軽そうに見えて、レビュアーや周りのフェローが政策・公共課題・ビジネスのプロフェッショナルだったりするので、大学時代のエッセー宜しくデータや論文を探しているうちにあっという間に時間が過ぎてしまった。

本当はネコチャンとたわむれるだけ、とか昼からビールを飲むとか、ゆっくり本を読むとかしたいのだけれど、この2週間半くらい特定のプロジェクトに注力したツケが回ってきているので、そうもいかず、難しい。

来週こそは休むのだと決意している。ホテルでも予約してワーケーションしようかしら。

 

 

昨年の資金調達後から、チームの大改革・大増強を進めてきて、気づけばフルタイムのプロフェッショナル5人に加えて、コンサル10人ほどの一大部署が出来上がってしまった。

もともと人は少ないほうがいいという主義なので、人員増を認めずに来たのだけれど、一般的に数人の部門で回す仕事を一人の優秀なメンバーに全部任せるという横暴なベンチャー精神で筋肉質なチームが完成しつつある。

そうした実際上の変化を踏まえて、今月から部署がCorporate FinanceからCorporate Finance & Strategyになる。

部署名そのものは仕事の実績の後追いでしかないのだけれど、チームのメンバーはこれまで自分の職務領域を超える課題に取り組んできたわけで、チームの努力を正当に反映することは意味があるのだと思っている。

 

今の会社に入りたての頃、どういう風な職位・職制がよいか大先輩に相談した時に、「どこの馬の骨ともつかないベンチャーでえらい役職になってもしょうがない。何をすべきかに注力しろ。タイトルが欲しいなら三菱商事でやれ」と諭されたのが、今も鮮烈な印象を残している。

それ以来、とにかくやるべき仕事をCEOになったつもりで考えて、愚直に提案し続け、気づけばとんでもないスコープになってしまっている。

もっとうまくやる方法はあるのだと思うのだけれど、課題から逃げるという姿勢、うまく乗りこなすという妥協が心の底から嫌いなので、どうしようもない。

Work as Lifeのせめてもの救いは、仕事で成果を上げることだと信じて、無理やり手を上げ、何とかし続けるという冒険的な道のりに自分を追い込む。

追い込まれれば、必ず本気になり、気づくと非線形的な成果を生む。ベンチャーにおける自分の仕事への向かい方は、この残念なプロセスの繰り返しでしかない。

いざ部署やらタイトルやらが変わってみると、思いのほか感慨が出てきたりするのだが、そんなものは早々にはねのけて、目の前の課題に向き合っていきたい。

無心で仕事をし続けることでしか、成果は上がらない。