ケニアスタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

不可能に挑む

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挑戦するとは、どういうことなのだろうか、と考えることがある。

自分の限界を超えるという意味だったり、失敗するかもしれない恐怖を振り切るという意味だったり、使う人によって意外と定義が違う言葉のような気がする。

自分のブログを読み返してみても、「挑戦」という言葉は何度も登場する。

直感的には、挑戦とは、やる意義・価値が分かっているが、道のりが遠くはっきりとしないものだ。

成功に到る勝ち筋は、感覚的にはあるものの、具体的にどうなるかはわかっていない。

挑戦するからには、「できるだろう」「なんとかなるだろう」という微かな自信はあるが、それなりに苦労したり犠牲を強いられるのも分かっている。

プロセスが複雑で大変だが道筋がはっきりみえているものは、量的には挑戦とよべても、本質的には挑戦ではない。

 

挑戦は、想像力や実行力の限界を超える過程を意味する。

スポーツや芸術など、プレーヤー個人が高みを目指す領域では、挑戦の対象はしばしば競争相手よりも自分自身となる。

対照的に、実業の世界において、挑戦が克服する対象を自分の限界と捉えるのは狭量な考え方かもしれない。

世界は広く、多種多様なバックグラウンドの人と仕事ができる実業において、自分自身の延長上は未来の可能性のごく一部でしかないからだ。

優れた自分の先に、優れた挑戦があるとは限らない。

事業が社会に向けられた挑戦であるのなら、挑戦の主語は自分だけではなくチームであり、究極的には社会そのものになるはずだ。

 

本来、挑戦は、スケールが個人を超えるときに真価を発揮する。

Elon Muskの10年近く前のインタビューを観ていて、EVも民間ロケットも、夢のまた夢だった時代に、Most likely to failだが、Worth taking a shotだ、といって自分でも出来るか分からない中で私財をつぎ込んだ彼の「挑戦」のスケールに、圧倒された。

彼の挑戦には、出来るか出来ないかが、そもそも基準として存在していないように思える。

やるべきか、否か。価値のある未来か、否か。

そこだけを見つめることで、本人の想像力はもとより人類の想像力を超えた挑戦が生まれる。

ほとんどの人は懐疑的かもしれない。熱狂的なサポーターや奇特な支援者、そしてしばしば奇跡的なめぐり合せが、ひとつずつ不可能を可能にしていくことで、挑戦は具現化される。

ほどなくして挑戦は、リーダーになる個人のものである以上に、チームで共有されるものとなる。

自分の限界を問う以上に、世界に想像力の限界を問いかけるような挑戦は、人類の歴史を前に進めるようになる。

 

挑戦におけるもっともクリエイティブな瞬間は、到達点を定義するときだ。

そこから始まる困難の日々も、無謀な到達点を目指す中で生まれる創意工夫も、じつは二次的な意味しか持たない。

そして、挑戦における最も美しい瞬間は、到達点が、挑戦を始めた本人によるかどうかによらず、不可能ではないと証明されたときだ。

到達点の定義と達成の喜び、その二つだけに確信があるのなら、どんな困難が待ち受けようとも、挑戦する価値がある。

 

インタビュー記事やテレビ取材を見る限り、Elon Muskは、「そんなアイデアは絶対にうまくいかない」と批判されても、「絶対にうまくいく」と反論することがない。

失敗の可能性や失敗しうる数多の理由をぐっと飲み込んだうえで、挑戦が人類の未来にどんな意味があるのかだけを答える。

できるかどうかへの不安を上回る、やってみる価値への確信が、彼の挑戦の原動力のような気がする。

ただ、挑戦が人類にとって意義を持っても、挑戦を率いる本人にも人間としての限界はある。

Elon本人はPayPalで築いた資産と借入200百万ドル超をTeslaとSpaceXに投入して、それでも何度となくキャッシュがつきそうになっている。

Charlie MungerにTeslaなんて倒産すると罵倒されたときや、少年時代のヒーローだったニール・アームストロング宇宙飛行士にSpaceXを否定されたとき、彼は”Sad”という短い言葉で自分の気持ちを形容していた。

 

到達点と意義がわかっていても、その間を走り続ける不安と葛藤は、本人以外には想像できない世界だろうし、ここにもう一つ、個人としての挑戦が存在している。

10年以上「不可能」と言われてなお挑戦を続けるには、超人的な努力をしながらも可能か不可能かを運命にゆだねばならない。

可能であって欲しいという願いの世界の中で、自分の挑戦の意義のみを問い続けるしかない。

不可能に挑む者が世に問うのは、試みの可能性ではなく、未来の意義であろう。

 

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