135週目:2020年読んで良かった本(第一四半期編)
1. 「高橋是清自伝」
2.「酔って候」
3.「随筆 宮本武蔵」
4.「稲盛和夫 最後の戦い」
5.「排出権商人」
6.「起業家はどこで選択を誤るのか」
7.「孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきたすごいPDCA」
133-134週目:巣ごもり対応@ナイロビ
デスクをばっちり戦闘態勢に整える
外出制限でもいつでも運動できるローイングマシンも導入
COVID19後のインパクト投資:アフリカベンチャーから見た世界
COVID-19の流行で世界が活動を急停止してから、1か月半が経った。
3月中旬のようなパニックはないものの、完全な収束までは2年かかるとのIMFの発表もあり、長期的に経済のあり方が一変することは間違いない。
アフリカのスタートアップも社会の混乱で直撃を受けており、外出禁止や移動制限といったオペレーションそのものへの影響と、ファンドレイズ環境の急激な悪化やコンサル・投資家の移動制限というインフラへのダメージが見受けられる。
直近でどんな影響が出ているかは、メディアやSNSでも書かれているので、新興国・開発・ソーシャルセクターに限って、ポストコロナの予想をしてみたい。
マクロ環境の変化:
コロナ危機の特徴は金融制度だけでなく、全世界レベルで経済活動そのものを止めさせてしまったこと。したがって、お金の移動が難しくなる資本市場の変化に加えて、人の移動が難しくなることが、とりわけ新興国で事業をする上で最大の障壁になると思う。最終的には、集団免疫の獲得やワクチン接種の拡大で対応できるものの、移動というのは「出発元」と「移動先」の両方があって初めて意味を持つので、実質的にグローバルレベルで免疫獲得が進まないとこの制約は外れない。経済活動そのものは、様々な工夫で再開されていくはずだけれど、経済活動の行動パターンは大きく影響される。とりわけ、中国やインドとは対極的に、アフリカのような多数の中小マーケットが散らばっている事業環境では、一国にリソースを集中させるには規模が小さく、複数国をマネージするには個別の国の制約に縛られすぎることが大きな障害になってくる。
エコシステム:現場でのプレゼンスの有無で二極化が進む
- 脱イベント化とローカル化:ベンチャー投資業界あるあるで、さらに新興国投資あるあるなのが、各地で毎月のように開かれる国際カンファレンス。シリコンバレーやニューヨークのように一都市に起業家と投資家が集中していない新興国投資において、こうしたカンファレンスを飛び回ることも「仕事」だった。一方、移動そのものが規制されている中で、ヨーロッパのカンファレンスであったケニアの起業家と案件を~みたいなケースが減ってくる。企業側はもちろん資金を求めて旅をし続けるわけだけれど、それでもこれまでのように国際イベントでSpontaneousな出会いを求めることが難しくなる。一方、ローカルに根差し、現地にチームを持っている投資家が強くなる。あるいは、現地にチームを持っているコンサルなどのアドバイザリーの役割が増大する。
- 若手プロフェッショナル人材の流入:コンサルや投資銀行、テックベンチャーなどバブル元から流れてくる優秀な若手層は、業界全体の底上げのドライバーになる。2008年の金融危機の際には、ファイナンスとコンサル出身者が続々とソーシャルセクターに流れ込み、この数年のインパクト投資ブームやソーシャル・ビジネスブームのけん引役となっていった。
- カンファレンス族の退出:老舗のアフリカ投資家の中には、先進国で一儲けしてから挑戦しに来ている熟練のビジネスパーソンが結構いる。彼らのおおくは母国へ一時避難していたり、リモートへの切り替えを余儀なくされており、フィジカルに感染リスクに耐えられない人がどこまで依然と同様に活動できるかは疑問点になる。国際機関のディレクター級とか、各地のセレモニーやカンファレンスを飛び回ってパネリストをすることに人生の半分使っているような人はどうするのだろう。
- 強者と弱者の二極化:ソーシングにせよファンドレイズにせよ、現場とリソースへ直接アクセスできるかできないかの差が明確になると予想される。移動そのものが制限され、カンファレンスのようなオープンで自然発生的なディールプロセスもなく、ディナーでの情報交換もない世界線で、情報を集め人間関係を広げていくことができるか。世界とキャッチアップできるか。遠隔地よりも現地のチーム、フットワークの軽さとフットワークに耐えられる肉体的・経済的体力、既存のネットワークからの情報交換、そういった強弱が一層鮮明になってくることになる。特に、この数年のふわっとしたインパクト投資やESG投資に惹かれて参入してきた層は、オペレーションのコミット度合いからしてふるいにかけられる。キラキラの経歴でネットワークを活用しつつ、現地にがっつりコミットしていることがこの10年の成功の礎になる。
投資家:再登場する開発機関と試されるインパクト投資家
- 素人投資家の退出と開発機関の再登場:ここ数年のアフリカベンチャーブームを支えたのは、老舗VCや開発銀行だけではなく、「アフリカのリープフロッグはクールでイノベーティブだ!」的な先進国のイケイケVCと「アフリカは最後のフロンティア云々」的な大企業の戦略投資。エコシステムを前に進めるうえでこうしたアクターの参加は不可欠である一方、相当甘い条件付けや不完全な環境理解も目についていた。彼らは教科書通り痛い目を見てエコシステムの肥しになっていくか、本国・本業がそれどころではなくて早晩撤退かのいづれかになると思う。当然ながら、欧米など本国から遠隔で投資していた人たちは、既に帰国していてしばらくは入国もできないわけで、物理的移動が不可能という理由だけでも新規案件はしばらく難しくなる。長期的にはこういう経験をした人たちが、アフリカに戻ってファンドを立ち上げたりするんだけれど、短期的にはこの数年の好況で浮いたお金を投資していた人たちが撤退し、政策ベースで資金を確保している開発機関からの投資が再びアフリカ投資を回していく原動力になっていく。現地事務所や御用コンサルなどキャパシティもあり、必要に応じてリモートDDなどもできている印象。なので、アフリカもベンチャーの時代だと張り切って、High Burn High Growthで勝負しに行こうとすると難しくなる可能性大。株主を選ぶためにキャッシュを節約するか、数年は変わらないと受け入れてエクイティストーリーを順応させるか。
- 黒船はインパクト投資・ESGブームの遺産:経済危機は新しいファンドレイズを難しくする反面、既にレイズされた未投資資金(ドライパウダー)は十分すぎるくらい残っていると予想される。インパクト投資だけでも、ここ数年で10兆円程度のAUMから50兆円まで急拡大していることから、少なくとも直近でレイズされた数十兆円が残っていることになる。投資家カテゴリー別のAUMを示した下図にもあるとおり、大半はAsset Managersが握っており、彼らがこの危機でも投資実行を続けていくことが、新興国のソーシャルベンチャーにとって生命線になってくる(Asset Managersの中にはETFや短期のアロケーションも含まれるので、Discountして考える必要はある)。そして、この数年の投資実行の成果が、アセットクラスとしてのインパクト投資の将来性を決定づけていくことになる。本当の意味でステージが整って来たといえる。
- 投資の長期化:2000年代ー2010年代初に調達されたパイオニア世代のファンドはエクジットが厳しくなるので、ファンド期間延長が必須。世界的にはベンチャーファンドのファンド期間は10年以下も珍しくないが、あらためてアフリカはじめとする新興国特化ファンドはファンド期間そのものを伸ばしていくようになる。JumiaのIPOなどもあったが、戦略的M&AなどExitの環境は10兆円の投資資金を用意したNasperのような例をのぞけば、まだ未成熟。なんとなく経済成長もあるし、数年でExitできるのではと甘い期待を抱いていた投資家が苦しむ一方、これまで投資家の圧力に屈して先進国見合いのExit期間を見込んでいたアフリカVCもPEファンドに見られる12+1+1のような形式が定着に流れていくきっかけになるかもしれない。
ソーシャル・ベンチャー:キャッシュ重視の堅実経営へシフトしつつ、この2年で差をつけに行く
- ポエム型から実業型へ:イノベーション万歳からキャッシュ万歳にパラダイムが変わるのは、2008年にも起こったこと。潮目の変化に一番敏感なのは投資家の方なので、カッコいいエクイティストーリーで盛り上がっていた相手が、いきなりキャッシュ教に改宗することも日常茶飯事。ベンチャーのビジョンに共鳴してくれている投資家は得難いものだけれど、彼らにも投資家(LP)がいて、パッションの共鳴だけを理由に投資判断できないことを理解する。そうした中でも助けてくれる稀有なパートナーが本当の意味での仲間になるのだけれど、事業側として昨日までの関係が当たり前だと思うと痛い目を見る。かっこのいい事業だけではなく、キャッシュ創造を念頭に置いた地味な事業も大切になってくる。
- 数字と文化でリモート対応:CEOを含めマネジメントチームが物理的に移動を制限されるという超絶ハードなコロナ危機。なんとなくや分かりやすさで設定している経営目標では、自分の身近なチームは何とか運営できても、別な国のカントリーマネジャーとかはコントロール不能になる可能性も高い。しかも、新規採用しようにも、面談ができなくなったりするとなると、もはや手持ちのチームを最大活用する以外に策がなく、練り上げられたKPIとモチベーション維持への投資が不可欠。新興国スタートアップはハンズオンして課題解決するのが得意な経営者が多い印象なので、ここを乗り切れるかは一つの分水嶺になる。
- キャッシュとコントロール:Cash is Kingというのは間違いない。先述のとおり、中長期でコミットされた投資金額がある以上、完全に干上がることはないものの、今までのようにイケイケどんどんでバーンを上げるのはリスクが高い。短期的には既存投資家やその紹介でブリッジのパイプラインを築きつつ、1-3年のキャッシュの使い方をDecision Treeで書いておく。すでにバーンが高すぎる場合は、ランウェイに応じて調整をする。今必要なのは、すべてを見通した意思決定をすることではなく、数か月後あるいは1年後に事態の収束が見えてきたときの手札をなるべく増やしておくこと。
- 取引をホールドしない:コロナを理由に人・モノ・カネがすべて止まっている。もし、この危機の前に仕込んでいた取引があり、今でもその重要性が変わっていないなら、出来る限り速やかにクローズする。企業や投資家が新しい案件に手を付けるようになるまでは1-数年はかかる可能性があり、ギリギリで止まっていて有益な案件は、オンラインを駆使して実行する。「また落ち着いたら」という話は基本的に「やはりそれどころじゃなくて」とか「全案件見直してまして」とか言われるリスクが高い。今も動いている事業が数年後に一歩も二歩も先を行くことになる。
- リクルーティングのチャンス:バーンを抑制する話の直後で矛盾するのを承知で、こういう経済の変わり目はベンチャーやソーシャルセクター全般にとってコア人材のかき入れ時になることも忘れてはいけない。不況だから失業するとかではなく、何となく給料もいいし仕事も慣れてきたしやめる理由がなかった若手プロフェッショナル層が、キャリアについて考えだしたり社会に意義のあることをやりたくなったりする。時期が時期なので、むやみに大量採用するのは調達直後の会社でなければ難しいが、数年でコア人材になりうる優秀層を口説くにはうってつけの時期。
- ステークホルダーとの関係強化:うまくいっている時ほど、うっとうしくて邪魔に思えてしまう官庁、投資家、国際機関などときちんと関係を構築しておく。課題解決のスピードが起業家の強みなら、情報・人・リソースを常にプールできるのがこうしたプラットフォーム型ステークホルダーの強み。めんどくさがらず、後手にならないように、こちら側からアプローチして状況を共有すると、他社の事例やら紹介をしてもらえたりする。何が起こるかわからない時こそ、ネットワークを大切に。
132週目:イースター
WFHも長くなってきて、本格的にブログに書けるネタがなくなってきた。
淡々と仕事をする。ペースを守って、運動をし料理をし気分転換をし続ける。
先週の日曜日に、ナイロビや沿岸州など感染が確認されている地域が大統領令によって封鎖。
ナイロビは発表の4時間後に完全封鎖という模範的な対応で、日本のように東京から帰省してクラスターを作ったりしないように対策が講じられている。
感染者数も比較的少なく、今のところ爆発的な感染はなさそう。
むしろ、キベラスラムで食料品配給のために大衆が殺到して死傷者がでたことのほうが心配で、長引く経済活動の停止にどこまで日雇や自営業者が耐えられるかが懸念になっている。
土曜日からは、市内で移動する際にはマスクの着用が義務化され、ケニア政府は堅実にできる手を講じている。
日本への帰国も考えてはいるが、チームとオペレーションがエキスパット含めケニアに残っているうえに、今の混乱している日本へ帰った後のこと、道中の感染リスクを考えると、今のところ決断に踏み切れない。
数週間後には仕事も落ち着くはずなので、そのあたりが次の意思決定のタイミングかな。
今週末はイースターということで、メールも静かになって、気分転換の読書と勉強がはかどった。
この数か月休みなく働いていたので、ちょっとはリラックスできたので、良しとする。
あと一か月頑張りたい。
「風立ちぬ」と堀越二郎「零戦」
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アイデアというものは、その時代の専門知識や傾向を超えた、新しい着想でなければならない。そして、その実施は人より早くなければならない。戦果をうるには、時代に即応するのではなく、時代より先に知識を磨くことと、知識に裏付けられた勇気が必要である。
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われわれ技術に生きる者は、根拠のない憶測や軽い気持ちの批判に一喜一憂すべきではない。長期的な進歩の波こそ見誤ってはならぬと、われとわが心をいましめつつ、目の前の仕事に精魂を打ち込んだ。
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技術者の仕事というものは、芸術家の自由奔放な空想とはちがって、いつも厳しい現実的な条件や要請がつきまとう。しかし、その枠の中で水準の高い仕事をなしとげるためには、徹底的な合理精神とともに、既成の考え方を打ち破ってゆくだけの自由な発想が必要なこともまた事実である。与えられた条件がどうにも動かせないものであるとき、その条件の中であたりまえに考えられることだけを考えていたのでは、できあがるものはみなどんぐりのせいくらべにすぎないであろう。
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与えられた条件の中で、とうぜん考えられるぎりぎりの成果を、どうやったら一歩抜くことができるかということをつねに考えねばならない。
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(最初に設計を任された機体について)殻を破った斬新な基本形態や構造を採用しながら、当時の私は、部下にすみずみまで適切で細かい指導があたえられなかった。意余りて技伴わざる設計主任であった。いわば、上から下まで欲求不満の塊のまま、ただ締め切り日にまに合うようにと、仕事を進めたような次第であった。
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技術マンパワーのおとる日本では、新規開発にしても、現在使っている機体の改良にしても、アメリカの二倍の時間がかかるとみなければならなかった。だから、日本こそ開戦と同時に、挙国一致の重点政策に切り替えるべきだったのに、開戦から二年たっても、総花主義が行われていたのである。