Komaza Fellowship 10週目:世界最大級のインパクト投資カンファレンスSankalp Forumに行ってきた
12月7-8日にインドのムンバイで開催されたインパクト投資カンファレンスSankalp Global Summit(サンカルプ・グローバル・サミット)に参加してきた。
少し時間が経ってしまったのだけれど、世界有数の会議であり、投資する側、される側の両方の人たちが一堂に会する場で、学ぶことが多かったので記録として残しておきたい。
Sankalpとは?
インパクト投資カンファレンスというと、米国西海岸のSOCAPやシンガポールのAsia Ventrure Philantrophy Network(AVPN)が有名だが、インパクト投資やソーシャルビジネスのメッカ、インドで行われるSankalpも世界中のインパクト投資家が集まる一大イベントだ。
先日発表されたマッキンゼーの調査によると、インド国内では2010年から2016年の7年間に52億ドルが社会的事業への投資に向けられた。
驚くべきはそのリターンで、トップティアのファンドは平均して34%のグロス・リターンを上げているという(全体の中央値は10%)。
新興国として数億人単位のBOP人口があり、優秀な若い才能を抱え、数少ないIPO市場を擁しているインドは、インパクト投資がいち早く地場で根付いた地域でもあり、そこから生まれたVCのアービシュカール(Aavishkaar)が開催するSankalpには、世界のインパクト投資家が注目する。
ということで、今回印象的だった場面・発言をハイライトしていきたい。
「そこらの社会起業家よりもイーロン・マスクのほうがはるかに優れた社会的インパクトをもたらしている」
彼は国際機関やNGOたちがこれまでどんなに努力しても実現できなかったスピードと規模で、一挙に再生エネルギー(SolarCity)や電気自動車(Tesla)を普及させている。
ファンタジーのような理想を描いて、それを徹底したリスク・テイクと実行で実現させる人物こそが、本質的な意味での社会的起業家になってくる。
もはや、ソーシャルセクターとプライベートセクターが二分された時代は終わりつつある。
「インパクトばかり考えているインパクト投資家は、投資に失敗する」
優れたインパクト投資先は、ビジネスモデル自体にインパクトが組み込まれているので、殊更にインパクトに注力したプロジェクトを立ち上げる必要自体がない。
企業がビジネスとしての成果に集中しても、対象人口がBOPや社会的弱者であるなどして自動的に社会的インパクトにつながるような事業こそが、優れたソーシャル・ビジネスだ。
ファンド・マネージャーの立場から見れば、「インパクト投資家」を謳っていても、やっていることは基本的には普通のベンチャー投資と同じであり、しかもファンドレイズ環境は普通のベンチャー投資を自称したほうがはるかにいい。
「アセットクラスとしてインパクト投資を捉えるのは間違っている」
- なんのために?ー社会的インパクトだけでいいのか、経済的リターンも追求するのか?社会的インパクトをどう定義するのか?
- どこに?ーホームグラウンドの地域なのか、国外なのか?途上国なのか、先進国なのか?
- 何に?ーそもそも企業なのか、NPOなのか、アントレプレナー個人なのか、マイクロファイナンス機関なのか、プロジェクト(不動産、インフラ、プログラムなど)なのか?
- どうやって?(どんなリスクをとるのか?)ーエクイティ、メザニン、デット、債務保証、グラント(寄付)などなど、なんのリスクに対してどんな形で投資するのか?
- どこまで関与するのか?ー経営権をとるのか、お金だけか、資金以外の支援をするのか?
- パートナーはいるのか?ー単体でできるキャパシティがあるのか?有力なパートナーは必要か?DDから投資実行、フォローアップ、インパクト評価までどんな建て付けがベストか?
基調講演をされた渋澤さんと。日本のソーシャル・ファイナンス業界の方々も結構参加しており、「おー、久しぶり」という出会いが何度もあった。
「インパクト投資家は”Blended Finance”なんてカッコ良くいってるけれど、そんなJargon(陳腐な流行語)じゃなくて、起業家にアクセスしやすいシンプルな投資プラットフォームを早く作って欲しい」
これはフォーラムに参加していた起業家が、パネリストをしていた投資家陣に向けた質問。
ひとえに「インパクト投資家」といっても、商業銀行や開発銀行、ファミリーオフィス(富裕層の私設投資ファンド)、ベンチャーキャピタル、エネルギー投資会社など様々なプレーヤーが混在する。
リスク選好も投資機関も、規模も多種多様な彼らの流行語になっているのが”Blended Capital”(様々なタイプの資金を混成したファイナンス手法)という言葉だ。
一見すると、ファイナンス手法のイノベーションのようなポジティブな響きだが、起業家からすれば単に資金調達を投資家の都合で複雑化されているように見える。
個人的には、今後もこの傾向は続き、投資家の意向に合わせて適切なファイナンスを受けられるような設計をする会社内ファイナンス担当者の存在がどんどん重要になると予想している。
今は、投資家も投資を受ける企業側も、お互いが業界スタンダードを模索しているタイミングだと思う。
「どうだ、起業家サイドで仕事してると、投資家目線のマクロな質問をしているだけじゃ、世の中動かないことがよくわかるだろ」
Sankalpを主催するファンド・マネージャーVineet Raiから直接言われた言葉。
彼と初めて出会ったのは、社会人1年目の秋にARUNさんが企画・開催したアービシュカールの紹介イベント。
仕事終わりに飛び込んで、散々質問攻めにした挙句、帰りのエレベータにも乗り込んで、インパクト投資をどうすればキャリアにできるのか詰め寄った(そんなことばかりしてるので、こんな耳の痛い小言を言われる笑)。
その後も、来日の際の立ち話やメールで経過報告はしていて、今回ケニア行きの直前にも、優れた投資家に求められる知識と経験と実行力を鍛えるために、事業に入っていきたいという話をしたばかりだった。
実力を遺憾なく発揮できる立場にある今、大企業にいた頃のような言い訳はもうできない。
今年はプレーヤーになりたい一心で準備してきたのがようやく結実した年だったので、
Vineet Rai氏と。
例によって遠慮ゼロで質問しまくった結果、オーガナイザーからゲスト・発表者用のギフトを頂いてしまった笑
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