「アルキメデスの大戦」について
「アルキメデスの大戦」という映画を日本に帰る機内で見た。
第二次世界大戦の端緒が開かれる10年近く前の、戦艦建造をめぐる陰謀との戦い、そしてなお戦争へ向かっていく日本に、このフィクションの主人公である天才数学者が挑む、という内容。
巨艦巨砲主義のドグマに支配されている海軍に、ロジックとサイエンスでたちむかう、というストーリーはキャッチーで、数字とデータで意思決定をするビジネスパーソン目線でも楽しめる作品だった。
Group Thinkに戦争をリアリティのある悲劇や社会批判としてとらえがちな戦争映画にあって、きわめてリアリティのない「数学」という頭の中だけの視点で取り組んでいるのが、脚本の着想として際立っているのは間違いない。
ただし、日本のお家芸である、"Group think can kill"を体現している、社会風刺的な作品に見えていながら、真正面から批判する当事者も反省を迫るメッセージもなく、市井に埋もれている一人の天才数学者という「外的な解決策」に頼っているあたり、いかにも日本らしい、行き届かない風刺だとも思う。
風刺の未熟そのものがかえって皮肉にさえ見える。
日本人お得意の、人的、社会的な問題について、技術的に解決したがる思考パターンというか逃避パターンはいつどこで始まったものなのか、興味深い。
技術というのは、使用者(当事者、ひいては社会)そのものが持つ課題をそのままに、問題を解決する力を持ちうるので、技術を答えにしたいときこそ、技術以外の問題が自分たちそのものに隠れていないか、逃避として技術に頼っていないのかを考えないといけない(この点、社会問題をファイナンスという技術で何とかしようとしている自分も若干怪しいところではある)。
また、最後に登場する「戦艦大和は沈没する日本のより代」という秀逸な詭弁に及んでは、存在そのものが戦後まで明かされなかった史実に加えて、今の「日本を代表する」大企業の名前がいくつか頭に浮かんできて離れない。
勝つためになすべきことをなすために、それを考えうる指導者や技術者が、思考を放棄するために優れた詭弁を生んでしまう恐ろしさを伝えている。
いい加減、自分もそういう世代や立場になっていくわけで、明日は我が身という感じがしないでもない。
その意味で、脚本の面白さ以上に、後味の悪さが残る作品だった。天才の「大戦」というより「敗戦」というほうが、テーマとしてはふさわしい気がする。
シンゴジラもそうだったけど、風刺でがっつりぶった切るのではなく、玉虫色の結論をつけて、後味の悪い泥沼感を表現するのは最近の流行りなのだろうか。
映画としては面白いし、着想のオリジナリティが冴えわたっている作品。
ただ、時代性や今の日本と合わせると肌寒い。
Komaza 115-116週目:仕事納め
115週:ケニア仕事納め
クリスマスを前にして、ケニアのオペレーションはこれでひと段落。
年末のパーティーも盛大に行われる中、年内にクローズしなければならない案件の最終調整をしつつ、年末最終週にきっちり進行中の交渉をまとめられるようにアポを取り、連日のコールを続けながら、コミュニケーションの戦略を練る。
同時進行するDDの方も、「最優先」「ASAP」が数件並行して進むなど、作業量よりも判断の重さで消耗することが多かったような気がする。
このあたりのアレンジはもう少し11月中にまとめておけばよかったと反省。
週末には日本を経由して、カリフォルニアに移動。
116週:グローバルチーム仕事納め
カリフォルニアに出張。パロアルト出身のCTOの実家に泊めてもらいつつ、面談とコールを続ける。
ラッキーなことに、前職で担当していたファンドチームにも会うことができた。
2年も前のことなのに懐かしい話題ばかりで、短い時間ながらいい時間だった。
前職も今も会社と外をつなぐ役回りなので、仕事を通じて知り合ったパートナーとの関係は大切にしていきたい。
また、Komazaが選ばれている、スタンフォード大のインキュベーションプログラムであるStartXの中間発表があり、飛び入り参加する。
東海岸のベンチャーコミュニティ以上にエンジニア中心の空気感が新鮮だった。
起業家だけでなくメンターや幹部メンバーの様子も、「文化としてのスタートアップ」を強く印象付ける。
ちなみにStartXの支援先は、100億円以上の時価総額になる確率が他のアクセラレーターの2.6倍、10年後のM&A含む生存率93%という好成績を上げているらしい。
また、個人的には、56人以上のスタンフォード大教授がStartXを通じてスタートアップに参加しているだとか、19年度の参加者の3分の1が元VCというのも興味深い話だった。
学歴なんて関係なくても大成功できるのもアメリカンドリームなら、学歴とネットワークが如実に効いてくるのもアメリカンウェイだなと認識。
CEOとは一応の仕事納めをして、週末に日本に戻った。
なんだかんだで去年はクリスマスも働き続け、今年もほとんど休暇を取っていないので、18か月振りくらいのまともな休み。
「休んでない自慢」ではなく、自分をストレッチさせ続けた結果であり、ヒイヒイしながらなんとか生き延びようとした結果でもあり、いい加減燃え尽きているので、今週くらいは一度仕事から離れようと決意している(現在進行形)。
そもそも、サステナブルに仕事をするのが大原則なので、来年は余裕ない中できちんと休みを確保していきたい。
毎週ブログが書けていないのが情けない。来年以降は毎週短文でも投稿するスタイルにしていこうかな。
Komaza 111-114週目:激動の4週間
前回の投稿から、4週間も空いてしまった。
めんどくさかったわけではなく、余裕がありませんでした、毎週読んでもらっていた方すみません。
4週間前に、「これはヤバい!」という状況から無事年末年始の心配をしなくていいところまで、一気呵成に仕上げるプロセスは、エキサイティングだった(けど、本当にブログやる余裕がなかった)。
詳しいことは書かないまでも、ファンドレイズというのは紆余曲折あるもので、いくつか予想外のことが重なると、いきなりクライシス・モードに突入するということが良く分かった。
それだからこそ、複数のリスクシナリオを走らせながら、可能性の芽を忙しいときほどきちんと温め、データや分析の準備をしておく。
これまではそれだけで十分だったところ、今回は数回の危機を乗り越えた後だったこともあり、ちょっとした隙ができてしまった。
リスク管理で言うところのSwiss Cheese(スイス風の穴あきチーズ)というやつで、どんなリスク管理にも穴がある前提で、幾層もの防護層を作っていたはずだったのに、穴がいくつか重なってしまって手薄なところを突かれた形。
最後の最後は、チームの力で何とか乗り切った。
ファンドレイズ周りは特定の人に情報が集中しがちなところを、関係各所を少し広めに巻き込んで対応チーム作りできていたことが奏功した。
というか、これができていなかったらかなり厳しかったので、想像力の限界を常に広げて仕事をし続けないといけないと再確認するいい機会だった。
最初の111週目はその対応に追われ、112週目で次なる攻めの一手の準備、113週目でオフェンス(無事形になった)を経て、先週末に大体の決着がついた。
本来ならそこで振り返りの機会を持ちたかったところ、出張の飛行機でもらったのか、疲れが出たのか、風邪気味で金曜は仕事が終わってホテルで倒れてしまった。
倒れていたんだけど、応募していたフェローシップの最終選考で土曜日は朝8時から夜7時まで缶詰の予定。
ギリギリ無理かなと何度か思ったのだけれど、ミッションとビジョンのスピーチを鏡で練習するうちに、最後の1%の力が出てきた。
結果はどうなるか知らないまでも、体調がギリギリだったおかげか、力みのないいいプレゼンができた気がする。
本業が忙しい時期に、個人の成長や中長期に向けた重要イベントを作るのは勇気のいることだけど、むしろ本業で本気モードで戦っているときの方が、暇で自分探しする余裕があるとき以上に絞り切った思考ができると思う。
この数週間、期せずしてコーチングも再開していて、仕事が猛烈にしんどいながらも、自分なりのファイティングポーズを理解する絶好のチャンスになった。
実質的に欧米組が休暇に入るまであと1週間、思いっきり詰め込んで仕事したい。
(出張先のロンドン、真夏に向かってじりじり気温が上がるキリフィと対照的に、冷たい雨の降る冬空。きれいだけど、この気候差で風邪をひく。。。)
(出張先その2、アムステルダムのホテルは格安一晩数十ユーロなのにワークスペースがついていて、なかなかおしゃれ)
(ひと段落ついて帰りのレッドアイ便を待つ30分のラウンジが割と天国だった)
(風邪でダウンしそうな金曜日は、ケニア産の高級ステーキでドーピング。今回はこの肉に救われる。サクサク食べられるフィレはリピート決定)
Komaza 109・110週目:
Komaza 108週目
仕事が佳境なのでなかなか話をすることができないのがもどかしい。
この一年半仕込んできた仕事がようやく形になろうとしている。
あとちょっとのところで最大限の力を発揮できるか、試されている、そんなゾクゾクするタイミングだ。
この数週間、仕事だけでなく振り返りに多くの時間を割いたのは、このフェーズを最良のコンディションで迎えるため。
頭を絞って考えただけ良い結果に繋がると信じて毎日に全力を尽くしたい。
インパクト投資ブームで投資家ばかりが盛り上がるのではなく、現場のベンチャーから新しいプラクティスを作っていくことが業界としてのソーシャルセクターが発展するために大切だと信じてここまでやってきた。
単身で取り込んで2年が経つ。社内にはチームがいて社外にはサポートしてくれる仲間がいる。
素直にありがたいことだと思う。
妥協しない、後悔のない仕事をしたい。
初志貫徹。