気候変動スタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀をしていましたが、気候変動スタートアップを創業するためスタンフォードにいます。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

ボスキャリで勝つ戦略

たまたまTwitterのタイムラインを見て投稿したら思いのほか「いいね」を頂いたので、ちゃんとブログにしてみた。

 
自分が実際に参加したのは2014年のことなので、変化ももちろんあると思うので、おそらく今も同じだと思われる、数日間という限られた時間を最適化することに焦点を当てて書く。
いいねをMBAの方からもらったのは想定外だったのだけれど、参考になれば幸いです。

 

事前のロジ最適化

事前準備が90%。当日はとっさの判断を迫られたり、次から次へと面談をこなすのでいっぱいいっぱいになるので、一切のタスクは事前に済ませておくこと。
①レジュメなどの印刷はずっと前にしておく(当日とか前日とかしない、自宅やら大学やら慣れたところで完了しておく) 
②企業研究等もすべて印刷してファイルでサクッと確認できるように。企業ブースの待ち時間でPCは雰囲気的に見られません笑 不安なことがあれば、ポケットサイズのメモ帳に転記しておく。
③ホテルからのロジは事前確認。当日はケチらずにUber使う。体力・精神力を最大化する。
④スケジュール調整をするためにカレンダー印刷して複数枚用意しておく。担当者の名前と連絡先を事前に控えておいて、理想的には携帯登録しておく。 
⑤会社によっては、オンライン面談や事前インタビューをしているところがあるので、片っ端からやっておく。
 

当日の時間管理

①基本的にはガンガン詰めてアポを入れる。ただ、状況が変わったり、志望上位の見込みが高ければ、連絡を入れて他社の時間調整をしてもらう。時間がないのはお互い様なので、申し訳ないと言いつつもわかってもらう。
②予定が詰まって5分前集合が危うい場合は、その旨アポを取った時点で伝え、遅れる可能性をきちんと伝える。到着したらちゃんと謝る。 
③優先順位を決めておく。当日面談しながら上下してもいいし、セクターごとでもよいので、リストを書いて持っておく。
④必要なら面談を分割する。どうしてもConflictが解消できないインタビューで、エクセルの実技(自分で手を動かす)部分とレビューセッションを分割したことがあった笑 
⑤他人のために時間を使わない。就活生同士の愚痴りあいする暇があったら仮眠をとる。夜中ホテルで語らない。
 

面接直前の気持ちの切り替え

会場を走って移動しながら次のアポの準備をすることも想定して、次の内容をエクセルで各社軽くまとめておく。
⓪自己紹介:基本ですが、業界ごとに30秒スピーチ用意。 
①業界レベル:なぜコンサル、商社、など各社共通で3点。
②会社レベル:なぜ~社?を3点。会社のバリューや成り立ちをDiscourse Analysisしておく。 
③知合いの確認:OB訪問なり先輩なり、共通の知人は距離をぐっと縮めてくれるので、名前と所属をメモで確認。 
④エピソード・特徴の理解:その会社の印象深かった話など。
⑤相手の呼び方:言い間違いが怖いので自分は「御社」か面接官の名前+さん。やるわけないと思っていても、疲れるとありがち。
⑥自分のモード切替:日系・外資系、テック系vs重工業系など、物腰を変える必要がある場合は、偏見でいいので、イメトレしておく。
 
(※)自分の場合、外資コンサルの時は抜き身の刀で切り込んでいくイメージ、日系大企業の時はむしろ刀を外に置いて茶室に入るイメージでトーンを切り替えていた笑 単純だけどこれが、意外と効いたりする。
 

意思決定の考え方

①安易にコミットしない。オファーについては、「この3日間面談続きでとても結論を出せる精神状態ではない。今安易にお答えしてあとでご迷惑をかけるわけにはいかないので、時間が欲しい」と伝える。ちなみに、12月にインターンなどがあるのであれば、それも伝える。
②シナリオを用意:ボスキャリでは途中の振り返りや軌道修正は難しい。攻めまくるパターンと、守りに入るパターンで企業の優先順位をつけておくとよい。あと、業界によっては全滅する可能性もあるので、コンサルだけ!とかは自信がない限りやめておいて、一応多少はバラしておく。
③アドバイザーを持つ:親なり友達なり、信頼出来る相談相手を先に考えておく。とっさの意思決定を求められたときに電話してもいいよう、事前に~の時間に泣きつくかもしれないと伝えておくと尚良し(自分はテストが面倒という理由で商事をDropしようとしていて止められた笑)。
 

ボスキャリ後のフォローアップ

ちゃんとお礼メールをする。業界によっては対面として仕事することになるのでちゃんとお礼をする。有名企業の経営陣やベンチャーの海外拠点長など、聞ける話は示唆の宝庫。自分の場合は、この時もらったキャリアについての返信メールを今もよく見返している。
 

番外編:食事系アポの注意事項

日本型の就活をしている人には不慣れな食事系アポ。とはいえ、ディナーは大切な選考であり、朝食やコーヒーも有効なコミュニケーションの場。当たり前かもしれないけど、書いておく。
①当たり前だけど、食べることではなく、話すことが目的。メモを取りながらきちんと応答できるのを最優先する。ロブスターとか面倒な奴は頼まない笑
②ディナーで酒を出されたときは、翌朝一番にアポが入っても大丈夫な程度に(自分は某コンサルのレセプションでシャンパン漬けになって大変後悔しました)。
③見られているけど面接ではないので、ある程度は打ち砕ける。趣味や研究など、個人的な話で花を咲かせるもよし、キャリアの熱い話をするもよし、相手に対して好奇心を忘れない。
 
 

Komaza 106・107週目:新興国スタートアップの評価軸

先週・今週とあまり本業で話せる内容がないので、新興国スタートアップを評価するうえで、考えるべき論点について述べてみたい。
一般的なビジネスDDについては専門書がたくさん出ているので、そういう本に書いてあるBox Tickingな要素をいったん忘れて、ケニアに来て2年間、100以上の投資家と面談をして、同じようなスタートアップの経営者と話をする中で、新興国で(Orアフリカで)スタートアップ投資するならこのあたりを見ておきたいと思うところを列挙してみる。
 

1. 事業仮説

  • 事業仮説の妥当性:ちゃんと仮説とエビデンスで事業の立案がなされているか。原体験ストーリーを引き延ばしただけのポエム事業になっていないか。初期仮説がNoだった場合に、次に何を考えるべきか、経営陣が認識できているか。
  • 課題の普遍性と特殊性のバランス:インパクト投資であれば、グローバルや大陸レベルでの貧困や環境破壊など、マクロのストーリーを重視しがちだが、社会課題の太宗はグローバルな共通点を持ちながらも、地域性のあるコンテクストで発生しているので、その峻別ができているか。普遍的な課題を、地域ごとの特殊性を加味したうえで、具体的に解決しようとしているか。このあたりのロジックの詰めは甘くなりがち。
  • 課題のリアリティ:課題にリアリティがあるか?数字だけの先進国目線の課題提起になっていないか。顧客の声や実際の事例を踏まえた課題検証が定期的になされているか。経営陣はそうしたことに心から興味を持っているか。
  • 市場のアクセシビリティ:市場へのアクセスを数字で語るのはたやすい。ただ、製品・サービスを顧客に届ける、大規模に展開するための一つ一つのインフラがどの程度整っているのか。整っていないのであれば、どうやって整えようとしているのか(=参入障壁にできるか)。ニーズがイメージ出来て、市場規模が大きくても、市場にアクセスすること自体にハードシップが伴うことを忘れてはいけない。
  • お題目ではないテクノロジー活用:テックが世界を救う、みたいな雑な議論になっていないか。どのような技術が、どのように問題解決に貢献するのか定義されているか。経済性にかんがみて意味のある効果を上げうるか。テックのためのテックになっていないか。

 

2. ビジョン

  • 有効なビジョン:複雑な課題を明確なビジョンとソリューションで説明できているか。投資家向けだけでなく、将来会社にジョインする人にも伝わる内容か。
  • 成長段階:成長段階がはっきりとイメージされているか。次のフェーズへ進めるかどうかの分岐点は何時で、何によって左右されるのか。確度と難易度、リカバリープランは理解されているか。
  • 経営計画:事業初期であれば、事業における仮説検証テーマが明確か。マイクロマネジよりも、不確実性をとらえた内容になっているか。わからないことを、わからないとはっきり認識しているか。

 

3. 経営能力

  • 事業のトラックレコード:アイデアをオペレーションに落とし込めているか。オペレーションは属人化することなく、SOPやシステムを通じて拡大可能になっているか。避けられない失敗や危機を乗り越えてきているか、その課題解決に再現性はあるか。
  • 経営陣の意思決定プロセス:KPIそのものもさることながら、KPIの認識が事業内で統一され、意思決定に反映されているか。スピード感を持った決断がされているか。続出する課題を正面から向き合っているか。解決されていない課題の数よりも、解決する優先順位付けが「解決しやすいもの」ではなく「解決されるべきもの」になっているか。
  • チーム:経営トップ層(Co-Founderクラス)の経営的資質、担当領域におけるトラックレコードは十分か。現時点の能力以上に、会社の成長スピードよりも速く成長し続けられるどん欲さと謙虚さを持っているか。ディレクター・マネージャークラスの層は厚いか、Dedicatedな人材が集まっているか。キーパーソンについて、リテンションは確保させられそうか(事業の息が長い場合は特に)。
  • 人材供給:成長に応じて人材を確保可能か。課題領域がニッチな場合は、優秀な人材(特にスタートアップのスピード感や不確実性、自分で事業を考える力など)を外部から持ってくるのが難しい。その場合は、社内で成長させられることができそうか(これは社内昇進で上がった人物を見てみるとよくわかる)。
  • 文化:ビジョン・ミッション・バリューの共有が経営ゴールに結びついているか?社内言語から見えてくる文化的文脈は、経営陣のメッセージと整合しているか。プレスリリースと社内のMoraleが乖離していないか。

 

4. 財務

  • ファイナンス:何をいつまでにいくらかけて検証するかの青写真が、マイルストーンベースで考えられているか。詳細に詰まった5年間のプロジェクションはプラス要因だが、泥沼化しがちな新興国投資で、どこにいくらまで投資するのかを先に考えておくことはリスク管理の上で大切になる。ファイナンスの観点から見たマイルストーンはどこにあり、どうすれば成功するか。
  • 想定投資家層とエクジット:資金の必要性に応じて、十分な投資が見込めそうか。エクジットに対して、何らかの仮説を用意できているか。エクジットや収益化に向けた重要イベントはどこにあり、いつ頃どのような形で達成できそうか。新興国については最終的に「経済成長と中間層増加がすべてを解決する」という面があるので、今から完全に予測することは難しいかもしれないが、そういうシナリオで誰と先に会話を持っておくべきかなど、考え始めていることは大切。
  • リスクシナリオ:成長率や重要なイベントが失敗に終わった場合、挽回の余地はあるか?ダウンサイドを抑えるために必要な意思決定はどのタイミングで何なのか。

 

5. ダウンサイドリスク

  • Kill Factor:この事業を一発アウトにできる要素は何か。そうしたリスクへの対策はなされているか。
  • ESG:リスク要素の洗い出しと過去のインシデント検証。全くインシデントがない可能性はゼロに近いので、先方にリクエストを出してどれくらい正直に出てくるか、その前後のマネジメントの対応について検証。特に不安要素があれば、マネジメント以外のメンバーも含めインタビュー。

 

いつも、投資受ける側なので、たまにはOther Side of the Tableで考えてみるのも楽しい。

Komaza 105週目:動いてもらうためのコミュニケーション術

総合商社にいた時も、今の会社でも、社内外との調整が多い役回りをしている。
毎日のようにお願いごとをしないといけない環境にいて、コミュニケーションの温度感を見ながら、想像力を駆使してやりとりする中で、うまくいくときのコツのようなものも見えてきた。
先週たまたまそんな話をチームでしたら、有難がられたので、コミュニケーションのコツを書いてみたいと思う。
 

考え方:

コミュニケーションで相手からポジティブな返事をもらったり、助けてもらうためには、「相手にとっての重要性」が「やらなければならないタスクの負担」を上回らなければならない。
したがって、「重要性>負担」という関係性を念頭に、「重要性」を高め、「負担」を軽減させていくことが、根本的な考え方。
ちなみに、重要性は、単に仕事上の重要性にとどまらず、心理的重要性など仕事以外の関係性も影響してくるし、同様に、負担も、時間的負担、技術的負担、精神的負担、などなど色々な要素がある。だってにんげんだもの。
 

重要性を高める施策:

  • 重要性を伝える:よくあるのが、単にお願いごとだけ投げっぱなしというケース。文脈や状況、重要性をきちんとまとめて伝えてあげる。可能であれば、その人の現在取り組んでいる仕事とのプライオリティも示し、必要であれば相手の上司からも許可をとる。この温度感をきちんと伝えていないと、反応はイマイチになりがち。 
  • 権威を高める:残念ながら、相手にナメられてしまうことがある。そういう場合は、自分の上司をレバレッジしたり、相手の上司を巻き込んだり、多少痛いところをついて動かす。自分だけで説得できないと思ったら、周りをレバレッジする。マウンティングはエレガントではないが、必要とあればためらいなく線引きする。
  • 個人的関係性をつくる:お願いごとができる関係を社内外で作ることは仕事の一環だ。だらだらした人付き合いは必要ないが、ふとした雑談や飲み会などを意識的に使うことは、情報が命のビジネスで武器になる。どんなに大切な仕事も、「あの人のためなら」と思ってもらえるかどうかで、結果が大きく変わることは忘れてはいけない。
  • 言い訳を作る:重要性と負担の両方に関係するこの施策は、相手はやりたいと思っているけれど、当人が周りを巻き込んだり説得しないといけない場合に有効な手法。「絶対にやらないといけないわけではないし、乗り気でもないが、やらなければ悪いな」と思えるような口実を作る。当人が遠慮している理由を探して、それを克服するロジックを渡すと、本人も周りに行動を説明しやすくなる。相手にとっては重要度が高く、相手の周囲にとって重要度が低い場合に外から弾薬供給するイメージ。
  • 成功体験を共有する:単発のお願いには使えないが、対面の担当者などに有効なのが、毎回お願いをした後に成果を共有し、一緒に成功を祝うこと。別にちいさなことでもいいので、「大変助かった、うまく話がまとまった」とか「相手の反応がめちゃくちゃよかった」とか、依頼に対する答えがポジティブな結果に結びついていく過程をシェアすることで、「~と一緒に仕事すると楽しい」と思ってもらえることが増える。これを何度か繰り返していくと、一緒に仕事したいと言ってもらって声がかかるようになる。
 

負担を軽減させる施策:

  • 文脈を共有する:どこから来たのかわからない唐突な質問ほど、面倒なものはない。ちゃんと背景を説明して、相手がいちいち探らなくてもいいようにしてあげる。
  • 期待している質・量を明確に:情報量や精度など、何を求めているのかを目的に合わせる形で説明する。相手が渋っているようなら、質・量の期待値を一度落として、1度にすべてを回収せず何回かに分けて依頼する形の方がうまくいったりする。この辺は、メールよりも電話でやり取りしながら温度感をつかむのがオススメ。
  • ネクストステップを明確に:わかるようなわからないような依頼は、意外に多い。いつまでになにをやるのか、必要な要件は何で、どのようなアプローチがあるのか、おせっかいを恐れずに踏み込んで明確化してあげることで、行動へのハードルが下がる。例えば、「XXXについて調べてみて」というお願いも、「AAAという記事や、BBBという記事はあって、~なのではないかと思うが、それぞれのソースんに当たって深堀してほしい」とか「下にチャートを作っておいたので数字だけ埋めてくれ」とか、単指示まで落としてあげる。
  • リマインダー:意外と忘れがちなのが、期日を守ることも相手にとっては負担だということ。締め切り当日はもとより、自分だったらこれくらいかかるだろうなという時間を意識してリマインダーを送るのは、負担軽減になる。
  • 相手の負担に理解を示す:職務上必要なプロセスなのだから、「答えて当然」という態度は立派だが、それを他人に期待するのはたいていの場合間違っている。忙しいときに申し訳ないが、と「答えて当然」のときにこそ、理解を示すべきで、相手からの支援に感謝すべきだ。また、こうしたやりとりについてはきちんと覚えておいて、次に廊下であった時にちゃんとお礼を言えるくらいになると、なお素晴らしい。
  • 遅れていても責めない:納期を守らない相手は、こころのどこかでやましさを感じている。なので、そこに塩を塗り込んでも、勉強しろと言われて反発する子どもと同じで、逆効果になりがちだ。そういう場合は、相手に「結構めんどくさいし、タイミングも厳しかったんだよね」と理解を示して、罪悪感を軽くしてあげると、思いのほかスムースに取り掛かってくれたりする。「意味がない」とか「無理だ」とか突っかかってくる場合に有効だったりする。
  • 障壁を一緒に探す:上記をやって無理な場合、何が引っかかっているのかを本人または周囲にヒアリングする。政治的な力が働いているのかもしれないし、そもそも本人にその能力やリソースがないのかもしれない。徹底的に情報収集して、必要であれば相手に寄り添う。
  • 一緒にやる:「お願いしているのにやってくれません」という場合は、ここまでやるべき。夏休みの宿題を親と一緒にいやいやながらやる子どもと同じで、心理的・技術的ハードルが高すぎる場合は、面倒だけれど一番効果的。たいていの場合は、「できそうだ」という実感を相手が得た時点で、あとは勝手に進みだす。
 
ざっくり書いてみたが、原則さえ理解できれば工夫の仕方は無限にある。
その第一歩は、行動しない相手を責めるのではなく、行動を正しく導けない自分を理解しようとする内省力だと思う。
 

Komaza 104週目:ケニア3年目に突入

丸の内の高層ビルでの仕事を離れて、ケニアのド田舎で仕事を始めて今週で丸2年がたった。

ポジションがないフェローからCEOに自分のピッチをするところから始めて、チームを作り、東アフリカのスタートアップとしては珍しい投資銀行やPE出身者で固めたチームを形にできた。

同僚や先輩、色々な人の善意に支えられて、最初の頃は孤独にさえ感じていた「自分だけで頑張っている」という感覚がどんどん薄れていっている。

最近は、自分が周りについていくのが精いっぱいの無力感を覚えるほどで、これは仕掛けを業とする自分として一番うれしい悲鳴だ。

感想やら抱負やらは、年末年始に誕生日と何度も書いている気がするので、せっかく書き溜めた100本以上のブログを振りかえってみることにする。

 

 

ここからすべてが始まった。

色々な人にも言われたけれども、Great Decision!という感想は変わっていない。

いわゆる「有益な経験」かは今後の成果次第だが、やっていること、成し遂げたこと、今から挑戦すること、いずれにおいても後悔が一切ない。

卒論以来の気持ちの良い仕事だ。

 

 

 

情報こそが力であり、正しい情報を集めるためにあちこちにアンテナを張り、考えながら情報を拾い続けることが、正解らしきものに近づく数少ない道だと思う。

社会人になった時から、”It is my job to know”と言い聞かせて仕事をしてきたけど、これには何度も助けられている。

 

途上国なのか新興国かはさておき、ネット回線もちゃんとつながるし、ケニアのド田舎といっても、仕事の仕方はスタバがない以外、丸の内のオフィスと変わらない。これは結構すごいことで、昼夜関係なくヨーロッパやらアメリカとコールをつなぎ、情報を収集し、必要なデータのやり取りをする。

もちろん出張もするけれども、それはほぼクロージングのタイミングのみで下準備をきっちりできる分、まとまった成果を並行して出しやすい。

田舎で仕事をするとゆったりなイメージがあるが、むしろ自分と仕事しか向き合うことがないので、職業人生が大変充実している。

 

 

 

あとから振り返ると、職業人としての転機だったと思う。

Climate Policy InitiativeのClimate Finance Innovation賞を受賞したことが、業界にネットワークを広げ、国際会議で登壇が許され、単なるスタートアップの財務担当者ではなくKomazaのTomoとしての仕事につながっている。

加えて、前職の時から勉強してきた実務をいかんなく昇華できた案件でもあり、コンペティションの時はHBS出身やら新興国ファイナンス20年のベテランやらグローバル最大規模の財団CFOやら、とんでもない候補者と戦わされて脂汗をかかされた。

それでも、この時にUnderdogとして勝ち抜いた自信は、今でも苦しい仕事のたびに支えになっている。

 

 記事を書いたのがちょうど移住一年目の終わり。

この時でさえ、それなりにまとめていたけれど、この後体験したハードシップは、次元が違った。

環境が変わり、責任が変わり、仕事が変わり、チームが変わり、色々な変化が次々にやってきて、泳ぎ切った実感はなく、おぼれていないのだけは確からしい。そんな感覚。

 

 

死にそうになりながら必死に勉強して案件を片付けていくと、なぜか巡り合う問題の大きさもついてくる(汗)

この時の「炎上」くらいなら、今の自分は3件同時に定常業務と合わせて鎮火できるし、そもそも発火前にすべて抑えているだろう。

それくらい、事業の成長ペースは速く、覚悟を持って自分をストレッチさせないと、あっという間に陳腐化してしまう。

2年しかいないのに、色々な人がポジションの成長についていけずに脱落していった。

 

芸風の記事でもふれたとおり、異質な経験と異質な才能が合わさった時に、特異な成果が生まれるのだと思う。

なので、Komazaでの仕事は、仕事そのものとして面白いだけでなく、Extraordinaryな成果を残すための大切な投資でもある。

いうまでもなく、特異であることと優れていることは必ずしも一致しない。

けれども、これと思ったものを信じて追いかけ続ける意義を僕は信じているのだと思う。

というか、止められても追いかけてしまう。

それが自分なのだと素直に受け入れられるようになったことが、この2年の最大の成長かもしれない。

本当の勝負はこれからだ。

Komaza 103週目:KEFRIとJICAとのパートナーシップ締結

 
ケニア国立森林研究所(KEFRI)と小規模農家向けの林業を推進するためのパートナーシップを締結しました。
これと並行して、KEFRIを技術的に支援しているJICAとも三者でパートナーシップを結びました。
Komazaが世界最大の商業植林者になっているMelia Volkensii(センダンの一種)は、乾燥に強く生育が早い、というまさに農家にはうってつけの樹種で、木材もチークのような色合いで高級家具材としての利用が見込まれます。
 
 
気づけば今週でケニアに移住して丸2年が経つわけですが、このパートナーシップは、Komazaでの仕事のなかでもとりわけ思い出深い案件です。
ことの始まりは2018年の早春、ナイロビのJICAオフィスで開催されたABEイニシアチブの発表会に参加した際に、たまたま会場でお会いしたJICAの林業専門家の方とお話したのがきっかけでした。
Komazaに入社してから、育てている樹種についても勉強しようとしたところ、やたらとJICAの資料が出てくるので、不思議に思っていましたが、それも当然、ケニアの林野庁や森林研究所はJICAと日本の林野庁が共同して数十年単位で支援してフラッグシップ案件で、メリアも20年以上にわたり研究対象になってきていたとのこと。
まずは現場を、ということで、専門家の方の出張に会わせてモンバサのホテルでCEO含めてディナーを設定。
Komazaはこれまでも林業関係者とは協業関係にあり、狭い業界で仲良く仕事をしてきたわけですが、単なる情報交換からステップアップしてより大がかりな仕掛けができるのではないか、と盛り上がり、このパートナーシップ構想の原型が出来上がりました。
 
そこからは関係各所による視察や諸機関との調整など、それなりにドタバタしながらも話し合いを続けて、ようやく締結に至りました。
署名の当日はKEFRIのダイレクター(トップ)やBoard Chairも来賓として参加し、ケニアのナショナルメディアからも取材が入りました。
 
あくまでも、パートナーシップ締結は始まりでしかないので、モーメンタムを失わずにキックオフできるように、引き続き仕事をしていきたいと思います(奔走頂いたJICAチームの方々には頭が上がりません)。
 
ケニアのド田舎で悩みながら仕事をしているとき、JICAが建設した高速道路や三菱商事の大先輩が作ったモンバサ空港のことを思い出して、ふと勇気づけられることが何度もありました。
今回のパートナーシップも、ケニアと日本の両方側で数十年単位での森林研究や現場での試行錯誤がなされた結果をバトンタッチしてもらったようなものなので、大切にしていきたいと思います。
普段のファイナンスとは違う、商社っぽい仕事で、楽しい案件です。本当はこういうやつを思いっきりやりたい。