ボスキャリで勝つ戦略
たまたまTwitterのタイムラインを見て投稿したら思いのほか「いいね」を頂いたので、ちゃんとブログにしてみた。
ボスキャリ、来週なのか。
— 熊平智伸@アフリカxインパクト投資 (@tombear1991) 2019年10月24日
良くも悪くもモーメンタムがすべてといってもいい一大就活イベントだと思うので、就活生(特に海外組!)の皆様ガンバです。
ちなみに、ボスキャリ攻略のコツとかって、需要あるのだろうか。
20いいねくらいついたら、連投してみようか(老害)。
めちゃくちゃいいねついているので後ほど書きます。
— 熊平智伸@アフリカxインパクト投資 (@tombear1991) 2019年10月25日
自分の場合は、30面談と朝食、コーヒー、ディナー2階建てと時間をフル活用してオファーを10近くもらえたので、ほぼ時間戦術です。
事前のロジ最適化
当日の時間管理
面接直前の気持ちの切り替え
意思決定の考え方
ボスキャリ後のフォローアップ
番外編:食事系アポの注意事項
Komaza 106・107週目:新興国スタートアップの評価軸
1. 事業仮説
- 事業仮説の妥当性:ちゃんと仮説とエビデンスで事業の立案がなされているか。原体験ストーリーを引き延ばしただけのポエム事業になっていないか。初期仮説がNoだった場合に、次に何を考えるべきか、経営陣が認識できているか。
- 課題の普遍性と特殊性のバランス:インパクト投資であれば、グローバルや大陸レベルでの貧困や環境破壊など、マクロのストーリーを重視しがちだが、社会課題の太宗はグローバルな共通点を持ちながらも、地域性のあるコンテクストで発生しているので、その峻別ができているか。普遍的な課題を、地域ごとの特殊性を加味したうえで、具体的に解決しようとしているか。このあたりのロジックの詰めは甘くなりがち。
- 課題のリアリティ:課題にリアリティがあるか?数字だけの先進国目線の課題提起になっていないか。顧客の声や実際の事例を踏まえた課題検証が定期的になされているか。経営陣はそうしたことに心から興味を持っているか。
- 市場のアクセシビリティ:市場へのアクセスを数字で語るのはたやすい。ただ、製品・サービスを顧客に届ける、大規模に展開するための一つ一つのインフラがどの程度整っているのか。整っていないのであれば、どうやって整えようとしているのか(=参入障壁にできるか)。ニーズがイメージ出来て、市場規模が大きくても、市場にアクセスすること自体にハードシップが伴うことを忘れてはいけない。
- お題目ではないテクノロジー活用:テックが世界を救う、みたいな雑な議論になっていないか。どのような技術が、どのように問題解決に貢献するのか定義されているか。経済性にかんがみて意味のある効果を上げうるか。テックのためのテックになっていないか。
2. ビジョン
- 有効なビジョン:複雑な課題を明確なビジョンとソリューションで説明できているか。投資家向けだけでなく、将来会社にジョインする人にも伝わる内容か。
- 成長段階:成長段階がはっきりとイメージされているか。次のフェーズへ進めるかどうかの分岐点は何時で、何によって左右されるのか。確度と難易度、リカバリープランは理解されているか。
- 経営計画:事業初期であれば、事業における仮説検証テーマが明確か。マイクロマネジよりも、不確実性をとらえた内容になっているか。わからないことを、わからないとはっきり認識しているか。
3. 経営能力
- 事業のトラックレコード:アイデアをオペレーションに落とし込めているか。オペレーションは属人化することなく、SOPやシステムを通じて拡大可能になっているか。避けられない失敗や危機を乗り越えてきているか、その課題解決に再現性はあるか。
- 経営陣の意思決定プロセス:KPIそのものもさることながら、KPIの認識が事業内で統一され、意思決定に反映されているか。スピード感を持った決断がされているか。続出する課題を正面から向き合っているか。解決されていない課題の数よりも、解決する優先順位付けが「解決しやすいもの」ではなく「解決されるべきもの」になっているか。
- チーム:経営トップ層(Co-Founderクラス)の経営的資質、担当領域におけるトラックレコードは十分か。現時点の能力以上に、会社の成長スピードよりも速く成長し続けられるどん欲さと謙虚さを持っているか。ディレクター・マネージャークラスの層は厚いか、Dedicatedな人材が集まっているか。キーパーソンについて、リテンションは確保させられそうか(事業の息が長い場合は特に)。
- 人材供給:成長に応じて人材を確保可能か。課題領域がニッチな場合は、優秀な人材(特にスタートアップのスピード感や不確実性、自分で事業を考える力など)を外部から持ってくるのが難しい。その場合は、社内で成長させられることができそうか(これは社内昇進で上がった人物を見てみるとよくわかる)。
- 文化:ビジョン・ミッション・バリューの共有が経営ゴールに結びついているか?社内言語から見えてくる文化的文脈は、経営陣のメッセージと整合しているか。プレスリリースと社内のMoraleが乖離していないか。
4. 財務
- ファイナンス:何をいつまでにいくらかけて検証するかの青写真が、マイルストーンベースで考えられているか。詳細に詰まった5年間のプロジェクションはプラス要因だが、泥沼化しがちな新興国投資で、どこにいくらまで投資するのかを先に考えておくことはリスク管理の上で大切になる。ファイナンスの観点から見たマイルストーンはどこにあり、どうすれば成功するか。
- 想定投資家層とエクジット:資金の必要性に応じて、十分な投資が見込めそうか。エクジットに対して、何らかの仮説を用意できているか。エクジットや収益化に向けた重要イベントはどこにあり、いつ頃どのような形で達成できそうか。新興国については最終的に「経済成長と中間層増加がすべてを解決する」という面があるので、今から完全に予測することは難しいかもしれないが、そういうシナリオで誰と先に会話を持っておくべきかなど、考え始めていることは大切。
- リスクシナリオ:成長率や重要なイベントが失敗に終わった場合、挽回の余地はあるか?ダウンサイドを抑えるために必要な意思決定はどのタイミングで何なのか。
5. ダウンサイドリスク
- Kill Factor:この事業を一発アウトにできる要素は何か。そうしたリスクへの対策はなされているか。
- ESG:リスク要素の洗い出しと過去のインシデント検証。全くインシデントがない可能性はゼロに近いので、先方にリクエストを出してどれくらい正直に出てくるか、その前後のマネジメントの対応について検証。特に不安要素があれば、マネジメント以外のメンバーも含めインタビュー。
いつも、投資受ける側なので、たまにはOther Side of the Tableで考えてみるのも楽しい。
Komaza 105週目:動いてもらうためのコミュニケーション術
考え方:
重要性を高める施策:
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重要性を伝える:よくあるのが、単にお願いごとだけ投げっぱなしというケース。文脈や状況、重要性をきちんとまとめて伝えてあげる。可能であれば、その人の現在取り組んでいる仕事とのプライオリティも示し、必要であれば相手の上司からも許可をとる。この温度感をきちんと伝えていないと、反応はイマイチになりがち。
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権威を高める:残念ながら、相手にナメられてしまうことがある。そういう場合は、自分の上司をレバレッジしたり、相手の上司を巻き込んだり、多少痛いところをついて動かす。自分だけで説得できないと思ったら、周りをレバレッジする。マウンティングはエレガントではないが、必要とあればためらいなく線引きする。
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個人的関係性をつくる:お願いごとができる関係を社内外で作ることは仕事の一環だ。だらだらした人付き合いは必要ないが、ふとした雑談や飲み会などを意識的に使うことは、情報が命のビジネスで武器になる。どんなに大切な仕事も、「あの人のためなら」と思ってもらえるかどうかで、結果が大きく変わることは忘れてはいけない。
- 言い訳を作る:重要性と負担の両方に関係するこの施策は、相手はやりたいと思っているけれど、当人が周りを巻き込んだり説得しないといけない場合に有効な手法。「絶対にやらないといけないわけではないし、乗り気でもないが、やらなければ悪いな」と思えるような口実を作る。当人が遠慮している理由を探して、それを克服するロジックを渡すと、本人も周りに行動を説明しやすくなる。相手にとっては重要度が高く、相手の周囲にとって重要度が低い場合に外から弾薬供給するイメージ。
- 成功体験を共有する:単発のお願いには使えないが、対面の担当者などに有効なのが、毎回お願いをした後に成果を共有し、一緒に成功を祝うこと。別にちいさなことでもいいので、「大変助かった、うまく話がまとまった」とか「相手の反応がめちゃくちゃよかった」とか、依頼に対する答えがポジティブな結果に結びついていく過程をシェアすることで、「~と一緒に仕事すると楽しい」と思ってもらえることが増える。これを何度か繰り返していくと、一緒に仕事したいと言ってもらって声がかかるようになる。
負担を軽減させる施策:
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文脈を共有する:どこから来たのかわからない唐突な質問ほど、面倒なものはない。ちゃんと背景を説明して、相手がいちいち探らなくてもいいようにしてあげる。
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期待している質・量を明確に:情報量や精度など、何を求めているのかを目的に合わせる形で説明する。相手が渋っているようなら、質・量の期待値を一度落として、1度にすべてを回収せず何回かに分けて依頼する形の方がうまくいったりする。この辺は、メールよりも電話でやり取りしながら温度感をつかむのがオススメ。
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ネクストステップを明確に:わかるようなわからないような依頼は、意外に多い。いつまでになにをやるのか、必要な要件は何で、どのようなアプローチがあるのか、おせっかいを恐れずに踏み込んで明確化してあげることで、行動へのハードルが下がる。例えば、「XXXについて調べてみて」というお願いも、「AAAという記事や、BBBという記事はあって、~なのではないかと思うが、それぞれのソースんに当たって深堀してほしい」とか「下にチャートを作っておいたので数字だけ埋めてくれ」とか、単指示まで落としてあげる。
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リマインダー:意外と忘れがちなのが、期日を守ることも相手にとっては負担だということ。締め切り当日はもとより、自分だったらこれくらいかかるだろうなという時間を意識してリマインダーを送るのは、負担軽減になる。
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相手の負担に理解を示す:職務上必要なプロセスなのだから、「答えて当然」という態度は立派だが、それを他人に期待するのはたいていの場合間違っている。忙しいときに申し訳ないが、と「答えて当然」のときにこそ、理解を示すべきで、相手からの支援に感謝すべきだ。また、こうしたやりとりについてはきちんと覚えておいて、次に廊下であった時にちゃんとお礼を言えるくらいになると、なお素晴らしい。
- 遅れていても責めない:納期を守らない相手は、こころのどこかでやましさを感じている。なので、そこに塩を塗り込んでも、勉強しろと言われて反発する子どもと同じで、逆効果になりがちだ。そういう場合は、相手に「結構めんどくさいし、タイミングも厳しかったんだよね」と理解を示して、罪悪感を軽くしてあげると、思いのほかスムースに取り掛かってくれたりする。「意味がない」とか「無理だ」とか突っかかってくる場合に有効だったりする。
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障壁を一緒に探す:上記をやって無理な場合、何が引っかかっているのかを本人または周囲にヒアリングする。政治的な力が働いているのかもしれないし、そもそも本人にその能力やリソースがないのかもしれない。徹底的に情報収集して、必要であれば相手に寄り添う。
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一緒にやる:「お願いしているのにやってくれません」という場合は、ここまでやるべき。夏休みの宿題を親と一緒にいやいやながらやる子どもと同じで、心理的・技術的ハードルが高すぎる場合は、面倒だけれど一番効果的。たいていの場合は、「できそうだ」という実感を相手が得た時点で、あとは勝手に進みだす。
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Komaza 104週目:ケニア3年目に突入
丸の内の高層ビルでの仕事を離れて、ケニアのド田舎で仕事を始めて今週で丸2年がたった。
ポジションがないフェローからCEOに自分のピッチをするところから始めて、チームを作り、東アフリカのスタートアップとしては珍しい投資銀行やPE出身者で固めたチームを形にできた。
同僚や先輩、色々な人の善意に支えられて、最初の頃は孤独にさえ感じていた「自分だけで頑張っている」という感覚がどんどん薄れていっている。
最近は、自分が周りについていくのが精いっぱいの無力感を覚えるほどで、これは仕掛けを業とする自分として一番うれしい悲鳴だ。
感想やら抱負やらは、年末年始に誕生日と何度も書いている気がするので、せっかく書き溜めた100本以上のブログを振りかえってみることにする。
ここからすべてが始まった。
色々な人にも言われたけれども、Great Decision!という感想は変わっていない。
いわゆる「有益な経験」かは今後の成果次第だが、やっていること、成し遂げたこと、今から挑戦すること、いずれにおいても後悔が一切ない。
卒論以来の気持ちの良い仕事だ。
情報こそが力であり、正しい情報を集めるためにあちこちにアンテナを張り、考えながら情報を拾い続けることが、正解らしきものに近づく数少ない道だと思う。
社会人になった時から、”It is my job to know”と言い聞かせて仕事をしてきたけど、これには何度も助けられている。
途上国なのか新興国かはさておき、ネット回線もちゃんとつながるし、ケニアのド田舎といっても、仕事の仕方はスタバがない以外、丸の内のオフィスと変わらない。これは結構すごいことで、昼夜関係なくヨーロッパやらアメリカとコールをつなぎ、情報を収集し、必要なデータのやり取りをする。
もちろん出張もするけれども、それはほぼクロージングのタイミングのみで下準備をきっちりできる分、まとまった成果を並行して出しやすい。
田舎で仕事をするとゆったりなイメージがあるが、むしろ自分と仕事しか向き合うことがないので、職業人生が大変充実している。
あとから振り返ると、職業人としての転機だったと思う。
Climate Policy InitiativeのClimate Finance Innovation賞を受賞したことが、業界にネットワークを広げ、国際会議で登壇が許され、単なるスタートアップの財務担当者ではなくKomazaのTomoとしての仕事につながっている。
加えて、前職の時から勉強してきた実務をいかんなく昇華できた案件でもあり、コンペティションの時はHBS出身やら新興国ファイナンス20年のベテランやらグローバル最大規模の財団CFOやら、とんでもない候補者と戦わされて脂汗をかかされた。
それでも、この時にUnderdogとして勝ち抜いた自信は、今でも苦しい仕事のたびに支えになっている。
この時でさえ、それなりにまとめていたけれど、この後体験したハードシップは、次元が違った。
環境が変わり、責任が変わり、仕事が変わり、チームが変わり、色々な変化が次々にやってきて、泳ぎ切った実感はなく、おぼれていないのだけは確からしい。そんな感覚。
死にそうになりながら必死に勉強して案件を片付けていくと、なぜか巡り合う問題の大きさもついてくる(汗)
この時の「炎上」くらいなら、今の自分は3件同時に定常業務と合わせて鎮火できるし、そもそも発火前にすべて抑えているだろう。
それくらい、事業の成長ペースは速く、覚悟を持って自分をストレッチさせないと、あっという間に陳腐化してしまう。
2年しかいないのに、色々な人がポジションの成長についていけずに脱落していった。
芸風の記事でもふれたとおり、異質な経験と異質な才能が合わさった時に、特異な成果が生まれるのだと思う。
なので、Komazaでの仕事は、仕事そのものとして面白いだけでなく、Extraordinaryな成果を残すための大切な投資でもある。
いうまでもなく、特異であることと優れていることは必ずしも一致しない。
けれども、これと思ったものを信じて追いかけ続ける意義を僕は信じているのだと思う。
というか、止められても追いかけてしまう。
それが自分なのだと素直に受け入れられるようになったことが、この2年の最大の成長かもしれない。
本当の勝負はこれからだ。