ケニアスタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。。

Komaza 106・107週目:新興国スタートアップの評価軸

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先週・今週とあまり本業で話せる内容がないので、新興国スタートアップを評価するうえで、考えるべき論点について述べてみたい。
一般的なビジネスDDについては専門書がたくさん出ているので、そういう本に書いてあるBox Tickingな要素をいったん忘れて、ケニアに来て2年間、100以上の投資家と面談をして、同じようなスタートアップの経営者と話をする中で、新興国で(Orアフリカで)スタートアップ投資するならこのあたりを見ておきたいと思うところを列挙してみる。
 

1. 事業仮説

  • 事業仮説の妥当性:ちゃんと仮説とエビデンスで事業の立案がなされているか。原体験ストーリーを引き延ばしただけのポエム事業になっていないか。初期仮説がNoだった場合に、次に何を考えるべきか、経営陣が認識できているか。
  • 課題の普遍性と特殊性のバランス:インパクト投資であれば、グローバルや大陸レベルでの貧困や環境破壊など、マクロのストーリーを重視しがちだが、社会課題の太宗はグローバルな共通点を持ちながらも、地域性のあるコンテクストで発生しているので、その峻別ができているか。普遍的な課題を、地域ごとの特殊性を加味したうえで、具体的に解決しようとしているか。このあたりのロジックの詰めは甘くなりがち。
  • 課題のリアリティ:課題にリアリティがあるか?数字だけの先進国目線の課題提起になっていないか。顧客の声や実際の事例を踏まえた課題検証が定期的になされているか。経営陣はそうしたことに心から興味を持っているか。
  • 市場のアクセシビリティ:市場へのアクセスを数字で語るのはたやすい。ただ、製品・サービスを顧客に届ける、大規模に展開するための一つ一つのインフラがどの程度整っているのか。整っていないのであれば、どうやって整えようとしているのか(=参入障壁にできるか)。ニーズがイメージ出来て、市場規模が大きくても、市場にアクセスすること自体にハードシップが伴うことを忘れてはいけない。
  • お題目ではないテクノロジー活用:テックが世界を救う、みたいな雑な議論になっていないか。どのような技術が、どのように問題解決に貢献するのか定義されているか。経済性にかんがみて意味のある効果を上げうるか。テックのためのテックになっていないか。

 

2. ビジョン

  • 有効なビジョン:複雑な課題を明確なビジョンとソリューションで説明できているか。投資家向けだけでなく、将来会社にジョインする人にも伝わる内容か。
  • 成長段階:成長段階がはっきりとイメージされているか。次のフェーズへ進めるかどうかの分岐点は何時で、何によって左右されるのか。確度と難易度、リカバリープランは理解されているか。
  • 経営計画:事業初期であれば、事業における仮説検証テーマが明確か。マイクロマネジよりも、不確実性をとらえた内容になっているか。わからないことを、わからないとはっきり認識しているか。

 

3. 経営能力

  • 事業のトラックレコード:アイデアをオペレーションに落とし込めているか。オペレーションは属人化することなく、SOPやシステムを通じて拡大可能になっているか。避けられない失敗や危機を乗り越えてきているか、その課題解決に再現性はあるか。
  • 経営陣の意思決定プロセス:KPIそのものもさることながら、KPIの認識が事業内で統一され、意思決定に反映されているか。スピード感を持った決断がされているか。続出する課題を正面から向き合っているか。解決されていない課題の数よりも、解決する優先順位付けが「解決しやすいもの」ではなく「解決されるべきもの」になっているか。
  • チーム:経営トップ層(Co-Founderクラス)の経営的資質、担当領域におけるトラックレコードは十分か。現時点の能力以上に、会社の成長スピードよりも速く成長し続けられるどん欲さと謙虚さを持っているか。ディレクター・マネージャークラスの層は厚いか、Dedicatedな人材が集まっているか。キーパーソンについて、リテンションは確保させられそうか(事業の息が長い場合は特に)。
  • 人材供給:成長に応じて人材を確保可能か。課題領域がニッチな場合は、優秀な人材(特にスタートアップのスピード感や不確実性、自分で事業を考える力など)を外部から持ってくるのが難しい。その場合は、社内で成長させられることができそうか(これは社内昇進で上がった人物を見てみるとよくわかる)。
  • 文化:ビジョン・ミッション・バリューの共有が経営ゴールに結びついているか?社内言語から見えてくる文化的文脈は、経営陣のメッセージと整合しているか。プレスリリースと社内のMoraleが乖離していないか。

 

4. 財務

  • ファイナンス:何をいつまでにいくらかけて検証するかの青写真が、マイルストーンベースで考えられているか。詳細に詰まった5年間のプロジェクションはプラス要因だが、泥沼化しがちな新興国投資で、どこにいくらまで投資するのかを先に考えておくことはリスク管理の上で大切になる。ファイナンスの観点から見たマイルストーンはどこにあり、どうすれば成功するか。
  • 想定投資家層とエクジット:資金の必要性に応じて、十分な投資が見込めそうか。エクジットに対して、何らかの仮説を用意できているか。エクジットや収益化に向けた重要イベントはどこにあり、いつ頃どのような形で達成できそうか。新興国については最終的に「経済成長と中間層増加がすべてを解決する」という面があるので、今から完全に予測することは難しいかもしれないが、そういうシナリオで誰と先に会話を持っておくべきかなど、考え始めていることは大切。
  • リスクシナリオ:成長率や重要なイベントが失敗に終わった場合、挽回の余地はあるか?ダウンサイドを抑えるために必要な意思決定はどのタイミングで何なのか。

 

5. ダウンサイドリスク

  • Kill Factor:この事業を一発アウトにできる要素は何か。そうしたリスクへの対策はなされているか。
  • ESG:リスク要素の洗い出しと過去のインシデント検証。全くインシデントがない可能性はゼロに近いので、先方にリクエストを出してどれくらい正直に出てくるか、その前後のマネジメントの対応について検証。特に不安要素があれば、マネジメント以外のメンバーも含めインタビュー。

 

いつも、投資受ける側なので、たまにはOther Side of the Tableで考えてみるのも楽しい。