ケニアスタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

2021年「飛躍と準備の年」から2022年「而立の年」へ

My title

2021年「飛躍と準備の年」の振り返り

2021年は、人生で一番と言っていいくらい忙しい1年になりました。

仕事の幅と自由度が増え、チームが大きくなり、課題は複雑になり、という状況で、チームメンバーの猛烈な成長に負けないように自分をストレッチした一年でした。

スキル面でのギャップがほぼなくなり、同時に人としての雅量、リーダーシップそのものが問われ、頭を使うとか勉強するとかではないソフトな次元で変わろうと必死になった一年でした。

急激に複雑になる案件をカバーしながら、急成長するメンバーを支え切るだけの「何か」を求めてもがくことになりました。

解決できた課題よりも、新しく見えてきた欠点の方が多く、冬休みもそのまだ見えぬ穴を埋めるべく、格闘しています。

 

Komazaでのチーム組成

Komazaでの仕事は、カーボンクレジットプログラムの創設、世界初の小規模農家による林業の証券化、戦略パートナーシップや資金調達、海外展開のためのM&A検討など、多様なプロジェクトに優秀なマネージャー陣をチームアップして取り組みました。

年単位のプロジェクトも少なくない中、僕自身がプレーヤーとしての活動をやめ、マネージャーが企画から実行、現場での課題解決に至るほぼすべての過程を担っています。

Corporate Finance & Strategyチームでは、マネージャーには、ジュニアメンバーをつけるのではなく、業界でベストと思われる外部コンサルタント・専門家を起用し、業界経験を内在化させつつ事業にフィットしたプロジェクト開発ができるように"A Team of Teams"の形をとり、20-40名近い陣容になりました。

AppleとConservation Internationalとのパートナーシップなどリリースも出始めていますが、仕込み中の仕事はもっとたくさんあります。

自分の役割は、俯瞰的・経営的な目線でプロジェクトポートフォリオを組み優先順位を示すこと、必要なリソースを予測し持ってくること、論点の整理を手伝い必要に応じてOut of the Boxに考えること、めんどくさい交渉やセンシティブな会話をリードすること、といった感じです。

何でもかんでも自分でやりたくなっていた自分も、コーチングやチームとの1on1を通して、境界線が引けるようになりつつあります。

見えていない不安は、最後はチーム全員でがんばればなんとかなるという信頼感と自信が醸成される中で、消えていきました。

業界標準の半分から3分の2程度の厳しいタイムラインで、かつKomazaのユニークで複雑な事業モデルの隅々に注意を払う必要があり、何度か死にかけましたが、その度に自分のプロジェクトで大忙しのメンバーたちがお互いに助け合って乗り切ってきました。

考えていることが時代の先端であったとしても、ふたを開けてみればベンチャーでしかなく、少人数が必死に知恵を絞り手を動かしていくしか、生き延びる道はありません。

本当に良いチームができたと思います。

 

Thought Leadership

コロナ禍で移動が制限されたこともあり、オンラインが中心となりました。カーボンクレジットの高騰など、気候変動への関心が高まったこともあり、これまで以上にイノベーション投資の重要性を実感しています。

国連FAOGlobal Landscape Forum(GLF)International Union for Conservation of Nature (IUCN)といった、主要なプラットフォームで講演・パネルに参加しました。

Coalition for Private Investment in Conservation (CPIC)からは、Blueprintというシリーズで小規模農家に特化したファイナンス手法についてレポートを出しました。

また、日本では、東京工業大学の工学院が主催するExS Challengeの参加者向けにレクチャーをしました。

Komazaの活動を紹介しつつ、サステナブル林業やファイナンスについて新しい考え方を議論するという取り組みを4年くらい続けて、業界のなかでもポジションができてきた感覚があります。

考えること、発信すること、実行すること、すべてが揃って初めて社会が動くので、地道に続けていきます。

 

自分自身の変容と成長

実務的な難しさを仕事で感じることは、数年前と比べて格段に少なくなりました。

未知の領域であれば調べ方、専門家との議論の仕方、論点の切り方、既知の領域であれば細かな論点の把握と実行確度の向上策、といったようにやることが見えています。

一方で、チームによる成果のデリバリーや業界レベルでの新しいプラクティスの開発など、自分にとって「実務」と呼ばれるものが、次第にリーダーシップやイノベーションに近づいてきました。

「何をどうやるか」という企画者としての問いで言えば、「どうやるか」から「何をやるか」に明確で、大局的なビジョンが求められるようになってきました。

1年前の記事で、目の前の挑戦に没入しながら、いかに視野を広げていけるかが、パワフルな30代を築く基礎になると書いたように、コロナ禍で出張も旅行もできず、仕事のカウンターパートとも、リモートでのやりとりが大半の中、自分からコミュニティを広げていく手段としてフェローシップに参加しています。

 

気候変動分野ではボッシュ財団のGGFフェロー、社会起業・アフリカ分野ではAcumenフェローとして、活動しました。

具体的には、ボッシュ財団では気候変動の専門家としてチームを組み、世界の未来に対して気候変動と適応・緩和がどのように影響するかシナリオを作成しました。ベンチャーにいると、目の前の課題に追われがちですが、気候変動が21世紀の人類のテーマであることをはっきりと再認識する契機となりました。

Acumenフェローでは、リーダーとしての自分のあり方から一人の個人としての生き方まで、フェロー同士徹底的に議論しながら、向き合いました(振り返り)。人として、プロフェッショナルとして強くなりたいと武者修行してきた20代に見落としていた、自分や他者の「弱さ」とどう向き合うのか、という大事な問いをもらいました。ソーシャルセクターの起源は、富める者が貧しき者に施す慈善事業にあるといわれますが、キャリアとして誰もが社会を変える今日の社会起業の世界では、誰もが強さと弱さを持っています。

このあたりの経験は、渋澤健さんのPodCastにもなっているので、ご興味おありの方はぜひ聴いてみてください。

madewithjapan.net

 

2022年は「而立の年」

而立は、論語の「三十にして立つ」という言葉から、30歳を指す言葉で、そのままの意味といえばそのままです。

 

20歳の時に海外に出て、色々な挑戦をしてきました。

自分に何ができるのか、何をすべきなのか、という大きな問いに押しつぶされそうになりながら、社会起業やインパクト投資、Climate Financeという黎明期の業界で、日々格闘する中で、ようやく自分の考え方や強さ・弱さが見えてきたフェーズです。

ケニアにきてから最初の数年間は、「~ができるようにならねば」というスキル面でのギャップや「自分に果たしてできるだろうか」という劣等感に悪戦苦闘していましたが、それもひと段落ついた実感があります。

いうまでもなく、今でも仕事は分からないことだらけで、日々自分の未熟を痛感せざるを得ない状況ですが、自分にとってはそうした「危機的状況」もはや日常であり、新しい知識を吸収し、課題を整理し、出来るかわからなくともアクションをとり続けるというサイクルが、はっきりと意識できるようになりました。

Underdogとして何もないところからレバレッジをつくり出したり、現場でディテールを熟知したメンバーをなにがしかの新しい切り口を提示したり、無理と思われる困難にストレッチしされて、現場で揉まれて掴んだ感覚は貴重です。

 

20代の目標として、人とは違った視点や解像度を持てるようになる、ということを意識してきました。

自分は凡人なので、自然とオリジナルな思考はできません。

したがって、「インプット→情報処理→アウトプット」の流れで言えば、人がいかない重要な領域で難しい仕事をすることで、インプットをユニークにする、あわよくばユニークな経験が副作用として、情報処理のプロセスそのものを変えていく、という戦略をとりました。

こうして生まれた自分なりの美意識のような物差しを、いよいよ仕事に活かせる段階にいるのだと認識しています。

 

ここにきて、新たに重要性を帯びてくるのが、ビジョンです。

Komazaでの仕事を通じて、人類の20世紀の課題である貧困、21世紀の課題である気候変動という2つの大テーマを追いかけてきました。

一方、自分がベンチャーの実務で得意としてきたのは複雑な局面をシンプルなシナリオに分解し、最も少ない手数で解決していく、といういわば戦場指揮官的な仕事で、局面そのものを規定する上位構造そのものにチャレンジすることはあまりありませんでした。

ファイナンスという職制そのものが、技術的な解決法である、という面もあります。

しかし、あらゆる社会課題は、課題を生み出すシステムそのものを変えないかぎり解消されません。

システムを構成するのは、政府や民間セクター、社会にとどまらず、戦場指揮官である自分も含まれます。

日々の課題解決をしているだけでは、どんなに頑張ったところで、あくまでシステムの一部でしかありません。

システムそのものに疑問と仮説をぶつけて、アプローチしない限り、大きな変化は期待できないのです。

 

システムにアプローチするというと、「視座を上げる」というイメージを持ってしまいがちですが、本当に大切なのは抽象的な視野を持ったうえで、自分なりにポジションを取り、行動を通じてシステムに働きかけることです。

そうして初めて、構造が生み出す問題ではなく、問題を生み出す構造そのものを変えることができる、ということをAcumen Fellowで改めて感じました。

Ashoka時代に「System ChangeなくしてSocial Entrepreneurshipなし」という議論を散々していたのに、気づけば日常のカオスに飲み込まれ、既存のシステムに取り込まれていたと猛省しています(システム思考大事!)。

システムに挑むということは、偶然ではなく必然であり、意思決定でもあります。

 

今年のテーマである「而立」という言葉で捉えるなら、これまで自分は現場の実務で優れた成果を上げることがひとり立ちの指標になると勘違いしていました。

目指すべきは、現場で成果を上げながらも、システムそのものに対して、意図を持って働きかけることができるリーダーシップであり、視野を広め、視座を高め、システムそのものにポジションをとらねば一人前とはいえません。

今年は、気候変動をテーマに、自分なりの視点と世界観、そしてあるべき姿のクリアな仮説を持ちたいと思います。