Zeitgeist

ケニアのスタートアップで企業参謀。留学した後の話。

Komaza 101週目:バブルを探せ

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「バブルはどこにあり、なぜ起こり、いつ崩れるのか?」

三菱商事一年目のとき、定期開催される部会のマーケット定点観測をしていた際に、毎回部長が言っていた問いだった。

当時は、原油と船舶のバブルが激しい局面を迎えていて、 投資先や関係部署、社内外から情報収集しながらのマーケット観測は非常に勉強になった。

新聞などに出てくる「バブル」は景気全体を指すことが大きいが、値段がつけられ投資の対象になるものはすべて局所的な需給バランスによって、波を生み、バブルが発生と崩壊を繰り返す。

 

昨今の米中貿易摩擦にせよ、Brexitにせよ、WeWorkにせよ、いい加減この好景気も終わるのではないか、ということマーケットがいちいちイベントに反応するびくびくした感じは去年末からずっと続いているわけで、資金調達命のスタートアップとしては、考えないわけには行けない。

ちゃんと数字を追い切れていないけれど、アセットクラスごとの印象としてはこんな感じだろうか。  

 

Real Asset:不動産は価格上昇が続き、利回りと金利のスプレッドはぎりぎりまでさがっている。一方で、都市化やら経済発展やらで都市中心部のコア不動産などは、中長期的にはバリューを保てそうで(次のバブルでまた上がりそう)、価値が暴落しうるのは周縁部で「バブルだから」投資されたもの。インフラも相変わらず値段が高いし、森林もNCREIFはじめリターン目線はじりじり下がっている。リーマン後の量的緩和・低金利で安定収益を失った機関投資家がキャピタルゲインなどのアップサイドよりもキャッシュを求めて流れ込んできているので、信じられない低利回りでも投資家がついている。景気の修正局面直前な雰囲気はあるが、前回のサブプライムのように、コントロール不能なリスクは相当規制されているので、金融インフラそのものがぶっ飛ぶようなことはなさそうだ。90年代の日本のような不良債権化というのも、新興国やDistressedでない限り、リアリティがない。

 

Private Equity:マルチプル高い。そして、空前のファンドレイズ好調。うろ覚えだけど、2兆ドルに膨れ上がったドライパウダーの太宗は、修正局面まで投資期間ギリギリで待つものと思われる。PEファンドは閉じるまでわからないので、うまくタイミングが合って不景気で流れてきたディールが消化できれば、やばいやばい言われている2018~ビンテージのファンドもリターンが出せるかもしれない。同じ流れを、原油バブルの底だった2015年のエネルギー専業ファンドでよく見かけた。彼らは、関連産業企業のリファイナンスが一斉に焦げ付くタイミングを待って、底値でDistressedの優良アセットをつかみに行って、最高レベルのリターンを叩き出していた。

 

Venture Capital:ヤバそうな話の総本山、今回のバブルの中心な気している。バリュエーションの高騰もさることながら、グロースステージの資金調達が、IPOからファンドに移ったことで、価格が狭いコミュニティの中で作られるようになってしまっている。ただでさえも内輪意識が強いVCの中で作られた期待値と、市場の冷めたShort Termisimな見方がぶつかると、がっかりIPOになる。WeWorkのバリュエーションやら直前の創業者のさばき方やらには、末期感が漂っている。修正局面は"Cash is king"かつ外部調達が難しくなるので、Uberのように”Burn till make it”な企業は相当大変になるはず(デット調達もコストが上がっちゃうし)。一方、すでに水面に顔を出しているAmazonやらAppleやらGoogleやらキャッシュリッチな大企業が周辺企業を買いまくることになるのかもしれない。Softbankがどっちの側かは、判断が難しい(CashもあるけどDebtもある笑)。後述のPublic Marketとも、GAFAはじめとして直接つながっているので、象徴的なディールが崩れると、一気に資金が引き上げる可能性が高い。

 

Hedge Fundほか:ヘッジファンドが厳しい状況にあることは周知。そんな中でもトップファンドはリターンを出していたけれど、その筆頭格でリーマンを生き抜いたRay Dalioも今年苦戦しているなんて記事が出ている。ただ、資金流失はすでに進んでいるので、バブル崩壊の起点になることはなさそう。そういえば、MBSの後継商品として、再保険とかのCDOがリーマンショック以前と比べて数倍とかになっていた気がするけど(中身一緒笑)、これもシステミックなリスクはなさそう。

 

Public Equity:GAFAを筆頭にテックが引っ張っているのもあって、高い。あと、リーマン後に機関投資家相手に商売できなくなった投資銀行・金融機関のリテール進出は目を見張るものがある。ETFの拡大を憂慮する記事が出ていたけれど、リテール販売の爆増、中央銀行などによる買いオペレーション、低金利でリターンを求めてエクスポージャーを増やしたGPIFはじめとする超大型機関投資家のお金がぎっしり詰まっている上場株式は、それなりにやられるかもしれない。とはいえ、これは教科書通り。

 

Debt・Bond:リーマンショックの主役になったデットだが、その後の規制強化で、以前ほどマテリアルなリスクはなさそう。もちろん、ぎりぎりまで下がった金利とリスク基準が逆ぶれすることで大やけどするリスクテイカーたちは出てくるだろうけれど、それが経済全体を圧迫するとは思わない。ギリシャの危機なんて、Brexitのニュースですっかり忘れ去らてるけど、ヨーロッパの中央銀行の一つや二つデフォルトすることはあるかもしれない。

 

 

修正局面に至る道:

せっかくなので、ポジションをとっておこう。

今回の修正局面は、「テックバリュエーションの崩壊→上場株全体への波及→リスクオフによるクレジット収縮→修正局面突入→中央銀行機能不全→景気回復の長期化→政策による回復策(排外的関税、大型公共政策含む)」となると予想。

リーマンショックは、バブルが国際金融システムの中枢で大爆発して、システムそのものが連鎖的に破綻してしまったことで、Free Fallが起こったわけだけれど、今回は規制強化もあって、国際金融制度が崩壊するようなショックになるとは考えにくい。前回ほど深い落ち方はしないだろう。

一方、本当に怖いのは、一気に下降局面に突入した時に、すでに限界まで量的緩和をしている中央銀行が介入手段を失って、何もできなくなってしまうことだと思う。

既に各国とも長期金利がマイナスになったりして、投資家のバランスシートが徐々に狂っていっている中、マイナス金利を思いっきり強化するとも思えず、最終的には公共政策による政府セクター投資で乗り切る以外に景気刺激ができなくなってしまうとなると、なんだか戦間期のような感じだ。

今回のバブルを生んだのが中央銀行なら、今回のバブルのリスクも中央銀行にあるのではないか。

(実のところ最大のバブルは中央銀行のバランスシートであり、金が余っている状況でこれ以上金を増やすことが、経済を好転させることになるのか?)

そしてそれはショックの直接の原因ではなく、ショックを緩和する策が限られることで、回復にかかる時間が長引いたり、公共政策メインのポピュリスト的な政策(自国経済中心主義含む)に世界が傾くことなのではないか。

リーマンショックのキーワードがInterconnectednessだっただけに、今回はIsolationismがキーワードになるとすると国際政治的には興味深い。

ダメージの深さよりは長期化、InterconnectednessよりはIsolationismというのが今回の修正局面の特徴ではないかと思う。

 

というのが、ケニアのド田舎でぼんやり考えた今回の修正局面の見立て。どうなることやら。