気候変動スタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀をしていましたが、気候変動スタートアップを創業するためスタンフォードにいます。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

Komaza 84週目:中央ケニア視察

うまくブログにアクセスできないトラブルが続いて先週の投稿ができていなかったので、一週間遅れでこちらの投稿から!
 
今週は、並走するプロジェクトを抱えながら、フィールド調査。
バリューチェーンを改善するイニシアチブは各所で走っているけれど、その中でも特に歴史が浅い伐採のプロセスについて、ケニア国内でも林業が盛んな地域に行って、インタビュー。
当地ではアウトソースが主流で、林地の所有者・農家は、買い付けにやってくるミドルマンに伐採や搬出を依頼する。
というわけで、ギラギラした仲買人から、都会のオフィスで仕事をしつつ最近持っていた森林を伐採して車を買ったビジネスマン、田舎で農業をしながら林業もやっている農家のおじさまなどを丸2日かけてヒアリングした。
 
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(トラクターに接続した機材を使い、伐採場所でそのまま製材することで、輸送コスト削減している。ちなみに、保護具も何もなく作業するのは、国際基準上はアウト)
 
一番重要なのは、どんぶり勘定になっている収益構造をモデル化して、数字を精緻化することなので、雨期のぬかるんだ道を4WDで走りながら、運転している林業のおっちゃんを質問攻めにしつつ、エクセルでモデルを組んでいくというアドべンチャラスな経験もできた笑

乗り物酔いにならなかったのが奇跡。

 

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質問をしながら、その場で計算がしやすいように事前にモデルを組んでいたけれど、結局はヒアリングする相手の思考の枠組みやその場での推定に振り回されて、ほぼその場でゼロから組むことに。
ナイロビに戻る車中で、同行した中央ケニアのチームとおさらいをし、数字の矛盾点を補正して、最終的に理解のできる形になった。
もともとは、経営計画の一環として企画した調査だったけれど、ローカルとバリューチェーンの両方のチームと協業できたので、少しでも自分たちの仕事が日々の営業活動の改善につながればと思う。
途中、伐採の現場も見せてもらったのだけれども、随所に工夫がされていて大変勉強になった。

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(乾燥した沿岸部とは対照的に、高高度多雨の中央ケニアはお茶の名産地としても知られる。この地域での木材需要のほとんどはお茶を煎るための熱供給に使われる)

Komaza 83週目:

 
 
今週はようやく雨が降り始め、気温が30度前後で安定する過ごしやすい気候。
クーラーのない生活は、肉体的にかなり消耗するので、待ち望んだ雨期突入である。
 
仕事では、並行して取り組んでいたプロジェクトが中盤・終盤を迎えつつあり、よく言えば出口が見えて、悪く言えば画竜点睛をしくじらないように気を遣うことが増えている。
新しい投資家のコミットが決まったり、投資銀行出身の新しいメンバーがジョインしたりと、いいニュースの多い週。
週末は、シリーズBに向けたピッチを練るべくパソコンとメモ帳とにらめっこ。
 
余談だけど、どうも商社時代の気質なのか、テクニカルな財務周りだけでは満足できず、つい他の部門と面白いサイドプロジェクトをやりたくなってしまう。
売り上げにつながるディールや他機関とのパートナーシップ、地域との連携など、仕事が忙しくても1-2時間で事業成長のためにできることがあれば、忙しくても基本的に手を出すことにしている。
そんなことを18か月続けてきて、一年がかりで大きな動きが出てきたり、腐らずに連絡取り続けた投資家から出資を持ちかけられたりする。
ベンチャーファイナンスは、大企業以上に事業の内容・課題・展望を肌実感として理解する必要があるから、こうした「おせっかい仕事」も結構役に立ったりする。
こういうことが気兼ねなくできる、自由度の高さと市場からのフィードバックがベンチャーの魅力なのかもしれない。

Komaza 82週目:韓非子が描く、参謀の心構え

臣聞く、知らずして言うは不智、知りて言わざるは不忠、と。

人の臣と為りて不忠なるは死に当たり、言いて当たらざるも亦た死に当たる。

然りと雖も、臣願わくは悉く聞くところを言わん。唯だ大王其の罪を裁せよ。

 冒頭に紹介したのは韓非子の出だしで、知を売り物にする仕事の緊張感とアドバイザーとしてのクライアント(主君)への姿勢が凝縮されている。

「知らずして言うは不智、知りて言わざるは不忠」の方は有名な一節だけれど、 命を懸けて進言するものと宣言した後に「然りと雖も、臣願わくは悉く聞くところを言わん。唯だ大王其の罪を裁せよ」というさっぱりした姿勢に今の自分は共感を覚える。

 

参謀業は、もともとは軍事・政治をつかさどり、人命を左右する仕事だった。

ビジネスでは命こそ取られないけれども、一言一句に職業人生がかかっているのは変わらない。

軽率を戒めながらも、ポジションをとることを恐れずに思い切った進言をしなければいけない。

今の時代、本当に死ぬことはないけれど、会社が死んでしまう(倒産する)可能性はあるわけで、このプレッシャーの中でこそ生まれる思考にどこまでキレを持たせられるかが日々の挑戦になる。

 

だから、平素の心がけとして、あらゆる事態を想定してポジションをとれる準備しないといけない。

それでいて、難しい局面でも泰然自若に見えて、存分に実力を発揮できることがTrusted Advisorとしての理想だ。

そう思うにつけ、「ありかた」と「やりかた」の両面で自分の至らなさを痛感する。

学ばなければならないことはまだたくさんある。

 

ちなみに、週末にPIXARのCFOによる回顧録を読んだ。

Steve Jobsとの距離感や、巨人ディズニーとの交渉、エンジニアとの信頼関係など、絶妙なニュアンス満載で大げさだけれど現代版韓非子的なプロフェッショナリズムを感じた。

 

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

 

 

Komaza 81週目:イースター休暇

先週末はEaster休暇ということで、金曜日から月曜日までお休み。

色々なことが過去数週間でひと段落したので、疲れが出てきたのか仕事のペースがいまいち上がらず、思い切ってモンバサに遊びに行ってきた。

エアコン(Kilifiは扇風機だけ笑)のある部屋で、本を読んだり仕事をしたり、夜中に目覚めることなく眠れたり、いい気分転換になった。

モンバサ市内はニューヨークのマンハッタンと同じように島になっている。

いつも空港を利用するだけで市内を歩いたことがなかったので、世界遺産になっているFort Jesusと旧市街をカメラを持って歩いてみた。

 

ケニアの沿岸部はひどい干ばつに見舞われており、去年なら今頃道路が水浸しになっているはずなのに、今年はまとまった雨が全く降っていない。

それもあって例年の気候よりも気温が高く、雨が降らずに湿気が空気に残っているので、湿度が高いのかもしれない。

農業は、総労働人口の64%、GDPの35%を担う重要な経済ドライバーなので、世銀はGDP成長率の下方修正をしている。

日本の昔話で雨乞いとか村の行事とか、こうして天候でGDPが直接影響を受けると聞くと、実感がわいてくる。

ましてや、湿潤な内陸部とは違い、年一回の雨期で一年分の食糧を確保しないといけない沿岸部の農家は本当に大変だ。

 

 

 

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モンバサ旧市街

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モンバサ新市街

 

就活を効率化する5つのコツ

 

新卒で社会人になってから5年以上がたつのに、時々知り合い経由で就活の相談を受けることがある。
学生時代は、海外にいたこともあり、ボストンキャリアフォーラムという一世一代の大博打だけに絞って就活をして、いわゆる外資からこてこて日系総合商社まで大体10社くらいから内定が出た。
アメリカの大学で勉強もそれなりにきつい中で、つかの間の一時帰国やSkypeをフル活用して、約1か月準備して、丸4日間で30以上の面接とランチ、ディナー、コーヒーチャットを繰り返し、魂の抜け殻のような状態で最終日を迎えたのが懐かしく、どうやって生き抜いたのかはいまだに謎である笑
これは後から気づいたことだけど、会社説明会に参加したことがない。それに同級生との就活グループも作っていない。ほぼ、自力でネットワークを作り、情報収集をした。
 
この前同じように海外大学に留学している後輩とスカイプをしたら、相当な時間をいわゆる「就活」に充てていると聞いて驚いた。
一生を左右する時期なので、時間をかけたくなる気持ちもわかる反面、海外留学までして、こうしたしがらみに時間を奪われるのももったいない(人生で学問に打ち込める時間がどれほど貴重なことか!)ので、今更と思われることを恐れずに書いてみようと思う。
 
当時のメモや日記を読み返す限り、確実に知識が劣化しつつあるので、まだ覚えているうちに、当時の意識していて今もよく伝えているアドバイスを紹介したい。

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1.客商売はファームのカルチャーと同じくらい対面業界のカルチャーが大事

 
総合商社しかり、アドバイザリー業しかり、会社は一つでも様々な業界を相手にする企業では、企業のカルチャーと同じぐらい部門のカルチャーというのが存在する。例えば、商社だったら鉄鋼・機械などの重工業系は相手もカチカチの日本企業なのでお作法やら年功序列やらがかなりきつくて、ファイナンスやらベンチャー系は比較的軽快なカルチャーになっていたりする。なので、会社の文化という軸で見るだけでなく、自分の具体的な配属先を想像してみる必要がある。周りのコンサル・投資銀行にいる友人の話を聞いても、国や地域、経済環境ごとにメジャーな産業が違い、仕事の内容が違い、そしてカルチャーにも差が出ている。客商売は、自分を貫くためにやるのではなく、お客様のためにやることなので、そのお客様の求めるニーズのタイプが如実に仕事の文化に反映される。

2.競合の悪口こそ生の情報源

 
これはどうなのかと思うけど、同業者間ではどこの会社がどんな案件をどんな手で取っているかという噂は割と流れている。本来なら、守秘義務があるから、誰も知らないはずのことも、若手の同期間の話題などで知れ渡っている。これを直接「御社のクライアントは?案件は?収益源は?」と聞くのはもちろんNGだが、競合について噂話ベースで聞くのはこの限りではない。自分はコンサルを結構重点的に受けていたのだけど、各社OB訪問を終了した時点で、大体のクライアント名や案件名、主な収益ベース、といったのをマップ化できるくらいの情報が集まった。ちょっとした工夫だけど、OB訪問で競合の仕事っぷりについて聞いてみると面白いインサイトが得られるかもしれない。
 

3.内定をもらって初めて決断できる

 
よく応募する前にものすごく悩む人がいるけど、これはあまり得策とは言えない。もちろん、全部の業界・企業をうけるのは無理だとしても、複数業界複数社受けるのは、大変だったとしても不可能ではない。しかも、悩んだとしても自分が本当に向いているかはやってみるまで分からないし、それ以前にオファーが出るまでその進路というのは、自分の「選択肢」にはなっていないのだから、まずはどうやって内定を取るかに集中すべき。進路の悩みに逃げないで、淡々と対策を練る方が、最終的な選択肢も増える。捕らぬ狸の皮算用はしない。採用担当者と候補者の力関係が逆転する内定後のほうが、いい情報や条件を引き出せるので決断もしやすくなる(基本的に内定前と後では、紹介される社員も得られる情報も、当たり前ながらグレードが変わってしまう)。ちなみに、「弊社は第一志望?」という愚問を投げかけてくる採用担当者がいるが、こういう場合は、「非常に志望度が高い」とか「自分の中では本当に興味があるが、就職活動は相手にも適性を見極められる場なので、出願している企業の最終的な選考結果を踏まえて考えたい」と答えるとうまくかわせる。だって本当に意思決定できるのって、選択肢を全部そろえてからですよね、普通。
 

4.表面的な情報よりも、深い情報を求め、やってる感に満足しない

 
時々、説明会に行った回数やOB訪問の回数といった、筋の悪い定量的な基準を安心材料にしている人がいる。そんな形だけの評価をする会社に行きたくはないだろうし、ちゃんとした会社ほど表面的なことだけでは突破できないのだから、きちんと面接の練習をしたりケースをコツコツ解いたり、会社についての勉強をしたり、意味のある努力をすべき。同級生とつるんだり、就活セミナーに行ったりするのも気休めにしか見えない。基本的に同級生やセミナー講師の理解レベルなんてたかが知れているので、きちんと能力のある人が真剣に1次情報をあたって勉強すれば、本来的に回りに転がっている2次情報の質を数時間で超えられるはずだ。本当の情報は会社にあるわけで、業界や公開情報をよく読みこんで、実のある質問を1時間ぶつけ続けるだけで大体の理解はできる(たとえば、「年次報告書や中期経営計画とかちゃんと読んでますか?就活サイトの情報ばかり見ていませんか?社長の最近の講演のYouTubeは見ていますか?」といった質問に答えられない人は結構いる)。それをもとに各社のプロファイルを作って、競合との関係や今後のビジョンまで立体的に理解できれば、最終選考でも変なミスはしないはず。ただ、わかっていることと見せびらかすことは全然違うので、面接ではわかってますアピールをしないこと。
 

5.仕方のないことはあきらめる

 
大学の最終学年になってサークル活動以外に実績がないと悩んでみたり、GPAが低いと愚痴ったりする気持ちはわかるけど、全部パーフェクトというのはよほどのことがないと難しい。なので、取り返しのつかないことはさっさとあきらめて、今からできる準備や努力、実績作りを考える。変に劣等感を持って面接に行く人は、自信がないように見られやすいし、現状の課題を何とかして結果を出しに行くというのは実際のビジネスでも同じだと思う。
 
 
以上が、学生時代に気を付けていたことで、実際に役に立ったと思うアドバイスになる。 
ちなみに、進路決定そのものや入社してからの次のキャリアの考え方については、以前書いた記事を張り付けておくので、こちらもぜひ見てみてほしい。