気候変動スタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀をしていましたが、気候変動スタートアップを創業するためスタンフォードにいます。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

Komaza 81週目:イースター休暇

先週末はEaster休暇ということで、金曜日から月曜日までお休み。

色々なことが過去数週間でひと段落したので、疲れが出てきたのか仕事のペースがいまいち上がらず、思い切ってモンバサに遊びに行ってきた。

エアコン(Kilifiは扇風機だけ笑)のある部屋で、本を読んだり仕事をしたり、夜中に目覚めることなく眠れたり、いい気分転換になった。

モンバサ市内はニューヨークのマンハッタンと同じように島になっている。

いつも空港を利用するだけで市内を歩いたことがなかったので、世界遺産になっているFort Jesusと旧市街をカメラを持って歩いてみた。

 

ケニアの沿岸部はひどい干ばつに見舞われており、去年なら今頃道路が水浸しになっているはずなのに、今年はまとまった雨が全く降っていない。

それもあって例年の気候よりも気温が高く、雨が降らずに湿気が空気に残っているので、湿度が高いのかもしれない。

農業は、総労働人口の64%、GDPの35%を担う重要な経済ドライバーなので、世銀はGDP成長率の下方修正をしている。

日本の昔話で雨乞いとか村の行事とか、こうして天候でGDPが直接影響を受けると聞くと、実感がわいてくる。

ましてや、湿潤な内陸部とは違い、年一回の雨期で一年分の食糧を確保しないといけない沿岸部の農家は本当に大変だ。

 

 

 

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モンバサ旧市街

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モンバサ新市街

 

就活を効率化する5つのコツ

 

新卒で社会人になってから5年以上がたつのに、時々知り合い経由で就活の相談を受けることがある。
学生時代は、海外にいたこともあり、ボストンキャリアフォーラムという一世一代の大博打だけに絞って就活をして、いわゆる外資からこてこて日系総合商社まで大体10社くらいから内定が出た。
アメリカの大学で勉強もそれなりにきつい中で、つかの間の一時帰国やSkypeをフル活用して、約1か月準備して、丸4日間で30以上の面接とランチ、ディナー、コーヒーチャットを繰り返し、魂の抜け殻のような状態で最終日を迎えたのが懐かしく、どうやって生き抜いたのかはいまだに謎である笑
これは後から気づいたことだけど、会社説明会に参加したことがない。それに同級生との就活グループも作っていない。ほぼ、自力でネットワークを作り、情報収集をした。
 
この前同じように海外大学に留学している後輩とスカイプをしたら、相当な時間をいわゆる「就活」に充てていると聞いて驚いた。
一生を左右する時期なので、時間をかけたくなる気持ちもわかる反面、海外留学までして、こうしたしがらみに時間を奪われるのももったいない(人生で学問に打ち込める時間がどれほど貴重なことか!)ので、今更と思われることを恐れずに書いてみようと思う。
 
当時のメモや日記を読み返す限り、確実に知識が劣化しつつあるので、まだ覚えているうちに、当時の意識していて今もよく伝えているアドバイスを紹介したい。

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1.客商売はファームのカルチャーと同じくらい対面業界のカルチャーが大事

 
総合商社しかり、アドバイザリー業しかり、会社は一つでも様々な業界を相手にする企業では、企業のカルチャーと同じぐらい部門のカルチャーというのが存在する。例えば、商社だったら鉄鋼・機械などの重工業系は相手もカチカチの日本企業なのでお作法やら年功序列やらがかなりきつくて、ファイナンスやらベンチャー系は比較的軽快なカルチャーになっていたりする。なので、会社の文化という軸で見るだけでなく、自分の具体的な配属先を想像してみる必要がある。周りのコンサル・投資銀行にいる友人の話を聞いても、国や地域、経済環境ごとにメジャーな産業が違い、仕事の内容が違い、そしてカルチャーにも差が出ている。客商売は、自分を貫くためにやるのではなく、お客様のためにやることなので、そのお客様の求めるニーズのタイプが如実に仕事の文化に反映される。

2.競合の悪口こそ生の情報源

 
これはどうなのかと思うけど、同業者間ではどこの会社がどんな案件をどんな手で取っているかという噂は割と流れている。本来なら、守秘義務があるから、誰も知らないはずのことも、若手の同期間の話題などで知れ渡っている。これを直接「御社のクライアントは?案件は?収益源は?」と聞くのはもちろんNGだが、競合について噂話ベースで聞くのはこの限りではない。自分はコンサルを結構重点的に受けていたのだけど、各社OB訪問を終了した時点で、大体のクライアント名や案件名、主な収益ベース、といったのをマップ化できるくらいの情報が集まった。ちょっとした工夫だけど、OB訪問で競合の仕事っぷりについて聞いてみると面白いインサイトが得られるかもしれない。
 

3.内定をもらって初めて決断できる

 
よく応募する前にものすごく悩む人がいるけど、これはあまり得策とは言えない。もちろん、全部の業界・企業をうけるのは無理だとしても、複数業界複数社受けるのは、大変だったとしても不可能ではない。しかも、悩んだとしても自分が本当に向いているかはやってみるまで分からないし、それ以前にオファーが出るまでその進路というのは、自分の「選択肢」にはなっていないのだから、まずはどうやって内定を取るかに集中すべき。進路の悩みに逃げないで、淡々と対策を練る方が、最終的な選択肢も増える。捕らぬ狸の皮算用はしない。採用担当者と候補者の力関係が逆転する内定後のほうが、いい情報や条件を引き出せるので決断もしやすくなる(基本的に内定前と後では、紹介される社員も得られる情報も、当たり前ながらグレードが変わってしまう)。ちなみに、「弊社は第一志望?」という愚問を投げかけてくる採用担当者がいるが、こういう場合は、「非常に志望度が高い」とか「自分の中では本当に興味があるが、就職活動は相手にも適性を見極められる場なので、出願している企業の最終的な選考結果を踏まえて考えたい」と答えるとうまくかわせる。だって本当に意思決定できるのって、選択肢を全部そろえてからですよね、普通。
 

4.表面的な情報よりも、深い情報を求め、やってる感に満足しない

 
時々、説明会に行った回数やOB訪問の回数といった、筋の悪い定量的な基準を安心材料にしている人がいる。そんな形だけの評価をする会社に行きたくはないだろうし、ちゃんとした会社ほど表面的なことだけでは突破できないのだから、きちんと面接の練習をしたりケースをコツコツ解いたり、会社についての勉強をしたり、意味のある努力をすべき。同級生とつるんだり、就活セミナーに行ったりするのも気休めにしか見えない。基本的に同級生やセミナー講師の理解レベルなんてたかが知れているので、きちんと能力のある人が真剣に1次情報をあたって勉強すれば、本来的に回りに転がっている2次情報の質を数時間で超えられるはずだ。本当の情報は会社にあるわけで、業界や公開情報をよく読みこんで、実のある質問を1時間ぶつけ続けるだけで大体の理解はできる(たとえば、「年次報告書や中期経営計画とかちゃんと読んでますか?就活サイトの情報ばかり見ていませんか?社長の最近の講演のYouTubeは見ていますか?」といった質問に答えられない人は結構いる)。それをもとに各社のプロファイルを作って、競合との関係や今後のビジョンまで立体的に理解できれば、最終選考でも変なミスはしないはず。ただ、わかっていることと見せびらかすことは全然違うので、面接ではわかってますアピールをしないこと。
 

5.仕方のないことはあきらめる

 
大学の最終学年になってサークル活動以外に実績がないと悩んでみたり、GPAが低いと愚痴ったりする気持ちはわかるけど、全部パーフェクトというのはよほどのことがないと難しい。なので、取り返しのつかないことはさっさとあきらめて、今からできる準備や努力、実績作りを考える。変に劣等感を持って面接に行く人は、自信がないように見られやすいし、現状の課題を何とかして結果を出しに行くというのは実際のビジネスでも同じだと思う。
 
 
以上が、学生時代に気を付けていたことで、実際に役に立ったと思うアドバイスになる。 
ちなみに、進路決定そのものや入社してからの次のキャリアの考え方については、以前書いた記事を張り付けておくので、こちらもぜひ見てみてほしい。
 

Komaza 80週目:感情を整理する方法

今の仕事の大半は、テーマを設定し、アプローチを考え、データを集めて理解し、表現し、判断するという一連のサイクルの繰り返しになっている。
このプロセスには、ビジネスやファイナンスで使われる技法を使いながら、より正しい現状理解と課題設定をすることで、判断を下していく理知的な部分と、人の感情に訴求するウェットな部分が付きまとう。
それを理解するために、書くことは大切になってくる。
理知的に考え、表現すること自体は、山ほどいい本があるので、それを勉強すれば身につくけれど、書くことを通じて自分の感情を理解するインパクトも実は同じくらいあるのではないかと最近思っている。
 
ベンチャーの不安定な環境でどのように判断をすればいいのか迷ったり、得体のしれない不安に悩んだりするときがある。
そういう時に悶々とするのではなく、自分の感情を吐き出し、客観視するために日誌をつけ始めてから、自分の中でこんがらがっていた論点や不安の正体がおぼろげながらつかめるようになってきた。
社会人になって2年目くらいに、仕事に追われて倒れそうになった時期に始めた瞑想も効果絶大だったが、漠然とした不安や堂々巡りする考え事に頭を抱えているときに、思うが儘にパソコンの前に座って感情を書き出してみるだけで、思考のキレが変わってくる。
人のこんがらがった悩みを整理するのが得意な方なのに、自分の悩みは一向にすっきりできず、困っていたのも、いったん文章として吐き出してしまえば、それを他人事のようにまとめることができるようになった。
 
最近はGoogle Docの音声認識もあるので、独り言のように話しながら、同時編集で文章をまとめることも多い。
大変な時、自分自身と短時間で向き合って折り合いをつけねばならない時には、悪くない方法だと思う。
 

Komaza 79週目:FAOでのプレゼン

今週は月曜日から水曜日までローマ出張、そこからナイロビ出張、という移動の多い一週間だった。

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(FAOはムッソリーニ時代に植民地省が置かれていた建物で、目の前はチルコ・マッシモとコロッセウム、後ろにはカラカラ大浴場という絶景を眺めながら、屋上のカフェテリアでのむエスプレッソは格別←仕事です)
 
ローマでは、国連の食糧農業機関(FAO)で、サステナブル林業を推進するためのBlended Financeをテーマにラウンドテーブルがあり、NGOからビジネスへの転換、森林ファンドを通じた独自の資金調達を進めるKomazaのファイナンス戦略についてプレゼンをした。
 
業界の集まりは、直接の仕事上のインパクトにはつながりにくいと普段は辞退しているものの、Komazaがアフリカ林業や零細農家のビジネス支援という文脈でIndustry Makingをしていくことは、今後の資金調達にも役立つと考えて参加した。
 
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プレゼンの要旨は、こんな感じ。
  • アフリカ林業への投資額は、年間50兆円に上るClimate Financingの0.01%未満。人口増と経済成長、森林破壊という三重苦にあるアフリカの世界での立ち位置を考えると著しいUnderinvestment。
  • Blended Financeの役割は、コンセプト検証とグロースの二段階に分けられる。Komazaの場合は植林を零細農家と長期パートナーシップを使って行う高リスクな取り組みをNGOとして寄付を中心に乗り切った。その結果として、モデルの実用性が証明された際に株式会社化することによって、NGO時代の寄付は「Derisking Facility」として機能していた。
  • コンセプト検証後、Komazaは株式会社への改組を行った。この時点で、すでに完全な商業ベースへの移行を唱える声もあったが、結果的にはNGOとしての10年近い実績と商業ベースでのサステナブルなビジネス形態に注目が集まり、インパクト拡大をめざす投資家・ドナーからより高額の資金調達ができるようになった。また、ファイナンス目線の投資家が増えるにつれ、彼らからもより低コストな資金(寄付・低利融資など)を調達することへの期待が高まっている。結果として、グロース機関においても、Concessional Financeへの需要は下がるどころか増加しているということがKomazaの経験となっている。
  • Constitutionalityについては、国際機関・開発銀行などから慎重論が唱えられているが、Climate Financeについては再生エネルギー投資を中心に莫大な公的資金が注入されている。一部の金融機関は、分散型ソーラー発電をはじめとする再エネ投資と同程度のFinancial Sustainabilityを求めてきているが、こうした投資案件も結局はアセット側で政府が電力の定額買取に公金を投入しているからこそできるものであり、厳密なFinancial Sustainabilityを林業セクターのみに求めるのは的外れである。
  • 形だけのプロジェクトや資金提供はもちろん不要だが、Financial Sustainabilityを盾に資金提供を拒む姿勢は案件育成の観点からも産業育成の観点からもPublic Financeの役割に反している。事業側としては公的・民間の両方の株主の社会的・環境的・経済的インパクト期待に応えられるリターンを出せる「ストラクチャリング」を行っていくしかない。ソーシャルセクターにあるベンチャーにとって、High-Risk High-Returnの投資家は希少な存在であり、投資家の社会・環境的インパクトへの期待と経済的リターンへの期待をバランスするために異なる仕組みをつける必要があるのだ(下図参照)。

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あとは、今開発しているSmallholder Forestry Vehicleの説明もした。
 
FAOは、以前にも勉強のために来たことがあり、今回で二回目。Blended FinanceやClimate Financeへの興味が高じて、FAOのミッションにアドバイザーとして参加させてもらったりこしたこともあったので、当時お世話になった方々にも再会できた。2年前には登壇者になるなんて想像もしていなかったのがちょっと感慨深い。
 
 
あの時、キャリアの相談に親身になって乗ってくれた方々に改めて感謝したい。週末からはまた元の生活に戻るので、淡々とやるべき仕事を仕上げていきたい。
 
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 (ホテルの近くにもすぐに紀元前の遺構が残る)

 

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(出張恒例の食い倒れ、朝昼晩と仕事で埋まったので、間にカフェでうまいものを物色) f:id:tombear1991:20190401173944j:plain

(エスプレッソ込み5ユーロなのに感激。住みたい笑)

Komaza 78週目:Principles of Impact Investing

いつもKomazaでお世話になっている創業初期からの投資家Jorisが、LinkedInで面白い投稿をしていた。

 

インパクト投資と呼ばれるアセットクラスは、2000年代から少しずつ成長が始まり、GIINの調査によると2018年には総額25兆円近いAUMを持つ一大セクターになりつつある。

さらにすごいのは、成長率で、2017年のAUMが12兆円程度だったことから、一年でアセットクラスが倍増するという驚異的なスピードで伸びている。

最近では、SDGsか気候変動関係で、これまでソーシャルセクターとは縁遠かった民間企業も新興国やBOP市場の観点で進出してきているし、かつてはソーシャル・ファイナンスの一大成功例と言われたマイクロファイナンスもフィンテックの一環としてクレジットカード会社やテック企業などが投資するようになっている。

こうした潮流をふまえ、新しい投資家やこれからインパクト投資をキャリアにしたい人の参考になると思うので、紹介してみたい。

 

Jorisによると、インパクト投資家がとるべき態度・アクションは5つに集約される。

 

(1) make sure you make a difference (possibly by being different); 

>意訳:インパクト投資家は一般の金融投資家が取れないリスクを取りに行くことを目的にしている。それこそがAdditionalityになるのだから、起業家にとって適切なタイミング、方法で、(アーリーステージであれば)将来の事業仮説検証ができる形で投資をすべき。

 

(2) remember that things take time in East Africa; 

>意訳:何をするにも時間がかかる。比較的きちんとした国の、まともな業界の有望なスタートアップでさえも投資回収に20年近い時間がかかることがある。10年未満のファンドは正直厳しい。

 

(3) accept that great implementation – always –  beats a great plan (or app); 

>意訳:実行段階で色々な障壁が出てくるのが東アフリカ。実行の部分を軽視してはいけない。

 

(4) be ready to suffer (a little); 

>意訳:時間もかかるしハードシングスはあるから気持ちの準備をしておく。

 

(5) be clear-eyed about the trade-off between impact and financial returns. 

>意訳:社会的リターンと経済的リターンのトレードオフを理解しておく。もちろん、経済的リターンをあきらめてよいわけではないが、先に述べたインパクト投資家の「金融投資家にできないリスクをとる」という定義からしてもわかるように、ほとんどの場合でSub-Commercialな経済的リスク・リターンになることはきれいごと抜きで考えておくべき。

 

And after all this? Enjoy and be proud of what you are doing

>意訳:せっかくやるなら楽しもうぜ!

 

当たり前といえばそれまでだけれど、インパクト業界で仕事していて思うのは、こうした「当たり前」がファンドの契約や組織の施策として一貫して反映されていないケースがほとんどということ。

一般投資家との差別化をうたいながら、裏側ではゴリゴリにコベナンツをつけてきたり、リターン期待値を北米VCとベンチマークしてきたり、Exit期間を最長5年しかなかったり、「成り立たないだろうな」という建付けがあまりに多い。

特に最近は国際機関からの数百・数千億単位での投資も増えて、毎年新しいファンドがローンチされているわけで、新しくファンドマネジャーとして旗揚げする元金融・開発プロフェッショナルの力量が大いに試されている。

その点、10年以上淡々と続いている本当のPatient Capitalistの役割は大きいし、彼らの率直な学びはもっと共有されてもいいんだと思う。