気候変動スタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀をしていましたが、気候変動スタートアップを創業するためスタンフォードにいます。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

Komaza 56週目:最後に大切なもの

今週末は来週の大仕事に向けた最終調整。
連日の仕事でヘロヘロになりながら、最後の一押しを頑張る時。
数年ぶりに自分の限界スレスレを飛んでいる感じがある。
 
これまでも何度かこういう「ここぞ!」という瞬間があったけれど、自分にエールを送るつもりでもう一回振り返りたい。
 
  • 残体力とエネルギー:当日のエネルギーはきちんと残しながら、残体力ギリギリまで粘る。

 

  • ボトムラインで考える:これまでやってきたことをまずは棚卸し、100%メッセージを伝え切れているか振り返る。その上で、伝えるメッセージをはっきりさせ、それに向けてアウトプットを研ぎ澄ます。

 

  • リハーサル、リハーサル、リハーサル:自分のパートは最低5回、可能なら10回は通し練習。それ以外にもドラフトを用意したり、3分サマリーをしたり、あっちこっちでつぶやきながら、体に染み込ませていく。瑣末なディテールは飛ばしたり、忘れたりしてもいい、ただ本当に大切な殺し文句は、完全に暗唱しておく。

 

  • 全部やる:できることは全てやる。過剰な準備を厭わない。めんどくさいに負けない。ダラダラしたせいで一生後悔するのは、人生のあり方として間違っている。やると期待されていることをやるのは、アナリストの仕事。やるべきこと、やることで成功に結びつきうることを自分で考えて最後までInvestするのが、プロの仕事。

 

  • 信じる、信じるために準備する:準備というと、発表資料をきれいにするだとか、かっこいいメッセージをつくるとか、そういうことを考えがち。でも、最後は自分がくっきりとピッチする未来を描くことができているかが、伝える側のハラ落ち度、説得力に直結する。そして、もし一旦その場に立つと決まったなら、その場で信じきれるだけの準備を自力でする。最後の夜に眠れなくなっても、あらゆる可能性を考え、試算し、自分で納得できる一線を決める。仲間を信じ、事業を信じるからこそ、あらゆる思考を働かせる義務がある。

 

  • 全部忘れる:説明の場に立ったら、なるようにしかならない。あとは相手の呼吸を見ることに集中し、自分の努力を信じて腹の底から出てくるメッセージに神経を研ぎ澄ます。不安があっても、この時だけは忘れる。一瞬のためらいが、全てをぶち壊すことを肝に銘じて堂々と踏み込んでいく。

 

残り1日、職業人として悔いのない仕事をしたい。

Komaza 55週目:ケニアに来て1年で身に付きつつあること

前回の記事に続いて振り返り。今回は、まだ途上だけど身につけつつあること。
 
前回の投稿では、仕事のカテゴリ的なものが中心だったので、今回は精神的な面について。
不安定な状況、確率的にしか成功が見込めない中で、バランスよく複数の案件に全力投球する力を鍛えられた気がする。
基本的に仕事はできることを最後までやりぬく主義だけれど、同時にもう一人の自分はまるでポートフォリオマネージャーのように淡々とそれぞれの案件の重要度とインパクト、リスクを分析して、追加投資するのか、損切りするのか、現状維持かを決めている。
新入社員の時の根性だのみの仕事からは、少しは成長できたのかもしれない。
 
ベンチャーの日々は、どんなに準備をしていても予期しないイベントが毎日のように出てくる。
準備しきれない出来事にも、冷静に向き合うことができれば、解決できない問題なんてほとんどないのだけど、いくつもの難題がどかっと降ってくるときなどは、気持ちが滅入ってしまったりする(そうすると、本当に解決不能になってしまう)。
そういう意味で、突発的な社内外のクライシスを「なんとかなるさ」と受け流す鈍感力(感情的にスルーするだけで、仕事としては真正面から考える)と、経営リスクというマクロな目線で「これがコケたとしても死なない」とロジカルに割り切る力、その二つがベンチャーで求められる「心の準備力」なのではないかと思う。
 
よく経営者や政治家が「楽天主義」や「鈍感力」を大切な資質としてあげているが、それは単に能天気でいいというわけでも、職業人としての感性を大切にする必要がないわけでもないようだ。
禅の世界ではないけれど、目の前にどんなことが去来しても、原点に立ち返って、澄んだ心で場を読み切る力に近いものを感じる。
感じないのではなく、感じた上で、不安を手放す能力。そして、リスクへの恐れを手放すことでできる大きな仕事。
決して思考停止でも、パニックでもない、心身脱落して課題に向き合うための揺るぎのない矜持のようなものを早く身につけたい。

Komaza 54週目:ケニアに来て1年で身についたこと

先週末は、仕事に埋もれる辛さから逃れようとモンバサのSerena Resortというホテルに泊まりに行く。
ビーチの前のリゾートで、雰囲気も料理も抜群だった。
仕事の方もバリバリ進んで、うそのよう。
毎日の仕事をいかになんとかするのか、やる気がないときの最後のOne Pushをどうするのかは大切な自己理解の側面だと思う。
 
さて、実はケニアにきて一年という節目なので、備忘録として仕事の内容を書き出してみた。
仕事も毎日が勝負所で、きちんと振りかえれるのは年末になってしまいそう。
  • Series B: ベンチャーとPEの谷間でのファンドレイズ。大型機関投資家や開発銀行のDDに耐えられるデータルーム作成。分析。
  • Management Plan:経営計画の骨子作り。ファイナンスサイドからの検討。 
  • Finance Plan:成長に向けた資金計画とシミュレーション。
  • SPV and Other Structuring:森林ファンドの組成やDD。ファンドレイズ。
  • Cash Management:キャッシュフロー管理。
  • Grant Management:億円単位のグラントの管理監督。
  • Project Salvage:やばい時のなんとかする力。
  • Government Relations:政府や開発機関とのパートナーシップ交渉。ドキュメン。

Komaza 53週目:ナイロビでの思いがけない再会

昨日に引き続き、今日も投稿。

今回のアメリカ出張は、個人的にも何人もの再会があった。

ブラウンの時の友人たちや、ファイナンス業界で大活躍している親の世代の先輩も然り、4年ぶりのアメリカを満喫する(ちゃんと東海岸名物クラムチャウダーとステーキも食べた)。

他にも、三菱商事時代にお世話になっていた部の先輩がニューヨークのファンドに出向していたりして、久しぶりにご報告できたのも嬉しい。

 

帰りの乗り継ぎがあったナイロビでは、いつもお世話になっているVCの方との面談に合わせて、日本からケニア視察ツアーにいらしていた一橋大学名誉教授の米倉先生ともお会いできた。

ソーシャルセクターではTeach For Japanはじめ多くの団体にも関わり、知らない人はいない米倉先生。

同じタイミングで会社を辞めてミャンマーで起業することになっていた小沼くんの紹介でケニアに行く前に一度お会いしており、見ず知らずの若者に「とにかく頑張れ!」とエールを頂いて以来、ようやく直接アップデートの機会をもてて一安心だ。

 

僕はもともと友達が多い方ではないけれど、自分が何かで踏ん張っているときに「あの人ももっと頑張っている」と思わせてくれる仲間や先輩がいることは、ありがたく思う。

そういう人たちとずっと同志でいられるように、走り続けたい。

 

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Komaza 52週目:ニューヨーク出張

先週のブログがまだ投稿できてないので、今週末は連投しようと思う。
前回の投稿でも書いていた通り、先週から1週間ちょっと、アメリカ出張に行ってきた。
 
目的は、2月にAward受賞したClimate Policy Initiativeの気候変動対策ファイナンスのアイデア賞の最終プレゼン。

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(発表後はついにチームKomazaxCPIで写真をとる。スカイプとメールだけのやりとりだったので、集合写真は初めてだった)

 

プログラムは米英独政府とロックフェラー財団、ブルームバーグ財団が出資して、世界銀行、IFAD、ブラックロック、WTWなど名だたる金融・開発機関がメンバーに名前を連ねており、気候変動対策を加速させるアイデアを表彰している。
単なるアワードはよくあるけれど、このプログラムの特徴は受賞した団体が、2,000万円相当のコンサルをプロボノで受けることができること。
 
当然ながら応募団体は環境系のNGOだったり、新興国のベンチャーだったりするわけで、何千万もかかるコンサルを発注したり、高給取りのCFOを雇ったりする余力がない。
そんな団体のために、いいアイデアの芽を拾い、世界の主なリソース(機関投資家から開発専門機関まで)を全部突っ込んで、一流の議論に耐える形にする、結構いい仕組みだと思う。
実際、開始8年で、実現したプロジェクト総額13億ドル(1,400億円)、メンバー機関からも280百万ドル(300億円)の出資があったというから、効果は抜群だ。
 
この賞はアプリケーションから、最終選考のプレゼン、コンサルのプロセス、最終発表まで全部一貫して自分でマネージしたプログラムで学ぶことが本当に多かった。
特にSocial Impact畑の自分にとっては、Climate Financeの言葉遣いや考え方を世界のトッププレーヤーと議論しながら学べたこと、開発中のSmallholder Forestry Vehicleのアイデアをじっくりと詰められたことは収穫が大きい。
毎週何時間もスカイプして、ドキュメンして、調べ物をして、というプロセスで得られたものは、2,000万円の金銭価値よりもずっと意味がある。
 
あと、これは余談だけれど、発表会場はマンハッタン中心部の高層ビルにあるロックフェラー財団の大会議室、専属のメディアチームによる資料・ビデオ・プレゼンのリビューまで、開発・環境業界特有の異世界感も味わえた笑
メディアチームが一生懸命動画も作ってくれたので、興味のある人はぜひ見てみてください!


The Smallholder Forestry Vehicle