気候変動スタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀をしていましたが、気候変動スタートアップを創業するためスタンフォードにいます。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

やりたいことのある新社会人へ:3年で会社を辞めるために、入社前にできること

日本では桜が咲いて、卒業シーズン真っ只中、ということで、4月から新社会人になる方向けの投稿です。
 
新社会人に会社を辞める方法論を贈るのはどうなのかと言われそうですが、日経新聞などでも3年で退職する若手が増えていることが取り上げられる昨今、新社会人でさえがむしゃらな新人時代を経ればすぐに次の人生の決断フェーズにはいってしまうのもまた事実です。
新しい環境に飛び込んで余裕がなくなる前の、今のうちに考えておいたほうがいいこともあるだろうと思い、あえてこの記事を書きました。
 
人生の節目を自分でデザインして、「今の職場に残るのか、新しい挑戦をするのか」をシビアに判断し続けることは、一本線のキャリアというものが存在しない中で、納得のいく職業人人生を実現する数少ない方法になるのではないでしょうか。
充実した学生生活を送り、就活ランキングの上位に名を連ねる超一流企業に入社した人たちには、「とりあえず3年」と言ったまま、気づけば30代という人や、会社のブランドと自分の能力を取り違えて、気づいたらどうにもならない(転職したくても市場価値がつかない、今の高待遇から動きたくなくなる, etc.)状況になっているケースも散見されるからです。
もちろん、一流企業でしかないビジネスの機会や経験もあるので、別に転職をしないといけないというつもりはありません。
僕自身も最初に就職した三菱商事で非常に多くを学び、貴重な体験をさせてもらいました。
ただ、もし真剣に将来起業をしたり、自分の中長期の目標に向けて、ファーストキャリアを確実なステップにしたいというのであれば、それに向けた準備をするのは入社前の今だと思うのです。
 
この記事では、新卒で三菱商事に入社することを決めた自分が、「5年後につまらなくてプライドだけ高いダメな大企業若手になっていたらどうしよう」とか「大学時代にこれほど情熱を持っていたインパクト投資のことをすっかり忘れていたらどうしよう」とか「まったく希望していない部署に配属されたらどうしよう」とか不安になりながら、考え出して実践した「ちゃんと辞める方法」を紹介しています。
新しい仕事への向き合い方や、新入社員としての務めを果たしながらどうやって人生のパッションを追い求めることができるか、悩んでいる人の参考になれば嬉しいです。
 

その1:未来の自分に手紙を書く

内定を受諾した日、僕は3通の手紙を書きました。
1通目は、今回の仕事が自分の人生に果たすであろう意義(Investment Thesisについては過去記事参照)、自分の目標と決意について。
2通目は、1年後の自分に向けた手紙。1年目の結果はどうだったか、仮説は検証できたか、仕事の成果は上がっているか、次に向けたビジョンをきちんと考えているか、など進路の意思決定で悩んだことも含めて想いをぶつける内容です。
3通目は、5年後の自分に向けた手紙。これは、一言、「やりたいことは見つかりましたか?会社は辞めましたか?」としか書いていません。
 
最初からやる気がなかったわけでも、辞めたいのに会社に入ったわけでもありません。
行くからには最高の成果を上げて、最高の評価を得るということは大前提でした。
ただ、忙しい日常や目の前の仕事に圧倒されて、あっという間に20代が過ぎるという話をよく聞いていたので、未来の自分が人生を振り返る場を強制的に作り出すための仕組みとして準備しておきたかったのです。
 
自分の就活はかなり厳しい選択(基本的に受けた会社のほぼ全てからオファーが来て、一番リスクが高い決断をした)だったこともあり、1年後や5年後に自分が慣れきってダラダラしていたりしたら喝を入れてやろうという狙いもありました。
1通目と2通目は、職業人としての原点を忘れないためのリマインダーのようなもの。
5年後に「もう会社は辞めましたか?」と書いたのは、5年もいたのだからやりたいことを見つけて一歩を踏み出す選択をするのか、それともやりたいことを社内で見つけて「会社を辞めない」という選択をするのか、主体的に決断しているかどうかを問いたかったからです(辞めることを目的化する意図はありません)。
 
実際、この手紙のおかげで、本来5年かかるかもしれないと思っていたほぼ全ての項目を2年半で達成することができました。
この手紙を折に触れて見返しながら、自分が成し遂げたいことと次のステップに向けて必要なことを確認し続けた結果、上司や友人からのフィードバックを頼りに勉強するのではなく、自律的に進歩を重ねることができたことは、今振り返ってみても大きなプラス要素でした。
そもそも何のためだっけ?という問いは、フルタイムで仕事をしている時には厳しい質問で、何回かに一回は、「そんなのわからない!」とパニックになることもあります。
 
最初に何を考えていたかを明文化しておくことで、初期仮説に対してどう思うか内省し、短時間の振り返りで仮説を修正して磨き上げることができるようになります。
仕事をしていて時間がない中、毎度ゼロベースで考える内省では、基本的に似たようなことを毎度考えて終わりの堂々巡りをしがちで、1年たっても前年と同じ程度の議論をしてしまうリスクも高いわけです。
 
自分への手紙は、仕事自体が辛い時期に初心に返って、自分を励ますいいモチベーションツールにもなります。
あるいは、いわゆるブラックな職場で肉体的・精神的に追い込まれた時に、自分を守るために会社を去るべきか、それとも踏ん張るべきか、という決断も最初の目標と照らしてみれば、「必要な努力」なのか「無駄な苦労」なのかの区別もつきやすいでしょう。
 
 

その2:四半期レビューをする

四半期に一度は自分の状況をリビューしていました。
 
スキルセットや仕事への姿勢(プロフェッショナリズム)だけではなく、この仕事からいかに自分のキャリアのテーマを見つけていけるのか、現時点の最善解は何か、どうやって人とは違う事業をすればいいのか、いま関わっている業界構造からの学びは何か、などなど、「そもそも自分は何をしたいのか」という問いをより具体的にした問いを自分に投げかけて内省の材料にします。
ほとんどの場合、答えは出なかったですし、正直最初の一年は強制的にヤバイ環境(※海外大卒でフリーダムに慣れきった自分が、日本の最もコンサバな総合商社の新入社員をしている状況)でどこまで戦えるか、挑戦してみること自体が目的だったので、すぐに会社を辞めたり起業したりということは考えませんでした。
 
ただ、間違いのないことは、こうした本質的な問いを答えが出ないなりに自分に突きつけ続けることで、少しずつ自分のキャリア観がはっきりしていくこと。
そして、仕事をしていても、友人と遊んでいても、常にそのヒントを探すようになることです。
小さな違いのように見えて、数年単位で見ると結構違いが出てきます。
新入社員研修で同期に話した内容と、数年後のフォローアップ研修で話す内容が同じレベルというのは、わりとよくある話です。
 
ほとんどの人は、人生の節目にキャリアを考えるといいますが、僕はそれは遅すぎると感じています。
「節目」はたまたまできることも多いですが、その節目での正しい戦略判断を支えるのは、節目と節目の間の準備だと思うからです。
尊敬する経営者、藤田田は「心眼を開け、好機は常に眼前にあり」と言っていますが、節目の存在に気付くアンテナを研ぎ澄まし、それをきちんと活用する準備をするために、定期的な振り返りは有効ではないでしょうか。
 

その3:運命と仮説について考える

人生には無限の可能性がある。ということは、可能性の数だけ決断をせまられることになります。
とはいえ、筋の悪い方向に行けば破滅してしまうけれど、大まかな流れさえ見誤らなければ、あとは決断後の工夫や努力でなんとかできてしまうというのもまた真実でしょう(そもそも困難がない選択など存在しない)。
つまり、キャリアにおいて決めることのウエイトは、決めた後の努力などに比べれば、たいしたものではないのかもしれません。
 
コンサルのケース面接みたいに大上段のマクロ分析から絞り込む必要はありません。
たまたま担当になった案件を眺めてみる、たまたま見つけた事業を見てみる、「運命的」というほどドラマチックではないかもしれないが、偶然の中に面白いものがないか、というのは大切な視点です(じゃないと「世界経済の動向」とか「アプリ業界の変遷」を分析しているうちに、現実世界も変わっていってしまう)。
リベラルアーツで学ぶ「点をつなげてストーリーにする力」さえあれば、綺麗な説明なんていくらでもできてしまうわけで、正直なところ決断はもっと直感的でもいいんだと思います。
世の中の全ての可能性を検証する時間もリソースもない以上、出会って好きならそれでいい、というのが基本スタンスになるのです。
たまにキャリア相談をすると、「MECEじゃない」とかいってマウンティングしてくる人がいますが、MECEなキャリアの決断をするには人生がいくつあっても足りません笑
 
好きなフィールドや、大好きほどではなくとも興味を持ったフィールドがあったら、現場に行ってみたり、話を聞いてみたりしながら、業界観やその世界の未来、21世紀に与える歴史的意義など自由に妄想してみる。
そこで、「ああ、今面白そうだけど、ここからは下り坂だろう」とか「今はそんなに評価されていないけれど、確実にチャンスがありそうだ」とか「若手で活躍するのは難しい、出来上がったマーケットだ」とか、想像を膨らませていくと、自ずから可能性のある分野が見えて来きます。
 
今回のケニアの林業スタートアップという選択肢も、最初は仕事で森林投資ファンドを扱ったり、新興国投資のファンドマネージャーと会話をしたりしたところがきっかけで、そこからは面白いと思ったVCに飛び込みで話を聞きに行ったり、海外の投資カンファレンスに休暇を利用して参加したりして、徐々に見えてきたものです(休暇のたびに足を運んだ先で出会った面白い人や事業の話をするので会社の人からは、「熊平はいつ本当の休暇をとるんだ」と笑われていました)。
自分の足を使って、面白いものを探していくことは、キャリアの選択肢を広げる(=ソーシング)ことにもつながります。
決められないと思ううちは、歩き回って選択肢を広げることに専念するのも有効です。
その上で、ある程度の節目(大企業の若手だと数年で1000万くらい稼げるようになって、足腰立たなくなっちゃう人が多い)を先に決めておいて、そこでしっかり決断する、という方が、一気呵成に転職先を探して意思決定するよりも無理がないのかもしれません。
無理やり決める必要も、転職を絶対視する必要もないので、視野を社外に広げつつ、自分のタイミングで納得のいく決断(残るか転職するか)をすればいいのではないでしょうか。
 
進路のことは漠然と悩んでしまいがちですが、「要は決めの問題」という状況、つまり、決めること自体よりも早く決めて仮説を検証することの方が重要な場合も少なくないので、そこは以前のブログ記事も参考に、考えてみていただければと思います。
 
結局、キャリアの決断も、所詮は仮説検証のプロセスでしかありません。
「こういうキャリアにしたい!そのためにはこういう道がある!」という仮説をいかに実行しながらアップデートできるか、そのスピードと精度が、終身雇用も会社によるアイデンティティの担保もない不確実な現代で、自己実現への近道になるはずです。
 
長文になりましたが、新社会人のみなさんのご活躍をお祈り致します!
 

f:id:tombear1991:20171225100310j:plain

---
よろしければ、1クリックで応援お願いします! 


アフリカランキング

 

Komaza 23週目:

今週は、初めてのボード・ミーティング(取締役会)。
毎四半期、会議自体は開かれているが、普段は電話開催になるところ、今回は年に一度の現地開催ということで、ヨーロッパやナイロビから非常勤取締役の投資家がやってきた。
 
f:id:tombear1991:20180225123851j:plain
 
ファンドレイズのピッチや森林ファンドの担当者ということで、今回は自分もプレゼンに参加して、いつも電話越しだった投資家とも顔合わせをする。
経営戦略や投資家向けのメッセージについて話すのは、この半年間ずっとCEOだけだったので、数年前に今よりまだ企業として形になっていないタイミングで実際に投資実行を決断した彼らからのフィードバックは目から鱗の内容。
売り込むべき論点の優先順位付けや、ボトルネックとなる部分など、頭の中で煮詰まっていた絵姿の輪郭がはっきりしてくる。
田舎で孤独に仕事をしていると、こういう外的な刺激が本当に大切で、貴重だ。
 
また、毎週のように電話会議しているサンフランシスコ・ベースの経営メンバーもきてくれて、初めて直接面談できたのも、大きな収穫。
お互いに敬意とオーナーシップを持って、会社のファイナンス政策をドライブできるよう、いいミーティングができた。
 
自分含め分刻みで打ち合わせが入り、山のような突発事態も相まって、金曜日は久しぶりに気絶しそうになりながら仕事をしていた。
この2−3週で大きな山を越えることができれば、ひと段落する「はず」なので、とにかく生き抜くことを目標に明日からも頑張りたい。
 
余談:
いままで個別に相談を受けてきた内容をブログにするようになって、じわじわ反響もきているので、興味のある方はぜひ参考にしてください。
就活ノウハウの記事も今書いている部分で数万字になっており、近日公開予定です。

 

国際機関など公式の場での英語でのスピーチ・質疑応答 

tombear1991.hatenadiary.com

 

留学・進学・就職・転職の時に使えるフレームワーク集 

tombear1991.hatenadiary.com

 

日本企業での経験が海外のスタートアップで生きるのか?という問いへの答え

tombear1991.hatenadiary.com

よろしければ、1クリックで応援お願いします! 


アフリカランキング

 
 

Komaza 22週目:進路相談への3つのアプローチ

今週はスライドをひたすら書いていただけで、面白いことがないのでキャリアのネタを。
 
ここ数年、採用活動や後輩の就活相談などで大学生・社会人数年目くらいの人とスカイプをする機会が定期的にある。
「日本の中高→アメリカの大学→日本の総合商社→ケニアのスタートアップ」という日本も海外もそれなりに経験しているイメージを持たれているのか、「どんな会社に行けばいいのかわからない」とか、「そろそろ転職したいのだがどう思うか」とか「海外で起業したい」とか「アフリカに行きたい」とか色々だ。
 
人生のステージは違っても、この手の質問は大学時代に留学説明会をしていた頃から200件以上は受けているので、論点整理のやり方が固まってきたように感じている。
課題意識が明確かつ具体的でニッチな場合を除いて、僕の受け答えのパターンは3つしかない。
進路相談を受ける人だけではなく、進路について現在進行形で悩んでいる人にも、振り返りのネタとして使ってもらえればと思う。
 

①やりたいならやればいいじゃん?リスクないでしょ。

一度相談に乗って、半年後くらいたっても全く検討が進んでいない人は結構いる。
本質的な理由や明確なタイムライン設定(日本で投資家を見つけてからでないと意味がないことがわかった、とか、ここまでは今の職場でやるべきと決めたとか)がないのに、「なんかこのままじゃダメだな」とかズルズル言っている人には、相談を受けるたびに「行く行く詐欺」を感じて、この言葉が出てくる。
 
あとは、本人が明らかに挑戦して現場に入っていったほうが課題の理解も進みそうなのに、色々なリスクを気にしすぎている場合に、あえて背中を押す場合もある(特にもともとアントレプレナーっぽいのに、ビジネス経験や社会人生活を経て保守的になり始めている人、親・教師の心配に後ろ髪を引かれている人など)。
 
自分の人生の意思決定で、慎重になるのはわかるけれど、20代のキャリアはMBA含めすっ転んだ経験だってストーリーの作り方次第でダシにできるので、明らかな誤認識や自己矛盾がなければ、「本当にそれって致命的なリスクなの?〜すれば、許容できるんじゃないの?AかBかではなくて、両立もできるんじゃないの?」という会話につなげる。
 
一方、話しているうちに「やらないほうがいいかもしれない」ということだってある。
人には向き不向きがあるからだ。
 
無理して自分が耐えきれないリスクを負う必要はないと思うので、本当に行きたいと思っているのかはっきりさせることも重要(大企業若手あるあるで、漫然と起業や海外に憧れを抱いていて、実は身近な友人や最近読んだ本に影響されただけという人もいたりする。たぶん、行っても何もできないタイプ)。
 
 
カオスが得意な人と苦手な人、どっちなのかで背中を押すべきかどうかは判断している。
こけて学べるタイプか、それとも折れるタイプかは、優劣ではなくて性格的な向き不向きもある印象。
世の中には守られた環境でこそ、輝かしい仕事をする人がいることを忘れてはいけない。
この人は行った先でどんな風になるのかを想像しながら、最善と思われるアドバイスをする。

 

②目的なんだっけ?

新聞やベストセラービジネス書にでてくるマクロな話や、「世界で挑戦」というようなスローガンが何度も出てくると、目的の再定義に話を向けることになる。
行ってみてから、やってみてから、もっとはっきりする場合は①の「やってみればいいじゃん」となり、そもそもの動機が意味不明だったり他者の受け売りの場合は、そこを深堀る。
 
ここで注意しないといけないのは、受け売りがダメだということでも、目的がわからないなら行動すべきではないというわけでもないということだ。
ふわっとした理由付けに「なぜ」を突きつけて、真正面からゴリゴリ詰めても、結論に行き着くことは稀だからである。
例えば、学部留学の相談などは、将来の漠然とした方向や自分の性格程度しか糸口がなく、情緒的・抽象的な議論をこねくり回すことになりがち(分からないから模索するために大学がある!)。
 
僕のスキルが足りないこともあって、短時間で深堀りしきって目的から結論を出すのはまず不可能だ(志望動機のエッセー添削は別。出願エッセーはそれをごまかす技術がある笑)。
その人の人生に責任を負うくらいのつもりで、長期のメンタリングをするのでなければ、下手に詰めても相手は混乱したり、自信を失うだけになるというのを何度も見てきた。
よくわからないままで突っ込んで、そこで何かを見出して開花する人も同じくらい見てきた。
 
 
さて、このアプローチの最終目標は実は目的を具体化することではない。
曖昧模糊とした初期動機に、「なぜ」をぶつけると、その問題が自分にとってどの程度痛切か、重要かが見えて来るのだ(目的自体はすんなり明確化できるに越したことはないが、本人のキャリア・人生の模索ステージによるところが大きい)。
 
「まだモヤモヤしているけど、かなり本質的に重要な問題」であれば、大きな決断をしてリスクをとる意味があるし、「なんとなくやってみたいと思っていた」だけだったら、より短期・低リスクでお試しできる機会(休暇を使ったボランティア、短期留学など)から始めてみるのも悪くない。
不安を分解し、モヤモヤを明確化しようとする過程で、問題の優先順位付けをすることが、この「目的はなんだっけ?」アプローチの鍵になる。
 
特に新しいことに挑戦する場合、スティーブ・ジョブスが「点と点は振り返ることでしかつなげることができない」と言っているように、最初から目的がはっきりしていることなどほとんどないのかもしれない。
ただ、自分にとっての重要性を図り、それに応じてリスクを調整したり段階的に取ることは、わからないなりにも工夫の余地があるものだ。
相談を受ける側としては、相手が無理をしすぎない範囲で、一歩を踏み出す応援をしたいと思っている。
 

③次の次のステップはどうしたいの?

留学にせよ就職にせよ転職にせよ、ここを考えていない人は意外に多い。
「人生の目的」よりもはるかに具体的で、予想がつきやすいはずなのに。
 
5年後に自分がいる業界やシナリオというのは、20代の前半に一気に狭まっていく。
その枠を意識しながら(時に打ち破る戦略も含めて)考えると、「なぜ今なのか?」、「どこまで優先順位が高いのか?」、「どこまでの投資なら回収できるのか?」、「どこまでの失敗まで許容できるのか?」という、飛び込むにあたっての線引きがはっきりしてくる。
 
ビジネスの意思決定であれば、当たり前のことだが、同じ項目を人生の意思決定に生かしている人はあまりいないのかもしれない。
数年後という時間軸よりも、次の次の具体的な行き先(大学院や団体、企業、生活場所など)をイメージすると、目先の必要性がかなりはっきりイメージできる。
「わからない」という場合でも、わからないなりに人は仮説を持っているものなので、興味のある方面をブレストしていくつかのシナリオを描いて時系列に並べてみるだけでも、「Aに行ってみて合っていたら次はB、そうでなければC」というように意思決定のチャートもどきを作ることは難しくない。
 
また、高校生や大学生のように、ゴールがはっきりしていない分、試行錯誤する時間がたっぷりある場合は、最速で全ての仮説を検証するためのイベントを用意、スケジュールを組んでいく(もちろん、途中で修正は自由、全くわからない場合はメジャーなものをいくつか組み合わせて方向性をテスト、それが分かった時点で再度仮説を組む)。
相談者のバリューは、相手を思考の縛りから解放して、自由にオプションをつなぎ合わせる手伝いをすることだ。
 

正しい距離感をつかむ

進路相談は、受ける側が励ましてあげないと、相手のやる気を削いで人生をダメにしてしまう一方、甘いことばっかり言って結果に結びつかなければアドバイザーとしては失敗という厳しい一面もあるから難しい。
特に世代が離れれば、突っ込みたいところは10や20では収まらないこともしょっちゅうあるので、そこは優先順位付けをして最も核になる部分をグサリとつきつつ、次のステップのヒントを示してあげる必要がある。
ここの距離感というのがうまく掴めると、今の相手にあった、半歩先を照らすアドバイスができるのではないだろうか。
 

 

f:id:tombear1991:20180128191800j:plain

(今週末はヨット乗れなさそうなので写真だけ載せときます笑)

ブログランキング始めました!

よろしければ、1クリックで応援お願いします! 


アフリカランキング

 

パブリック・スピーキングで注意すべき3つのこと  (質疑応答編)

プレゼン能力は金融でもビジネスでも、絶対的に求められる能力なので、先週のフランクフルトでのプレゼンを振り返りながら、大きく3つのカテゴリーで注意点を確認したい。
読者の方にも多少なりとも参考になれば幸いだ。

 
 

その1:説得ではなく、相手と同じ夢をみるために

 
壇上であっても発表後でも、その場に自分がいることにはなんらかの目的があり、伝えたいメッセージがある。
それを明確に意識して短時間で相手に伝えることは、説得ではなくて、同じ夢(あるいはビジョン)を共有して、「そうありたいね」と共感を得るプロセスだ。

質疑応答のときも、伝えたいメッセージを繰り返す

個別の論点への質問が続くと、ついつい言い訳がましい回答になったりや狭い内容しか伝えられなくなったりする。
ときには、もともとの大きな論点に振り返ったコメントで、自分たちのアイデアが一体なんなのかを印象付ける。
今回の発表では個別論点を完全にカバーしきれた反面、最後にまとめの一言を入れて、「何故我々を選ぶことがこのプラットフォームに貢献するのか?」という大きなメッセージを伝えきれていなかった。
時間がなくなったときこそ、細部から離れて、全体感と意義づけについて語る。
最後の一文はもはや暗記しておいて、読み上げるくらいの気持ちでいた方が良い。
 
質問が多いときは、カテゴリーで区切って、まとめて答える
今回は30人くらいからの質問を受け付けて、まとめて答える形式。
業界トップクラスのプロ達が集まる場だっただけに、質問が鋭くて、つい個別に回答しようとしてしまった。
だが、考えてみると同時に質問を受けて一気に答えるというフォーマットの場合は、20の質問でさえも3−5のカテゴリーに分類して、その中で適宜答えていけば良いのだと後で気付いた。
他の発表者の中には、厄介な質問をそうやって逸らせている人もいたくらいだ。
限られた時間であれば、MECEに回答する必要はない。
最後に、”I am more than happy to address specific questions that were not answered in my presentation later”とか言っておけば、説明責任は果たされている。
 

「訊かれていること」と、「本当に訊かれていること」の違いを意識

前日にスカイプした相手から、「相手を説得しようとするよりも、相手と同じ夢をみれるようにするのがいいプレゼン」というアドバイスをもらった。
質疑応答では、政治家と同じで、聞かれたことに誠実に答えるよりも、伝えたいメッセージを伝えきることこそが重要になってくる。
というのも、質問に答えれば答えるほど、ほとんどの場合また新しい疑問が次々に出てくるからだ。
そうなるといくら質問に答えても、100%の納得感を与えるのは、本格的なDDでもしない限り不可能になる。
それならが、最終的に「少なくともビジョンには賛成」の形に持っていくことが時間が限られるアイデアコンテストのような場では優先されるべきだ。
繰り返しになるが、個別論点は後からいくらでも個別に説明できる。
 
また、細かな点を個別に聞いてくる人というのは、大局的な論点を思いつかないから重箱の隅をつついているか、あるいはモデルそのものの有効性に疑いを持っているかどちらかという場合も少なくない。
いずれの場合も、問われている部分を答えることよりも、そこから数歩引き下がったマクロな絵を見せる必要がある。
「結局、どいういう話で、どういう仕組みで、なんで面白くて、何がリスクなの?」というのを30秒くらいで説明する抽象度の高いロジックを用意して、その延長上に個別の論点への回答を散りばめられると一番良いのではないか。
 

ロジックのショートカットを活用する

時間がない中で全てのリスクや全ての可能性を丁寧に説明するには、相手の理解を得るための最低限のエビデンスを示す必要がある。
本来なら個別に論点を潰していく場合でも、例えばリスクについての質問なら、主だったトピックを羅列した後、「最終的にはそうした部分もDDしてガバナンスに厳しいXXさんも投資しています」と伝えれば、「致命的なリスクはなさそう」というメッセージは伝わる。
可能性についても、ベンチマークとなる市場やプレーヤーをあげて、アナロジーを示すことが有効だ。
何事も丁寧に積み上げ式に説明しようとすると、逆に足をすくわれることもあるので注意する。

 

その2:事前準備から当日にかけてのテクニックを磨く

準備段階は入念なイメトレ

想定問答集の練習と録音しながらのアドリブトーク練習。
基本的な事業の仕組みを数字で説明できるようにする。
基礎統計や事業に関する数字は、日々目にする形で頭に入れておいて、時々色々な数字を組み合わせてフェルミ推定する練習をする。
イメージは戦略コンサルの面接対策。
 

開始30分前に会場入りする

早めに来る人はそれなりにいるので、自己紹介したり事業の話をしながら、調子を整えていく。
舞台に立ったときが最初の一言にならず、かつ開始前のカジュアルな会話から、相手が興味を持つであろう話題や疑問点を事前に理解できると、ぐっと話すときの距離が縮まる。
少し早く行って、一人でも会場に自分の味方を増やしておくべき。
 

出だしのマナーを守る

他のプレゼンターにできていて、自分ができていなかった最たるものが、出だしの口上。

「自己紹介→ホストへのお礼("we are honored to be here today." "I would like to thank ___ for hosting us)→質問へのお礼("I appreciate valuable questions we had and will do my best to answer them all")」という決まり切ったフォーマットを何も考えずに話せるように徹底したい。

打ち解けたプレゼンであれば、小話から入ってアイスブレークすることも効果的だと思う一方、国際機関のカンファレンスでの発表などは、半ば学会みたいなものだと思うので、こうしたマナーを自然にできるようにしていきたい。

 

質問者の名前を呼ぶ

今回一番プレゼンがうまいと話題だったアメリカ人のアントレプレナーは、最初から最後まで流れるように雄弁にスピーチし、質疑応答というよりもTEDをみているようだった。
彼女がやっていて感激したのが、10人以上いた質問者の名前と顔を一致させて、「そうです、XXさんがおっしゃっていた質問のように」と相手の目を見て答えていたこと。
自分の場合は、答えるだけで精一杯だったが、彼女の場合は事前に用意された答えが、すでにほぼ全ての質問に答える形で構成されていた。
そこで彼女がやっていたのは、漏れた部分を補足しながら、質問者一人ひとりの賛同を得ていくことだけ。
やっていることのレベルが全く違うと実感した。
 

 

その3:話すときの癖を直す

自分の発表の録音を聴いたところ、気づいたのは次の点。
特に後半のふたつは日常会話でもやっている可能性大なので、普段の話し方もミーティングを録音して変えていこうと思う。
 

自己紹介が早すぎる

ポディウムに立って最初の1分間は緊張感と喉が温まっていないのとで、一番やりにくい部分。
「ああ、緊張しているな」とわかってしまう早口だった。
一方、話していることは自己紹介なので一番簡単な内容。
意識的にゆっくり話すようにする。
 

Placeholders

日本語でいう「えーっと」みたいなつなぎ言葉。
話す本人は無意識でも聴いている方は結構気になる。
自分の場合は、“ah”と“so”のふたつが目立つ。
一文が長いときや、間が持たないときに無意識に挿入してしまっている。
文章と文章の間、節と節の間でしっかりブレスをとれるように意識する。
 

Upspeak

文章の後半が上ずって、疑問文のようになる現象。
特に後ろが節やAndなどになっていて一文が長いとき、考えながら話しているときに出てきている。
ここで語尾を落ち着けてしっかり間を取るだけで、説得力が全然違ってくる。
現に、今回のプレゼンでも一番反応が良かったのは間合いを取って、しっかり一文を着地できたところだったと録音を聴き返して気付いた。
 

ブログランキング始めました!

よろしければ、1クリックで応援お願いします! 


アフリカランキング

 

Komaza 21週目:

今週の振り返り。
月曜日から火曜日までは、キリキリ舞いで仕事をする。
なんでこんなに忙しいのかわからないくらい、慌ただしい。
 
いくつか仕込んでいた案件が同時に動いてしまい作業をこなすだけで、あっというまに時間が過ぎていた。
なおかつ水曜日からはインドの有力VC Aavishkaarが主催するアフリカ投資カンファレンスのSankalp Africa Summit@ナイロビにCEOと出張。
ファンドとの面談もそこそこに、CEOとビジネスのアイデアや今後のビジョンについて、語り合う。
普段のアジェンダに縛られた議論ではない、思いのままの会話は新鮮で、学ぶことも多い。
 
カンファレンスの成果は上々で、ファンドマネージャーとの会話も進み、CEOはパネルにも出ることができたので、アレンジとしてはひとまず成功というべき。
前回のインドでのカンファレンスとはまた違った熱気のある会場で、インパクト寄りの投資家サイドと、ビジネスゴリゴリの起業家サイドの業界観の違いが鮮明に出ていた。
欧米を中心とするインパクト投資家のお公家様っぽい議論と、目の前のビジネスを掴んで、それがたまたまBOPやコミュニティの利益になれば良いと考えるローカルの起業家との世界観の乖離は、この数年で決定的になるんだと直感する。
インド以上に、アフリカのアグレッシブな議論は刺激的だった。
他にも、面白いビジネスやアイデアにたくさん出会ったので、これはまた後日記事にしたいと思う。
 
あと、思いつきでつぶやいたツイートに反響があったので、来週あたり発表できるように書いています。
正直言って、日本の就活マーケットはぶっ壊れているので、そういう出来の悪い制度をハックするコツに焦点をあてるつもりです。
出来の悪い制度に、出来のいい人々が苦しむことが少しでも減ればと思います。

 

よろしければ、1クリックで応援お願いします! 


アフリカランキング