気候変動スタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀をしていましたが、気候変動スタートアップを創業するためスタンフォードにいます。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

マサイマラに行ってきた(写真付き)

ケニアといえば、マサイ・マラ国立公園。

せっかくケニアに住んでいるので、クリスマス前後の4連休に、マサイ・マラ国立公園に旅行してきた。
もともと大自然が好きとか、動物を見ているだけで幸せ、といったタイプでは全くなかったのだけれど、今までの旅行の中でナンバーワンといってもいいくらいの旅だったので、写真も一緒にシェアしたい。
 
 (公園内の移動はトヨタのランドクルーザーを改造して天井から頭を出せるようになっている専用車)

1日目:ナイロビ→ナロック→セキナネ

初日は、朝6時前に起きてナイロビを出発。
クリスマス休暇の初日ということで、規制ラッシュで道路が激混みしてしまうのではという不安もあったが、思いの外市内の交通は軽く数時間で経由地のナロックへ到着(ただし、交通費は休暇ピーク時期ということで通常の倍程度取られた)。
ナロックでニャマチョマ(ケニアの燻製風焼肉)のランチを済ませ、初日の宿があるセキナネへ向かう。
 

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(ナイロビから車に揺られること数時間、雄大な景色の連続に寝るどころではない)
 
宿泊地は、マサイマラ国立公園のゲートがある街、セキナネから4キロほどの場所にあるMara Explororesというロッジ。
マサイマラ付近には一泊数万円の高級ロッジが多く存在するのだが、今回は貧乏旅行ということで、一泊50ドルほどでテントに宿泊した。
テント内にはベッドもあり、寝心地はバッチリ、しかも食事も美味しくて初日としては大満足だった。
ちょっと早く着いて時間を持て余していたら、オーナーが試作していた豚肉の燻製を分けてくれた。
肉の塊を頬張りながら、何もない荒野で飲むビールのおいしさといったらない。
 

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(常設テントの中には、簡易ベッドがついていて、広さも寝心地も申し分ない)
 

2日目:ロッジ→国立公園でゲーム・ドライブ→公園内でキャンプ

まだ薄暗い5時台に起床して、ゲーム・ドライブ(公園内をドライバーとガイド付きでドライブする国立公園定番のアクティビティー)に出発。
一応、近場の街でその場でガイドを手配することもできると聞いていたものの、ガイド選びで失敗したり、クリスマスで車が捕まらないリスクを避けるため今回は事前予約した。
 
マサイマラでは「ビッグ5」と呼ばれる動物(ライオン、ヒョウ、サイ、アフリカゾウ、バッファロー)がいて、何日も宿泊しても全コンプリートが難しいとさえ言われている。
が、日頃の行いが良かったのか、なんと初日の半日で全てコンプリート。
バッファローはあまりに短気で、群れに囲まれて睨まれるのにビビるあまり写真を撮り忘れてしまった。。。
 
 
ライオン

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チーター

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キリン

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ダチョウ

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ヒョウ(わかりづらいけど、木の上で寝てる)f:id:tombear1991:20171224184203j:plain

 

アフリカゾウ

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サイ

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シマウマ

他にもまだまだ(名前忘れましたごめんなさい)

 

動物だけじゃなくて、風景も感動。

 
この日のハイライトは動物だけではなかった。
マサイマラ国立公園は、川を隔ててタンザニアのセレンゲティ国立公園とつながっているのだが、この国境付近の川にテントを張って野営するのが、この日の宿泊。
最初は、ネタとして面白いと思って予約したのだけれど、振り返って今回の旅の一大ハイライトになった。

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(テントを張った川の近く、翌朝起きたらライオンの足跡がたくさんあって、護衛付きとはいえ肝を冷やした)
 

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(タンザニア国境の夕暮れ)

 
周りは野生動物が暮らす大自然。
ライオンやバッファロー、ゾウなど危険な動物が出てこないとも限らないので、公園を警備するレンジャー二人がライフルとサーチライトを持って徹夜で警護する中、焚き火をしながら食事をとり、夜空を眺め、一夜を過ごす。
 
日中ずっと曇っていたので、マサイマラ名物満天の星空は諦めかけていたのだけど、10時を過ぎた頃から雲がさっとなくなって、無事夜空を満喫できた。
 

 


 

3日目:公園内でゲーム・ドライブ→セキナネ泊

日の出を見るために早朝に起床。
ちょっと面倒くさそうなドライバーを起こして、日の出を見れそうな高台に移動したが、雲がかぶってしまってイマイチな感じだった。
この日は、前日に幸運を使い果たしてしまったかのように静かな1日で、動物になかなか会えない(ガイド曰く、数日おきに動物がアクティブな日と藪や林に隠れて出てこない日があるらしい)。
 
ちょうどクリスマスということもあり、ガイドもドライバーも休憩時間には携帯で家族に連絡したり、なんともオフな感じになってしまう。
一緒に回っている自分の方も、なんとなく今日はあまり運がなさそうだと感づいてしまって、途中から動物探しというよりはマサイマラ探検にモードを転換。
 

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(都会っ子ガイド、マサイマラのど真ん中でFacebookに夢中の図)
  
そんなこんなで夕暮れ前にはセキナネのゲートに戻ったところで、最後の冒険が始まる。
というのも、到着初日の思いつきで、ナイロビに帰る前夜に泊まる予定だった先ほどのロッジをキャンセルし、ゲートのある地元の街セキナネでホテルを見つける(予約してない)ことにしていたのだ。
正直、危なさそうだったら元のロッジに泊まれば良いと思っていたのだが、たまたまガイドをしてくれたマサイ族のMike(奥さんプラス彼女7人)が地元のホテルを知っていて、そこに泊まることになった。
ちゃんと個室もベットもあり、シャワーははないけれどギリギリなんとかなりそうなので、宿泊を即決。
値段は一部屋15ドルほどだったが、特に値切らずに泊まることにした。
  
夕食は近くの大衆食堂で。チャパティとキャベツ、スクマというシンプルなものながら、味付けが良くて大満足。
あまーいチャイが疲れた体に染み渡る。
 
今日こそは夕日を眺めようと街外れに向かう。 
いよいよ、写真を撮ろう!と意気込んだタイミングで見慣れない外国人に大興奮の子どもたち登場。
取り囲まれて、気づけばサッカーしている。
 

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(屈託のない子どもたちの笑顔にせがまれるまま走り続けて、クタクタになった)
 
日没を完全に見逃し、元気な子どもたちにもみくちゃにされて息も絶え絶えで、近くの酒場へ。
地元のおっさんたちがくつろぎながら酒を飲む、日本でいうところの中小都市のスナック(中で写真はトラブルが怖かったので、外観だけ)
 

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帰りは真っ暗の夜道をさまよった挙句、諦めて最初のレストランの店員さんに道を案内してもらって無事帰投。
何度かヒヤリとするタイミングもあったが、無事に夜を過ごす。
 

(街の中はこんな感じ)

 

4日目:セキナネ→ナロック→ナイロビ

この日は夜明けとともに起きて、ナイロビへ帰る。
クリスマス休暇の中日ということで、無事に移動手段が確保できるか心配していたが、ほぼ時間通りに出発できた。
(帰り道、早朝から観光用のトラックが列をなしていた)
 
途中経由地のナロックでは、「マサイのマント」を求めて街をさまよい、ロッジでの販売価格の4分の1くらいで無事購入できた。
ビジネスが動かないクリスマス休暇だけに、ナイロビ市内の交通もガラガラで、昼下がりにナイロビに戻ることができた。

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(ホテルで2000シリングくらいしたマントの市場価格は500シリングだった)
 
 (最後までお読みいただき、ありがとうございました!) 

 

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Komaza 15週目:スタートアップ参謀の宿命

今週はケニアに戻って仕事をする第1週目。
 
書き出しから話題がそれるのだけれど、予想外に寒い。
ケニアは赤道直下とはいえ一応南半球(南緯3度)なので、今は夏。
特に海岸部にあるキリフィは例年35度近くまで気温が上がる真夏日が続くはずなのに、今週はずっと25度付近。
異常気象なのは間違いないようで、街の人も真夏にジャケットを羽織ってなんだか落ち着かない感じ。
覚悟してケニアに戻ったのに拍子抜けしてしまった。
 
そんな余談はさておき、今はもっぱら次回ファンドレイズに向けた資料作成に追われている。
大企業にいた時はデータは必ず社内か社外(グーグルサーチやレポート購入、プロフェッショナル・サービス)で調達できたのだが、スタートアップのオペレーションは全てが自分で掘り起こさないとでてこない。
全部で100枚近い事業スライドを一人で延々と書き続けるのは心が折れそうになるんだけれど、取り急ぎ全体の骨子を作って、書けるものからとにかく仕上げながら、関係者にヒアリングをしてデータを集める。
 
データや資料を集めにあっちこっちに顔を出していると当然他の話題にもなるわけで、CEOの直属で働いている唯一のメンバーということで、「あの問題はどうなってる」とか、「これでは会社はダメになる」とか、「あいつはダメなマネージャーだ」とか色々な情報を耳にする。
 
残念ながら限られたリソースしかないので、全部を深堀することも、全てにすぐに対応策を打つこともできないのだけれど、一応でてきたネタは全て手元にリストとして残しておくことにした。
それぞれの情報を吟味して、構造的に最も鍵となる部分を特定し、打ち手を実行するという一連のプロセスに耐えるだけのコメントは今の時点では一つもないのだけれど、会社の経営状況を判断したり、後々大きなプロジェクトのサブ・イシューくらいにできれば、十分挽回できるのではないかと思う。
 
正直頭が痛くなる話ばかりなんだけれど、そこで会社やマネジメントに完璧を求めていてはベンチャーで仕事はできないので、最も重要でクリティカルなところにまずは注力するように心に決める。
大企業では、あと30年勤めあげないと「自分にはどうしようもない」ということばかりだったが、スタートアップであれば気づいた人がシステムを変えたり、新しいアイデアを実行する余地は十分残されている。
数多ある課題を粘り強く整理して、一つ一つ実行していきたい。
 
現場と経営の板挟みにあいながら、戦略を考え続けるこの役割に早く慣れていきたい一心で、またマービン・バウアーを読む。
 
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パソコン仕事で鬱屈していたので、気分転換に丸太の運び出しを手伝ってみた。大人3人がかりで抱えていたのだけれど、想像の数倍は重くて、結局自分が入った回では3人ではなくてほぼ4人で抱えることになってしまった。木材のハンドリングに適性がないことがはっきりしたので、頭脳労働を頑張ることにします笑
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Komaza 14週目:今年の仕事始め

新年が明けて2週間目、そろそろ仕事がモードに切り替わってきた方も多い頃でしょうか。
このお正月は、直前にラッキーなことに格安チケットが手に入り、つかの間の一時帰国をしてきました。
本当ならお世話になっている方々全員にきちんと挨拶回りをしたいところでしたが、会社の仕事は3元日から始まってしまっており、仕上げないといけない資料も多々あったので、お墓参りと初詣以外は実質的にはほぼ仕事でした。
もう気付いている人もいるかもしれませんが、当初6ヶ月を見込んでいたフェローシップが12月で完結し、1月からは通常の雇用に切り替わったので、ブログのタグも”Komaza Fellowhip”から”Komaza”に変わっています。
 
去年からほぼ毎週続いているこのブログも、未来の自分に向けた記録として、書き続けていきたいと思います。
今年もどうぞ宜しくお願い致します。
 

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写真はケニアに戻る経由地のドーハで見た日の出。
地平線の先に広がる砂漠に赤々とした太陽が昇る瞬間は、壮観でした。
 
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2018年「準備の年」から「証明の年」へ

「準備の年」

2017年は、「準備の1年」になりました。
三菱商事ではアセットマネジメント全般という広い世界から、バイアウトの部署に移り、退職まで短時間ながらファンドの投資委員会にも出席しながらファンドだけではない企業の運営について学べたことは、今実際に企業のなかで仕事する上で大きな糧になっています。
総合商社で事業投資先の管理といった地味な仕事から、花形の事業開発に至るまで、一通り立ち会う中で、ビジネスパーソンとしての判断基準のベースを作ることができました。
 
退職後、10月からケニアでCEO補佐として仕事を始め、12月には本来なら半年あった試用期間を切り上げて、新年度からプロジェクト・マネージャーとしてチームを作りながらファンドレイズを軸に会社の成長戦略立案にも関わっていきます。
わからないことだらけ、大事な仕事が山積するなかで苦しい優先順位付けを迫られ、国際機関との細密な文書のやり取りから新しい施策のコンセプト立案まで毎日が楽しくて仕方がありません。
新しい職場・ポジションも含め、絶望のフェーズを経て、ようやく挑戦するための舞台が整ったのが、2017年でした。
 
 

「証明の年」

2018年は、「証明の1年」にしようと思います。
幼い時から情熱を持ってきた事業経営、大学で出会ったインパクト投資、商社で目の当たりにした事業投資の世界、人生をかけて準備してきたすべてのインスピレーションを、「企業の成長とインパクト最大化」というゴールに向けてみようと思います。
自由に全力で挑戦する機会なんて、人生に何度かしかないわけですが、今回はそうかもしれない、と直感しています(前回はブラウンに入学した時でしょうか)。
自分は臆病な性格なので対外的には希釈した、受け入れられやすいアイデアを出すことが多かったのですが、この一年は自分の中で煮えたぎるものを、生のままぶつけていこうと思います。
エッジを削ぎ落とす前の、生身の自分が世界とどう触れ合い、どう反応されるのか、それを肌身で学ぶことが自分の境界線を見定めるために必要だからです。
自分の仮説、そしてそれを実現する実力を、失敗もしながら証明していくのがこの1年です。
"If you don't fail, you are not pushing it far enough."(「失敗がないということは、挑戦していないということだ」)というIra Magazinerの言葉に日々立ち返ろうと思います。
 

中長期の挑戦について

学生時代から、「どんな仕事をしたいのか?」「将来の野望は何か?」と聞かれ続けてきたのですが、既存のキャリアトラックではどこへ行っても自分の興味関心を実現できないということを今更ながら実感しています。
情念溢れるアントレプレナーの世界観と、プロフェッショナリズムの最高峰にあるファイナンスやインパクトの切り口を自分なりに重ねた先にあるのは、既存のビジネスセクターでも、ソーシャルセクターでも、パブリックセクターでもない気がしています。
結局は、「自分の業界」を作ることでしか、自分の世界観を世に問うことができないのではないか?そういう人物になるために、どうしたらいいのか?
そんな問いが、頭をよぎります。
 
その方向性を定める第一歩が、今回のケニアのソーシャル・スタートアップでの挑戦です。
CEOの直下で仕事をする中で、自分はファイナンス担当者なのか、戦略担当者なのか、はたまた事業開発者なのか、アイデンティティを巡る問答を続けていこうと思います。
筋道がイメージできるまで徹底的に考え抜くのが自分のスタイルですが、最終的には「なるようになる」部分や、「とにかく行動しながら、なんとかする」という考え方もあるので、今まで以上に体を張っていこうと思います。
 

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Komaza Fellowship 10週目:世界最大級のインパクト投資カンファレンスSankalp Forumに行ってきた

12月7-8日にインドのムンバイで開催されたインパクト投資カンファレンスSankalp Global Summit(サンカルプ・グローバル・サミット)に参加してきた。

少し時間が経ってしまったのだけれど、世界有数の会議であり、投資する側、される側の両方の人たちが一堂に会する場で、学ぶことが多かったので記録として残しておきたい。 

Sankalpとは?

インパクト投資カンファレンスというと、米国西海岸のSOCAPやシンガポールのAsia Ventrure Philantrophy Network(AVPN)が有名だが、インパクト投資やソーシャルビジネスのメッカ、インドで行われるSankalpも世界中のインパクト投資家が集まる一大イベントだ。

先日発表されたマッキンゼーの調査によると、インド国内では2010年から2016年の7年間に52億ドルが社会的事業への投資に向けられた。

驚くべきはそのリターンで、トップティアのファンドは平均して34%のグロス・リターンを上げているという(全体の中央値は10%)。

新興国として数億人単位のBOP人口があり、優秀な若い才能を抱え、数少ないIPO市場を擁しているインドは、インパクト投資がいち早く地場で根付いた地域でもあり、そこから生まれたVCのアービシュカール(Aavishkaar)が開催するSankalpには、世界のインパクト投資家が注目する。

 

 

ということで、今回印象的だった場面・発言をハイライトしていきたい。

 

「そこらの社会起業家よりもイーロン・マスクのほうがはるかに優れた社会的インパクトをもたらしている」

彼は国際機関やNGOたちがこれまでどんなに努力しても実現できなかったスピードと規模で、一挙に再生エネルギー(SolarCity)や電気自動車(Tesla)を普及させている。

ファンタジーのような理想を描いて、それを徹底したリスク・テイクと実行で実現させる人物こそが、本質的な意味での社会的起業家になってくる。

もはや、ソーシャルセクターとプライベートセクターが二分された時代は終わりつつある。

 

 

「インパクトばかり考えているインパクト投資家は、投資に失敗する」

優れたインパクト投資先は、ビジネスモデル自体にインパクトが組み込まれているので、殊更にインパクトに注力したプロジェクトを立ち上げる必要自体がない。

企業がビジネスとしての成果に集中しても、対象人口がBOPや社会的弱者であるなどして自動的に社会的インパクトにつながるような事業こそが、優れたソーシャル・ビジネスだ。

 

ファンド・マネージャーの立場から見れば、「インパクト投資家」を謳っていても、やっていることは基本的には普通のベンチャー投資と同じであり、しかもファンドレイズ環境は普通のベンチャー投資を自称したほうがはるかにいい。

 

「アセットクラスとしてインパクト投資を捉えるのは間違っている」

ゴールドマンサックスなどの投資銀行やブラックロックのようなアセットマネジメント会社、TPGのようなPEファンドに至るまで、世界のトップ投資家・金融プレーヤーが数百億から数千億単位でインパクト投資のポートフォリオを構築している。
そうした中で、インパクト投資も新しいアセットクラス(投資対象となる資産のジャンル)として認知されているのだが、そうした「十把一絡げ」なくくり方でインパクト投資を始めても、結局中途半端に終わってしまうとの声が会場で度々聞かれた。
そもそも「社会的インパクトを目的に投資する」というのは、「経済的リターン(=投資収益)を目的にする」いわゆる従来の「投資」とほとんど変わらない漠然としたテーマだ。
 
参考まで、実際に自分・自社がインパクト投資家になるときに考えないといけないのは、ざっくりだけど次の通り。
  • なんのために?ー社会的インパクトだけでいいのか、経済的リターンも追求するのか?社会的インパクトをどう定義するのか?
  • どこに?ーホームグラウンドの地域なのか、国外なのか?途上国なのか、先進国なのか?
  • 何に?ーそもそも企業なのか、NPOなのか、アントレプレナー個人なのか、マイクロファイナンス機関なのか、プロジェクト(不動産、インフラ、プログラムなど)なのか?
  • どうやって?(どんなリスクをとるのか?)ーエクイティ、メザニン、デット、債務保証、グラント(寄付)などなど、なんのリスクに対してどんな形で投資するのか?
  • どこまで関与するのか?ー経営権をとるのか、お金だけか、資金以外の支援をするのか?
  • パートナーはいるのか?ー単体でできるキャパシティがあるのか?有力なパートナーは必要か?DDから投資実行、フォローアップ、インパクト評価までどんな建て付けがベストか?
これだけ変数があるからこそ、結局は個別の案件の経験が、業界での地位を決める事になるのだろうと思う。
熱狂的信者(Enthusiast)ではなくて、実務家Practitioner/Professionalとしてこの業界で仕事をする意義がある。
 

基調講演をされた渋澤さんと。日本のソーシャル・ファイナンス業界の方々も結構参加しており、「おー、久しぶり」という出会いが何度もあった。

 

「インパクト投資家は”Blended Finance”なんてカッコ良くいってるけれど、そんなJargon(陳腐な流行語)じゃなくて、起業家にアクセスしやすいシンプルな投資プラットフォームを早く作って欲しい」

これはフォーラムに参加していた起業家が、パネリストをしていた投資家陣に向けた質問。

ひとえに「インパクト投資家」といっても、商業銀行や開発銀行、ファミリーオフィス(富裕層の私設投資ファンド)、ベンチャーキャピタル、エネルギー投資会社など様々なプレーヤーが混在する。

リスク選好も投資機関も、規模も多種多様な彼らの流行語になっているのが”Blended Capital”(様々なタイプの資金を混成したファイナンス手法)という言葉だ。

一見すると、ファイナンス手法のイノベーションのようなポジティブな響きだが、起業家からすれば単に資金調達を投資家の都合で複雑化されているように見える。

個人的には、今後もこの傾向は続き、投資家の意向に合わせて適切なファイナンスを受けられるような設計をする会社内ファイナンス担当者の存在がどんどん重要になると予想している。

今は、投資家も投資を受ける企業側も、お互いが業界スタンダードを模索しているタイミングだと思う。

 

 

「どうだ、起業家サイドで仕事してると、投資家目線のマクロな質問をしているだけじゃ、世の中動かないことがよくわかるだろ」

Sankalpを主催するファンド・マネージャーVineet Raiから直接言われた言葉。

彼と初めて出会ったのは、社会人1年目の秋にARUNさんが企画・開催したアービシュカールの紹介イベント。

仕事終わりに飛び込んで、散々質問攻めにした挙句、帰りのエレベータにも乗り込んで、インパクト投資をどうすればキャリアにできるのか詰め寄った(そんなことばかりしてるので、こんな耳の痛い小言を言われる笑)。

その後も、来日の際の立ち話やメールで経過報告はしていて、今回ケニア行きの直前にも、優れた投資家に求められる知識と経験と実行力を鍛えるために、事業に入っていきたいという話をしたばかりだった。

実力を遺憾なく発揮できる立場にある今、大企業にいた頃のような言い訳はもうできない。

今年はプレーヤーになりたい一心で準備してきたのがようやく結実した年だったので、

 

Vineet Rai氏と。

 

例によって遠慮ゼロで質問しまくった結果、オーガナイザーからゲスト・発表者用のギフトを頂いてしまった笑

 

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