気候変動スタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀をしていましたが、気候変動スタートアップを創業するためスタンフォードにいます。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

Komaza 57週目:大一番を生き抜くために考えたこと

Komazaに来てから一番の山場といっても過言ではない数週間だった。
ファンドレイズのドキュメン、大手投資家のDD対応、戦略・経済性のシミュレーションという重いテーマ揃いで、合わせてグラントの仕事もこなさないといけない。それに加えて、突発的な出来事も複数急対応が必要になって、文字通りてんやわんや。
忙しさで言えば、チームが発足する直前の5・6月に今チーム3人体制の原型となる仕事を全部一人でこなしていた時よりも、マネジメントと意思決定の比率が高くまた一段違ったハードさだった。
 
一番の大仕事は会社や業界の未来にも大きなインパクトがある内容で、全力の上に全力を重ねる必要があった。
ここはまさにチームの面目躍如で、メンバーがそれぞれの担当領域でギリギリまで粘ったからこそ、それなりに満足のいく結果を出すことができた。
とは言え、息の長いプロジェクトなので、これからもプロとして貫徹したい。
 
最後の週は、腰痛をだましだまし、一日置きにマッサージに通いながらなんとかやりきった。
限界ギリギリだったので、好むと好まざるに関係なく、自分の人間としての本性も顔を出す。
不安や恐怖もあれば、野心もある。
こんな世界の片隅で、プロとして一番大切な時期を賭けて、何をしているのかと。自分は人生を棒に振ってしまうのではないかと、思いがけないことも頭に浮かんで来た。
 
わき目を振りたくなる度に、自分が今事業とコミュニティのために果たすべき役割に立ち返って、仕事をした。
 
起業家に寄り添って事業を作ること、そのために必要な「思考」をファイナンスという言葉を通じて提供すること、ファイナンスに関する全てが一流企業と遜色ない形で運用されること、そうした結果としてKomazaの事業が成功し、既存・これから一緒に林業をする零細農家の生活に資すること。
 
そこに向けた過程で、プロとして世界で見てユニークな経験を積むことが今後の仕事の資産になる。
小手先のキャリア戦略はプロとして軽視できるものではないけれど、それだけを職業人としての判断基準にしたら、ただの優秀なファイナンス人材というコモディティになってしまう。
10年・20年という目で自分を差別化することができるのは、短期的なレジュメよりもその体験で得られる経営・投資への視点だと思う。
スマートな意思決定と泥臭い経験への拘りのバランスは繊細で、考えずにがむしゃらではキャリアを無駄にしてしまうし、事業への細やかな視線がなければ本質を掴むことなくせっかくの経験を無駄にしてしまう。
 
考えれば考えるほど、自分を主語にすることが迷いの源になっていた。
振り返ってみると思いがけずして、何もない新卒一年目のような、純朴な全力投球とは違う仕事のやり方になった気がする。
うまく言葉にできないけれど、事業とそこに関わる人々、ひいては社会を主語に自分の役割を定義するのが一番すっきりする。
使命を意識して仕事するということだろうか。
 
余談:
そんなこんなで仕事漬けをやっていると効率も落ちてくる。
やらなきゃいけない時は、無理する必要があっても、普段は何かの時に無理が効くような余力を残す必要があるから、自分の中にブレーキを持っておきたい。
 
先月の出張からずっと張り詰めていた気持ちを和らげるべく、最近は料理に熱中している。
丸鶏を仕入れて、スープにし、アクを取りながら一晩過ごす。野菜の皮を剥いたり、鳥の下処理をしたり、単純な作業をしていると気持ちが安らぐ。
それでいて、努力の成果はうまい飯になってかえってくるから、極めて割に合う。
最終的な野望はラーメンを、スープ・チャーシュー・麺含め完全に自作することなので、道のりはまだまだ遠い(違)。
 

Komaza 56週目:最後に大切なもの

今週末は来週の大仕事に向けた最終調整。
連日の仕事でヘロヘロになりながら、最後の一押しを頑張る時。
数年ぶりに自分の限界スレスレを飛んでいる感じがある。
 
これまでも何度かこういう「ここぞ!」という瞬間があったけれど、自分にエールを送るつもりでもう一回振り返りたい。
 
  • 残体力とエネルギー:当日のエネルギーはきちんと残しながら、残体力ギリギリまで粘る。

 

  • ボトムラインで考える:これまでやってきたことをまずは棚卸し、100%メッセージを伝え切れているか振り返る。その上で、伝えるメッセージをはっきりさせ、それに向けてアウトプットを研ぎ澄ます。

 

  • リハーサル、リハーサル、リハーサル:自分のパートは最低5回、可能なら10回は通し練習。それ以外にもドラフトを用意したり、3分サマリーをしたり、あっちこっちでつぶやきながら、体に染み込ませていく。瑣末なディテールは飛ばしたり、忘れたりしてもいい、ただ本当に大切な殺し文句は、完全に暗唱しておく。

 

  • 全部やる:できることは全てやる。過剰な準備を厭わない。めんどくさいに負けない。ダラダラしたせいで一生後悔するのは、人生のあり方として間違っている。やると期待されていることをやるのは、アナリストの仕事。やるべきこと、やることで成功に結びつきうることを自分で考えて最後までInvestするのが、プロの仕事。

 

  • 信じる、信じるために準備する:準備というと、発表資料をきれいにするだとか、かっこいいメッセージをつくるとか、そういうことを考えがち。でも、最後は自分がくっきりとピッチする未来を描くことができているかが、伝える側のハラ落ち度、説得力に直結する。そして、もし一旦その場に立つと決まったなら、その場で信じきれるだけの準備を自力でする。最後の夜に眠れなくなっても、あらゆる可能性を考え、試算し、自分で納得できる一線を決める。仲間を信じ、事業を信じるからこそ、あらゆる思考を働かせる義務がある。

 

  • 全部忘れる:説明の場に立ったら、なるようにしかならない。あとは相手の呼吸を見ることに集中し、自分の努力を信じて腹の底から出てくるメッセージに神経を研ぎ澄ます。不安があっても、この時だけは忘れる。一瞬のためらいが、全てをぶち壊すことを肝に銘じて堂々と踏み込んでいく。

 

残り1日、職業人として悔いのない仕事をしたい。

Komaza 55週目:ケニアに来て1年で身に付きつつあること

前回の記事に続いて振り返り。今回は、まだ途上だけど身につけつつあること。
 
前回の投稿では、仕事のカテゴリ的なものが中心だったので、今回は精神的な面について。
不安定な状況、確率的にしか成功が見込めない中で、バランスよく複数の案件に全力投球する力を鍛えられた気がする。
基本的に仕事はできることを最後までやりぬく主義だけれど、同時にもう一人の自分はまるでポートフォリオマネージャーのように淡々とそれぞれの案件の重要度とインパクト、リスクを分析して、追加投資するのか、損切りするのか、現状維持かを決めている。
新入社員の時の根性だのみの仕事からは、少しは成長できたのかもしれない。
 
ベンチャーの日々は、どんなに準備をしていても予期しないイベントが毎日のように出てくる。
準備しきれない出来事にも、冷静に向き合うことができれば、解決できない問題なんてほとんどないのだけど、いくつもの難題がどかっと降ってくるときなどは、気持ちが滅入ってしまったりする(そうすると、本当に解決不能になってしまう)。
そういう意味で、突発的な社内外のクライシスを「なんとかなるさ」と受け流す鈍感力(感情的にスルーするだけで、仕事としては真正面から考える)と、経営リスクというマクロな目線で「これがコケたとしても死なない」とロジカルに割り切る力、その二つがベンチャーで求められる「心の準備力」なのではないかと思う。
 
よく経営者や政治家が「楽天主義」や「鈍感力」を大切な資質としてあげているが、それは単に能天気でいいというわけでも、職業人としての感性を大切にする必要がないわけでもないようだ。
禅の世界ではないけれど、目の前にどんなことが去来しても、原点に立ち返って、澄んだ心で場を読み切る力に近いものを感じる。
感じないのではなく、感じた上で、不安を手放す能力。そして、リスクへの恐れを手放すことでできる大きな仕事。
決して思考停止でも、パニックでもない、心身脱落して課題に向き合うための揺るぎのない矜持のようなものを早く身につけたい。

Komaza 54週目:ケニアに来て1年で身についたこと

先週末は、仕事に埋もれる辛さから逃れようとモンバサのSerena Resortというホテルに泊まりに行く。
ビーチの前のリゾートで、雰囲気も料理も抜群だった。
仕事の方もバリバリ進んで、うそのよう。
毎日の仕事をいかになんとかするのか、やる気がないときの最後のOne Pushをどうするのかは大切な自己理解の側面だと思う。
 
さて、実はケニアにきて一年という節目なので、備忘録として仕事の内容を書き出してみた。
仕事も毎日が勝負所で、きちんと振りかえれるのは年末になってしまいそう。
  • Series B: ベンチャーとPEの谷間でのファンドレイズ。大型機関投資家や開発銀行のDDに耐えられるデータルーム作成。分析。
  • Management Plan:経営計画の骨子作り。ファイナンスサイドからの検討。 
  • Finance Plan:成長に向けた資金計画とシミュレーション。
  • SPV and Other Structuring:森林ファンドの組成やDD。ファンドレイズ。
  • Cash Management:キャッシュフロー管理。
  • Grant Management:億円単位のグラントの管理監督。
  • Project Salvage:やばい時のなんとかする力。
  • Government Relations:政府や開発機関とのパートナーシップ交渉。ドキュメン。

Komaza 53週目:ナイロビでの思いがけない再会

昨日に引き続き、今日も投稿。

今回のアメリカ出張は、個人的にも何人もの再会があった。

ブラウンの時の友人たちや、ファイナンス業界で大活躍している親の世代の先輩も然り、4年ぶりのアメリカを満喫する(ちゃんと東海岸名物クラムチャウダーとステーキも食べた)。

他にも、三菱商事時代にお世話になっていた部の先輩がニューヨークのファンドに出向していたりして、久しぶりにご報告できたのも嬉しい。

 

帰りの乗り継ぎがあったナイロビでは、いつもお世話になっているVCの方との面談に合わせて、日本からケニア視察ツアーにいらしていた一橋大学名誉教授の米倉先生ともお会いできた。

ソーシャルセクターではTeach For Japanはじめ多くの団体にも関わり、知らない人はいない米倉先生。

同じタイミングで会社を辞めてミャンマーで起業することになっていた小沼くんの紹介でケニアに行く前に一度お会いしており、見ず知らずの若者に「とにかく頑張れ!」とエールを頂いて以来、ようやく直接アップデートの機会をもてて一安心だ。

 

僕はもともと友達が多い方ではないけれど、自分が何かで踏ん張っているときに「あの人ももっと頑張っている」と思わせてくれる仲間や先輩がいることは、ありがたく思う。

そういう人たちとずっと同志でいられるように、走り続けたい。

 

f:id:tombear1991:20181002084709j:plain