気候変動スタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀をしていましたが、気候変動スタートアップを創業するためスタンフォードにいます。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

リラックスする時に眺めて楽しむ本

この前、「リラックスする時は何をしているのか?」と友人から聞かれたので、リラックスする時に読む本を紹介したい。

普段はビジネスや金融、ソーシャルイノベーション分野のコテコテの本やコンサルのレポートが多いので、その合間にビールでも飲みながら寝るまでに眺める本の幾つかをあげてみる。

 

いきなり!な感じがするかもしれないが、腕時計の名機30機についてその開発から現在に至るまでの経緯や進化を丹念に記した一冊。写真を見てるだけでも綺麗な時計があり、余裕があれば本文も見ると技術とビジネス(特にストーリーを伴ったマーケティング)両面から楽しめる。ちなみに、時計業界はスウォッチグループを中心に大手ブランドホルダーによる業界再編が急速に進んでおり、PEの視点からも非常に興味深い(そんなうがった見方で楽しむ人は少なかろうが)。

アイコニックピースの肖像 名機30 (東京カレンダーMOOKS)

アイコニックピースの肖像 名機30 (東京カレンダーMOOKS)

 

 

こちらはもう少しビジュアル系。シャネルやアルマーニなど、誰もが知るファッション界の重鎮たちの邸宅を写真にしたもの。とにかく世界観が圧倒的(生活感はゼロ)。

モードデザイナーの家

モードデザイナーの家

 

 

 日本随一の写真家土門拳の力作。「被写体にしたい」と思った人物をかたっぱしから障子に墨書して、ひとりひとり何年もかけて撮ったポートレート集。川端康成、三島由紀夫といった文豪から、尾崎行雄といった政治家、棟方志功のような画家に至るまで、魅力的で凄みのある昭和の傑人集でもある。画面からみなぎるエネルギーによく元気をもらう。

土門拳 風貌

土門拳 風貌

 

 

 同じシリーズの現代版。こちらはシリコンバレー版「風貌」。ジョブスとその周りの開発者の激動の日常をスナップしている。今の洗練されきった企業像とは違った、ベンチャー感みなぎるネクストの開発シーンなどが見どころ。

無敵の天才たち スティーブ・ジョブズが駆け抜けたシリコンバレーの歴史的瞬間

無敵の天才たち スティーブ・ジョブズが駆け抜けたシリコンバレーの歴史的瞬間

 

 

 新聞やテレビなどで誰もが一度は見たことのある有名な写真がどのように取られ、その前後に取られたカットの中からどうやって選ばれたのかを調べた一冊。写真集としても面白いが、その背景やシーンを切り取るための写真家の工夫などのエピソードも楽しめる一冊。

写真家のコンタクト探検―一枚の名作はどう選ばれたか

写真家のコンタクト探検―一枚の名作はどう選ばれたか

 

 

Elitism Fallacy: Illusion of Being Common

結局のところ、優秀であるかでは勝敗がつけがたい場に入ってしまえば、最終的には人との関係性、リーダーシップで価値評価が決まっていく。

その中で、いかに自分以外の価値尺度に対してエンパシーを持てるかが鍵になることは疑いのないことだ。

一見して愚かしくとも、無意味に見えても、そこに対して敬意を失わずに耳をすませ、内省できるか。

構成メンバーの感情に対して敏感になれるのかは、リーダーの重要な資質。

突出した極め方をしたものにこそ、Commonな心情や機微を学ぶ必要があるのではないか。

自己研鑽だけでは、どこへも行かないのだという戒めに。

原体験は必要か?

起業やリーダーシップのテーマの話を聞くと、原体験という魔法の言葉がしばしば飛び出してくる。

過去に自分が入院した経験から医療ビジネスを志したとか、生い立ちが貧困と関わりが深かったから金融だとか、学校外での勉強に救われたから教育だとか、個人の生の経験が事業をする根源的なドライバーとなることは多い。

では、原体験は万能なのか?

この問いに答える上で重要なのは、数多の有名起業家たちが成功の絶頂から転落したときの事例ではないか。

起業家が引退間際に直面する課題の多くは、強みの裏返しである。

マーケティングが強い会社で、技術的な弱みが露見する。職人魂を売りに成功した会社が、何に職人芸を使えば良いか分からず低迷する。

昔の成功体験に縛られるが故の迷走の事例は、あとをたたない。

 

原体験は、人が無限に存在する可能性の中から自分のフォーカスを決める上で、重要な理由付けをしてくれる。

だが、それだけで勝負をしても、勝つことはできない。

なぜなら、それぞれの課題には、そこで困っている人々の生の、個別の悩みがあるからだ。

原体験でフォーカスを決めた次に起業家がすべきことは、その原体験とそこからくる自分の価値観を一旦保留にして、心新たにターゲット層の人々の声に耳を傾けることなのではないか。

結局はバリューを届ける相手の声を聞くことが、原体験からくる判断に優先されるべきではないか。

そんなことを事業をしている人から相談されながら感じたのだけど、自分で実践するのは難しいだろうな。。。

 ExplorationとExecution

どこまでが探求であり、インスピレーションを得るための模索として許され、どこまでが純粋な目的の追求・実現に費やされるべきか。

模索がなければ実行に深みはなく、模索だけでは何も生まれない。

何を持って十分とすべきなのか、感度を高めなければ。

危機感のない模索はただの懶惰にすぎないと自分を戒める。

Big, Powerful Questions

今夜はMITのフィンテックのオンラインコースの課題に追われているので、手短に。

このコースはMITのフィンテック関連の教授陣・起業家陣が教えている3ヶ月のプログラム。

最初の数回は基本的な文献やマーケット、取引、電子貨幣など各カテゴリーの知識を深めていく形式なのだが、さすがアメリカ流だけあって導入編からエッセイの提出が義務付けられている。

先週の質問は「なんでこのコースを取っていて、何を成し遂げたいのですか?」というもの。

そして今週は「学んだカテゴリーに見られるトレンドについて簡潔にまとめ、このトレンドが今後どのように変化していくのか」。

導入編だからといって、手加減なしに業界の未来を語らせる。

フィンテックというと個別のアプリや事業にばかり目が行く中で、大きなトレンドを捉えて、そこから何をビジョンとして描くのかを問いかける「大きな問い」(Big Question)から学べることは多いと思う。

(ちなみに、このクラスの中盤はプロジェクトで、最後は起業または会社内事業開発のいずれかの形でビジネスプランの発表もするので、今答えを求められている大きな問いは具体的なビジネスアイデアに結実するはず汗)