ケニアスタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

Acumen Fellowship振り返り

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Acumen Fellowshipは、とても良いプログラムだった。

ケニアの僻地のスタートアップで仕事をしていて、他国や他領域の起業家・事業との接点を増やしたいと思ってアプライしたのがきっかけ。

アフリカフェロー唯一の日本人・アジア人で、想像力の限界をストレッチされながら、ソーシャルセクターの仲間と議論するとても良い機会になった。

ネットワークとか知識とか、事前に得るものを想像していたけれど、信頼する同志とのやり取りが今後も続いていくと思うと、とても楽しみだった。

COVIDが直撃したこともあり、全3週、合計100時間弱の全工程はZoomだったが、それでもフェロー同士が工夫しあってよいセッションになっていた(仕事の合間のセッションがあると、体力を2倍消耗して大変だったが)。

振り返りもかねて各セッション(1週間半日ずつ)の概要とリーダーシップについて考えたことをまとめてみたい。

 

セッション1: Sharing Vulnerabilities:

最初の週は、ひたすら色々な人と話をした。

紛争、病気、貧困、差別あらゆる人生の逆境を乗り越えてきた他のフェローを前に、自分の存在の想像できない軽さにショックを受ける。

自分のプロジェクトを紹介し、なぜここにいるのか?

なぜリーダーになりたいのか?どんなチャレンジに直面しているのか?チームでの役割は?

家族のこと、仕事のこと、何でもかんでも話し続けた。

それぞれの質問にあまり意味はなかったかもしれない。

ただ、キラキラした成果を上げて、堂々とプレゼンして勝ち残ってきたフェローが、語り古されたピッチを捨てて、胸襟を開いて話をする。

自分の弱さ、悩み、文化的な認識の違い。どこか相手を探り合いながらも、自分から開示していくフェローの勇気が連鎖していった。

振り返ってみると、ここでしっかり話が出来たことが、その後突っ込んだフィードバックをする基礎になった。

 

セッション2: Challenging Assumptions, Tackling Mental Obstacles

コーチング的な手法で、自分が前提としている思い込みや権威、トラウマを掘り下げてマッピングしていく。

とりわけ有用だったのがImmunity to Changeというワークショップ。

自分がリーダーとして変わりたいと思うゴールについて、

・行動(やっていること+やっていないこと)

・隠れたコミットメント(心配していること、行動をもたらす理由)

・新しい自分のコミットメント(隠れたコミットメントを一つ一つ裏返して、論破していく)

という順番で、思い込みを洗い出し、変えていくというもの。

僕自身は、”Trust others to lead when I don't have an answer myself”というテーマで、書き出してみると思いがけない発見があった。

Immunityという言葉の通り、自分の心のどこかが引っかかっていたり、無意識に抑制している部分に気付けると、世界の見え方が変わっていく。

フェロー同士悩みを打ち明け合いながら、アドバイスをする過程で、信頼関係も深まっていった。

ちょっとした違和感から、仕事で苦戦していることまで、フェローが抱えている課題や誰にも言えない不安を一つずつ紐解いていくなかで、自分の想像力の限界を意識できるようになる。

 

セッション3: Good Society Readings

最後のセッションは、自分と社会をつなぎ、自分の役割について内省するもの。

プラトンからルソーまでの思想を原文を読みながら、社会を構成する人々の葛藤の歴史を振り返る。

AかBかではなく、グレーゾーンを具体的な経験を交えながら語っていく。

性善説か性悪説か?暴力は必要か?目的か手段か?差別とは?社会変革とは?な政治哲学の大きな質問を、フェロー本人たちの身近な葛藤を例として議論する。

同時に、Nelson MandelaやChinua Achebeといった指導者の原稿も読みながら、リーダーとしてのありようについて議論する。

読み物そのものは有名なものばかり。ただ、学生時代には思いもよらなかった話がどんどん出てくる。

Acumen創業者のJacqueline Novogratz本人が4日間、一日4時間みっちりファシリテーションをするセッションとフェロー達の多様で濃厚な人生経験が、Reading Materialの重さを遥かに凌駕していた。

個人的には、アフリカフェローとして参加して本当に良かったと思う。

政府の役割ひとつとっても、教科書的な近代化を経験した日本と、Why Nations Failの世界アフリカでは、全然出てくる議論が違う。

目の前の現実に根差した課題。ジレンマの逼迫性。

日本やアメリカで経験した議論とは段違いの具体性。

きれいごとじゃない議論を哲学的にするなかで、議論について行けない、という経験をした。

セッション1と同じく、人間の根源的な苦悩に触れた経験のなさで、ついていけない。

おそらく、政治の勉強は誰よりもしていたかもしれないが、僕は無力だった。

カンファレンスとかパネルとか授業とか、テクニカルな議論は十分通用すると思っていた自分の無知が恥ずかしい。

洞察の鋭さやアイデアを組み合わせてなるほどと思わせる、という技巧の問題ではなくて、心から語る重さ、人生の重み、そいういったものを自分の言葉に込められていない。

社会にインパクトをもたらそうとするからには、社会のあるべき姿という超難問から逃げてはならない。

血肉にならない言葉で社会を語ってはならない、と自戒する。

 

まとめ: Leadership to Lead Leaders 

社会を変えるためには、淡々と実務をするだけではなく、人々に変化を促し続けるファシリテーターとしてのリーダーシップを確立しなければならない。

自分が話したことのある社会起業家たちの「言葉好き」は趣味だと思っていたけれど、Effective Practitioner→Authentic Leader→Value Facilitatorという階段が見えてきた。

定義するならば、

  • Effective Practitioner:課題に対して解決策を示せるビジョナリー。現場レベルで価値を出し、インパクトをスケールさせられる優れた実務家。リーダーシップの価値は、解決できる課題の大きさに比例する。

  • Authentic Leader:リーダーとしてのBeing(ありすがた)やPresence(存在そのもの)を通じて人を導く。プロジェクトをしていない時でも、常に人に影響を与え続ける。その人だから、という理由で人がついてくる。課題と向き合うだけではなく、自分と向き合い続けた先に、純度・一貫性が高いリーダーシップが生まれる。実務的に人を説得する能力があるからリーダーになるのではなく、人が信じてしまう・信じたくなる存在としてのリーダー像。

  • Value Facilitator:Authentic Leaderは、リーダーとしての自分を研ぎ澄まして生まれる。Value Facilitatorは、そうしたリーダーたちを、より抽象的で難易度の高い対話に招き入れる力を持つ。自分の理想像を持ちながらも、対話を通じてリーダーたちのエネルギーを束にすることで、社会を変えていく。リーダー一人ひとりの想像力の限界を、束にすることで乗り越えていくには、自分自身のリーダーシップとエンパシーを極限まで引き延ばす必要がある。リーダーたちの胸の中に共通のValue(価値観)を生み出させる力。存在はひとつの虚であり、同時に大きな器である。

Jacquelineとの議論を通じて、彼女のスーパーパワーがCulture/Value Facilitatorにあるのではないかと感じた。

Fellowshipの最終章を創業者本人が丸4日16時間かけてファシリテートするのは、知力・体力ともに尋常ではない負担なはずだ。
けれど、この間、Jacquelineの集中力は切れることなく、難しい問いでフェローを刺激しながら、巧みにメッセージを織り込んでいった。
序盤で社会課題の根底にある哲学的課題を使って議論の土台を作り、中盤以降は具体的なリーダーに焦点を当てて自分たちの活動と対比し、最後はAcumen Manifestoの底流を為す価値観をハイライトしていく。
カルチャーや価値観をただ言語化するのではなく、根底にある哲学を議論するプロセスで、体感させるアプローチは、受け手側もファシリテーターもどちらも難易度が高い。


セッションを追うごとにJacquelineの言葉には力が籠っていく気がして、CatalystがCatalystであり続けるためにやっていることなのではないか、とも思う。
濃厚なリーディングで、対立する世界観を提示し、際どい話もどんどんしながら、最後はひとりひとりが自分の役割や立ち位置、目標を定めて持ち場に帰っていく、そんな奇跡的な体験だった。

 


2000年代初頭からソーシャルセクターでビジョナリーと呼ばれてきた人たちは、優れた実行者でありつつ、答えがない問いをチームで議論する資質に富んでいたのだと思う。

(日本の社会起業家の書籍に体験談が多くて、欧米の社会起業家の著作に思想・コンセプト・ビジョンを示す意見本が多い印象で、これもソーシャルセクターの文化の違いかもしれない)

落としどころが存在しないが大切な課題から目をそらさず、10年でも20年でも問い続け、行動し続ける力は、社会に価値を生む。

答えの出ない対話をホストし、続ける知的執念。

善意をもってファシリテーションする力。

一人ひとりのバックグラウンドを踏まえた直球な質問。

問いを投げかけつつ、対話を通じて世界観を立ち上げていく構想力・発問力。

リーダーとして自分が旗を振るだけでなく、同じ志を持つ無数のリーダーたちを触発する一段上のリーダーシップに触れられたことが、Acumen Fellowのコミュニティと並んで、今回のフェローシップ最大の収穫だったと思う。

 

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