ケニアスタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

自信にまつわるパラドクス

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総合商社出身の親しい友人から、キャリアについてアドバイスを求められた。

優秀な人がたくさんいる部署で成果を上げ、社内でも評価をされたうえで、ベンチャーに飛び込むのだが、投資銀行やコンサルのように「わかりやすい」トレーニングを受けていないので、やっていけるか不安だ、というもの。

 

全く同じ悩みをケニアのベンチャーに飛び込んだ当初、自分も抱いて悶々としていたので、他人事ではなく、つい熱心に聞いてしまった。

あくまで自分の狭い経験から言うと、数年程度の経験であれば、総合商社で成果を上げられた人が新天地で大活躍する可能性は結構高いと思う。

プロフェッショナルファームの強さである、全世界共通の職位ごとのきめ細かなトレーニングを受けられないのは確かに不安だが、総合商社で色々な仕事を任されたり、実際に裁量をもって意思決定したり、様々なステークホルダー(取引先、社内上層部、ネットワーク、専門家)と自由自在にかかわる経験(含む上司のサポート)は、言葉にすることができないながらも、とてもよい想像力の源泉になる。

「一度観た映画は自分で撮れなければならない」というメンタリティの人にとっては、グローバルスタンダードのフレームワークを真面目に学んで実行していくプロフェッショナルファーム以上に、総合商社の経験は活かせるのではないか。

日本はともかく、海外で仕事をしていると、MBB出身のベンチャー人材はゴロゴロいるので、彼らと異なる経験を新卒でしたからこそできる仕事はあるように思う。

ウジウジ悩まず、自分の経験を棚卸して、目の前の仕事を通じて力に変えていくべきだ。

 

話がそれてしまった。

自信がない、という相談に対する僕のアドバイスはいつも、「スキルの不足は、時間をかけて努力する必要があるが、自信は今すぐ自分の中につけられるので言い訳せず前に出ていくべき」というもの。

プロフェッショナルファームのように厳密にステップごとの必要スキルが明文化されていないベンチャーにおいては、ほとんどの場合積極的にトライして、失敗から学ぶ、出来るまで粘りぬくことが成功のドライバーになる。

だから、自信がないから、と自分に言い訳するのは無意味で、商社の大先輩の言葉を借りれば「顔に鉄板張って突撃する」根性が武器になる。

自信がなければ、周囲への説得力もないし、目標を大幅に上回る成果も出ない。

だから、自信は作り出さないといけない。

自信は持つものではなく、作り出すものだ。

 

一方で、同じベンチャーの仕事でも、「自信はあるのに上手くいかない」という相談については、僕は全く逆の印象を持っている。

自信は作り出さなくてはいけないが、それは不安が仕事の邪魔をしないため、目の前の課題と向き合う妨げにならないために重要なのであって、職業人の心構えとして自信など存在してはいけないというのが、僕の考えだ。

自分の専門とする領域で、自信を持つというのは2つの危険性を秘めている。

ひとつは、自信がある、やったことのあることを繰り返しているだけで、自分にとってストレッチがかかっていないコンフォートゾーンという危険。

もうひとつは、自分の無知を認識していない、盲目の危険。

職業的使命もつぎ込む労力も人それぞれだが、目線高く成果を上げて、常に新しいものを取り込んでいく過程で、自信など持ちようもないのではないかと思う。

"If you are not failling, you are not pushing yourself hard enough”と昔言われたことがあるが、自分のカラを打ち破って挑戦していくこと、自信が打ち砕かれる機会を貪欲に求めることは、とても大切だ。

 

職業人としての成長には、自信がないときに自信を作り出して飛び込み、成果を上げたら今度は自分の自信を打ち砕かれるような挑戦をする、パラドキシカルなプロセスが必要なのではないだろうか。

同時に、冷めた見方をすれば、自信過剰も自意識ならば、自信不足も自意識で、事業・仕事には何の関係もない。

目の前の課題を解決しましょう、自分ではなくお客さんやクライアント、事業やチームを主語に問題を見出しましょう、という点に尽きる気がする。

不安に歯を食いしばって一歩を踏み出すかどうか、これは積み重ねた自信ではなく、今この瞬間の勇気の問題だ。