159-160週目:農林業における財務戦略の役割
「どんな仕事やってるの?」と家族やら同期やらいろんな人から聞かれる。
スタートアップの財務・戦略と答えることが多かったものの、最近自分がやっているのは事業の経済性を高めることなんだと思うようになった。
林業は、プランテーションのように大規模土地所有を前提として、さらに加工設備からロジスティクスまで膨大な資金が必要な産業だ。
アイデアがスゴイ会社であっても、先行投資が必要で回収までに10年以上かかる、一般的な長期投資よりもさらにハードルが高い事業構造で、どんなにテクノロジーが進化しても木の成長スピードが変わらないので、資金的にかなりきつい。
時間が解決すると言っても、ベンチャー投資家が普通待てるのはせいぜい5年から7年くらいのもので、このJカーブの深さと長さがこの業界の重しになっている。
アフリカ林業投資の過去30年くらいを振り返ると、いろんな人が挑んでは途中で投げ出して、また他の人が始める繰り返しといっても過言ではない。
とにかく10年生き残れば見える世界があるはずなのにそこまで会社や経営者が持たない。
(農業系スタートアップはサイクルは短いものの、作物の生育や干ばつ、日々のロジなど、リスク管理面で違ったチャレンジがある)
この状況を変えるには財務的なアプローチがオペレーションと同じくらい大切だ。
事業のモデルをよりキャッシュフロー重視で組み直していくこと。
そして、証券化やカーボンクレジットなどのツールを使って資金のリサイクル効率を上げること。
そうした取り組みの先に、エクイティファイナンスをつけれるだけの将来性、優位性、特異性が生まれてくる。
青臭い理想を語るなら、オペレーション上の成功だけでビジネスはドライブされるべきだし、投資家はリスクマネーを出すべきだ。
ただ、どんなビジョンが大きく正しくても、情報は非対称だし、人はリスクを避けたがる。
そうした谷間を埋めるのが自分の役割なのではないか、そう今になって思っている。
不動産にしても企業投資にしてもインフラにしても、特定の経済活動・資産を投資対象にするためには、エンジニアリングが行われてきた。
レバレッジだったり、規制を含む環境整備だったり、政府による介入だったり、ストラクチャー開発だったり、様々な最適化を財務面からして初めて新しいアセットクラスは誕生する。
世界の森林投資AUMの1%に満たないアフリカ林業をMainstreamingするには、これまで投資が盛んではなかった事業で障害になってたリスクやキャッシュ特性を一つ一つ解決していくことが求められる。
色々なタグ付けはできるのだろうけれど、今の仕事を突き詰めれば、Jカーブを浅く、短くすることで、事業価値を最大化し、そのために最適なリスク資金を集めること。これに尽きる。