気候変動スタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀をしていましたが、気候変動スタートアップを創業するためスタンフォードにいます。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

136週目:ディールモーメンタムの身体的理解

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ディールモーメンタムは、スタートアップにおいては大切な概念だ。
社内プロジェクトを多少の困難に負けずに推進しきるためには、完璧さよりも8020でやり切るモーメンタムが必須だし、ファンドレイズはじめとする対外営業ではスタートアップならではのハプニングを含めてポジティブな関係性を維持・発展させるためにモーメンタムが欠かせない。さらにはチームとしてモーメンタムを維持し、ギリギリで成長と破綻のバランスをとらなければ、長期的な成果は望めない。
 
商社1年目の時に、「お前はこの案件のモーメンタムがわかっていない。感じないの?」と何度も言われた言葉が、社会人6年目にしてようやくつかめてきた気がするので、忘れないように書き留めておきたい。
例えがニッチすぎるかもしれないけれど、あくまでも直感的な理解のためということで、ご容赦頂きたい。
あと、即レスとか関係者の事前調整のコツとかそういう実務的な話は巷のHow To本に譲ります。というか、もっとうまくなりたい。
 

60分の楽曲を、30分でリハーサルする

世界的なオーケストラ指揮者を特集するドキュメンタリーで、こういうシーンに直面したことがある。
これまたアナロジーで、60分ある楽曲を本番30分前にリハーサルしないといけない時にどうするか。
 
細かい点をカバーする時間は当然ないわけで、まずは骨子を合わせ、そのあとは楽曲のうねりを作るための強弱やアクセントなど、「節目」にしぼって直していく。
いいかえれば、細かな点は実際の演奏の流れにゆだねて、全体の流れをはっきりと輪郭づけることに集中する。
そうすると、プロが揃っているオーケストラは、リハーサルした全体のうねりに従いながら、各々の技量でうまく調整して整合の取れた音楽を奏でることができる。
 
これを案件に当てはめると、案件の強弱やリズムを一歩下がってみることで、いつが力の入れ時で力の抜き時なのかを鮮明に描くように意識する。
そうするとガムシャラに突き進むだけではない自然な流れが描けるようになり、さらに節目を意図的に設定して抑揚をつけると、最小限の努力で最大限の結果を生みやすくなる。
 
これはサボるという意味ではない。
様々な要素が絡み合う仕事を、円滑に進めるためには押すだけではなく引いてみたり、待ってみたり、色々な所作を組み合わせて流れをコントロールする必要があるという意味で、そのためには全部をコントロールしようとするより局所的にきっかけを作っていくほうが、かえって効果的だったりするという話。
これが上手くいくと、案件が単なる仕事ではなく関係者にとって心地のいい「体験」になる。
いいかえれば、抑揚(要点)とリズム(タイミング)の管理。

 

山火事とキャンプファイアの違い

同じ山で焚き木をする行為でも、山火事とキャンプファイアは歴然とした違いがある。
それは、燃えている炎と周りに用意された水のバランスだ。
燃えている炎を消し切るだけの水が周りにあれば、それはコントロールされた炎であり、人が意図的に起こすキャンプファイアである。
一方、炎が大きくなりすぎて、周りの水では鎮火できなくなると、それは災害であり、仕事であれば文字通りの「炎上」になる。
様々な案件を同時に推進して、自分やチームのキャパシティギリギリを攻めているときに大切なのは、今の自分の周りの炎(=案件のリスク)と水(=案件のリスクが発現した時に鎮火できるキャパシティ)のバランスを常に「水>>炎」にし続けることだ。
 
悪いことは同時多発的に連鎖するので、今全部案件が燃えたら、消すのにどれくらい労力がいるかを考える。
ちょっと危なっかしいキャンプファイアでいい思い出になるのか、あるいは消し切れずに山火事になってしまうのか、個別の案件の心配よりも進行中の案件の総体としてリスク管理するほうが合理的なことが少なくない。
そもそも、個別に心配して対処できるくらいなら、まだまだ案件を抱えられる気もするわけで、本当にきわどくなったら、同時多発炎上を自分とチームで消し切ることができるかを自問しながら、バランスをとるのがよい。
いいかえれば、案件ポートフォリオのリスク管理。
 
これらを組み合わせると、最高のパフォーマンスを上げるためには、「全案件が一気に炎上してもキャパシティが崩壊しないギリギリを保ちつつ、ゴリ押しに頼らない、要所とタイミングを心得た案件実行していく」という結論になる。
まだ何となく端緒がつかめた程度なので、これからは何度も反復して理解を深めていきたい&仕事ができるようになりたい。