気候変動スタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀をしていましたが、気候変動スタートアップを創業するためスタンフォードにいます。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

Komaza 121-122週目:パロアルト→ロンドン→ハーグ→パリ→ロンドン→ケニア

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タイトルの通り、Always on the Roadな2週間だったので、まとめてご報告です。

体力的にも精神的にも追い込まれたけれど、内容ぎっしりで当初のミッションもほぼ達成したので、まあよし。
 

121週目:


この週は、水曜日まで引き続きパロアルト。木曜日からはロンドンに飛び、1週間強のロードショーの予定なので、それに向けた説明資料作り、ストーリー修正、交渉準備にあたる。会社に興味を持ってもらうことと、投資チームに納得感を持ってもらうことは求められる解像度が全く違う。投資家間での会話の共通言語になりうる普遍性を持ちつつ、そのフェーズの個別の会話に合った内容は何かに頭を抱えていた。金曜日に勝負の面談があり、ヘッジファンド出身者のチームにゴリゴリに5時間以上詰められながらも、当初のミッションを達成する。


土曜日は、留学時代の仲間で三菱商事の後輩の案内でロンドン観光。ファンドレイズで毎度ギリギリの生活をしていると、こうした機会はないので、心洗われる。Tate Modern Museumというかつての火力発電所跡を再開発したモダンアートの美術館や、Boroughのマーケット、ビッグベンと丸一日歩き回る。一緒に歩き回ったメンバーは二人とも開発系のキャリアを目指して大学院に通っていて、キャリアやら住みたい都市やら、何時間も語り合ってしまった。

 

張り切りすぎたのか日曜日はダウンしてしまって、National GalleryとVictoria & Albert Museumを見逃したのが悔やまれる。気の置けない友人と共通の楽しみを持つことも、好奇心のままに散策をすることも、中高生ぐらいの頃は当たり前だったのに、気づけば年に数度あるかないかくらいになっていくのが、少し残念。

 

 

122週目:

この週は、ロンドン→ハーグ→パリ→ロンドンとほぼ毎日違う国に移動して投資家面談。中には8時間以上続いたアポもあり、一本一本が重い。面談準備と並行して、面談後のフォローアップもしており、体力的にはかなり消耗した(ことに土曜日の朝全く起きれずに気づいた)。今回は、ビジョンよりも数字の比率が高いので、CEOに代わって会話の大半をリードすることになっていたのもあってか、スムーズにCEOとタッグを組めた気がする。こういう段になると、ふと商事の先輩たちの交渉の場での言葉遣いや雰囲気を思い出して、「あの時の~さん」と念じながら、なりきりゲームをしてギアを切り替えていく。

 


今回のロードショーは人生を変える経験だったと思う。毎日が真剣勝負で、数字を説明するだけではなく、質問に正しくかつパワフルに即答し続けないといけない、モーメンタムも大切な場を毎日重ねていく。ここまでくると、自分の準備ができていることはパフォーマンスの50%くらいでしかなくて、投資家の思考を読み切り、質問の意図をくみ取ってさらに上位のレベルでクラリティを与えていくことが、残りの50%を決めていく。したがって、可能性を突き詰めて準備をしても、さらに現場でストレッチさせられる。ひらめきとおしきりを駆使しながら、平均5時間から8時間、ぶっ通しで議論する。個別の反省点は山ほどあるものの、自分の実務的英語力でいうと、一通りの技術を持てたという実感が今になってある。


土曜日は、週末と翌週の仕事を整理して、National Galleryへ。個人的には、ターナーがダントツに良かった。レンブラントや印象派も充実していて、駆け足で見て回ったけれど見ごたえ抜群だった。「Tate Modernとはまるで別物ですよ」といわれていたのも、当たり前ながら納得。自然光の使い方もうまくて、美術館としての展示の技術も高い印象を受ける。ホテルはバンクサイドだったので、2キロ強をトラファルガー広場など名所を通りながら歩いて帰る。

 

美術館の周りを散策していたらたまたま靴で有名なジャーミンストリートに通りがかり、思わず財布のヒモを全開にしそうになったのだけれど、かすかに残っていた理性で食い止めた。革靴を育てるのも好きだし、John Smedleyが半額なのもヤバい(語彙力)わけだけれど、なんだかヨーロッパでのロードショーで対面相手の感覚に引っ張られている気がしたので、金額以上に気持ちが乗らなかった。僕は、社会課題こそ最高難度の問題解決で、世界最高レベルの人材が人生を取り組むべきものだと思っているので、ソーシャルセクターの清貧信仰は全く無意味(自己表現の範囲でやればいい)だと思っているのだけれど、自分のエクスパットとしての水準と目の前にある深刻な貧困のギャップには、毎度すっきりしないものを感じる。頭の中では整理できるのに、気持ちの面が追いつかない。思いっきり稼いで、思いっきり使うというタイプの仕事に未練もないけれど。


そういえば、金曜日の夜はBrexitの夜なので、物見遊山のつもりでロンドンのパブに行ったのだけれど、特に感傷もなくといった感じで拍子抜けした。ミーティングの通り道で、ビックベンを通った時にEU国旗を持ったグループを見かけたけれど、それくらいのもので、ホテルでBBCを見ながら、Brexitの瞬間(ロンドン時間夜11時)を迎えた。もうちょっと歴史的瞬間に立ち会った実感が得られるかと思ったのだけど、まあそんなもの。令和もそうだけれど、日本人の時代性に賭ける情熱とお祭り好きは、ひょっとすると特殊なのだろうか。