2019年「証明の年」から「実行の年」へ
昨年のブログでは、2018年を「証明の年」と位置付け、「準備」を開花させることを掲げていました。
実際この1年間は、紛れもなく証明することを毎日求められた年でした。
仕事に慣れて、評価もある程度確定した安住の地を離れて、縁故の全くない場所でゼロから信頼を作りあげるプロセスは、一味違った刺激がありました。
留学生として至れり尽くせりの環境を与えてもらった学部留学とは対照的に、ゼロから自分の役割を定義し、成果をデリバーするというのは、自由度もやりがいもはるかに高かったです。
多くの幸運や巡り合わせに恵まれて、気づけば急成長するスタートアップの中でも在籍年数が長く、新しい経営メンバーの採用の度にブリーフィングを頼まれるようになりました。
スタートアップらしいHard Thingsもあり、目の前が真っ暗になりそうになりながらも、チームの力を借りてなんとか立て直すということもありました。
この一年で、プロフェッショナルファームと比べて、スキルがどこまで成長したかは、正直微妙だと思っています。
ただ、スタートアップの中で生き残ることへの執念を持ち続けること、大企業ではあり得ないようなイベントにも動じずに対応し続ける胆力を身につけられたこと、事業とその先にいる受益者やお客さんを信じて、辛くともインパクトを最大化すべくリスクをとって挑戦すること、といったAttitude(心構え)は12ヶ月前とは全く違います。
2018年にやったこと
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仕事
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森林ファンド:
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Komazaが実践する零細農家が主体となった林業は、イノベーションとして注目されている。これを支え、スケールするためのファイナンス形式として新たな森林ファンドのコンセプトを開発。Climate Policy InitiativeでInnovative Climate Financing Ideaとして表彰されたほか、世界の主要な機関投資家からも注目を浴びている。自分が最初からボールを持ってるプロジェクトで、今となっては会社のバリュエーションを左右する重要案件になっている。コンセプトで終わらないために、粘り強く慎重に仕事を進めていきたい。
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資金調達:
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ブレンデッド・ファイナンスに関わるグラントからエクイティまであらゆる業務を実行した。エクイティ調達は現在も継続中だが、グラントについては英国政府からの1億円超のプロジェクトのドキュメンと管理体制構築をしている。開発銀行からファミリーオフィス、林業関係者から、VCに至るまであらゆる投資家と仕事で接点を持てたのは貴重な経験となった。
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チーム:
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Corporate Finance部門をゼロから立ち上げる。優秀で献身的なチームに恵まれて、等比級数的に増える仕事をこなしきる。結果的に、戦略的な施策にも関わることになり、来年以降も拡大していく。
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ポジション:
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CEO直属のスタッフとして入社して、マネージャーとして全社横断型プロジェクトを複数まとめることになった。実質的にHead of Departmentとしての役割に加え、CFO役のメンバーが家庭の事情で退職した秋からは、Interim CFO的にファイナンス関連全般のプロジェクトマネジメントをしている。かなりストレッチされたがいい経験。新年度からは新しいポジションにも就任予定。
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その他
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ヨット:
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英国ヨット協会(RYA)のBeginner Course Level 1とLevel 2を修了。年間パスも買って、今年で50時間以上は海の上にいた計算になる。Coastal Kenyaに住んでいる醍醐味だと思うので、来年からはレーシングかより高等テクニックのクラスに進む予定。
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テニス:
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今住んでいる家の敷地にあるテニスコートで、同居人たちと密かに練習をしている。ラリーも繋がるようになってきたので(最多記録147回)、趣味にできるレベルまで続けていきたい。
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マラソン:
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9月のミニ・トライアスロン大会で5キロ走った以外は、大会には参加できておらず、反省大。仕事に飲まれてトレーニングできていない期間が長かった。家の外を走るのは気持ちいけれど、時間とスピードを管理したトレーニングはしづらいので、来年はジム通いを検討中。毎週20キロ走ることが目標。
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旅行:
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仕事に飲み込まれてあまり行けていない。ケニア国内やアフリカ諸国もちゃんといきたい。
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ドイツ:フランクフルト・マインツ
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アメリカ:ニューヨーク・ボストン
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ルワンダ:キガリ
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日本:長野県(上田・黒部ダム)
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ブログ:
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「ブラウンの熊たち」で留学ブログを書いていた時と同じく、毎週1本を目標に書き続けてきて、すでに1年3ヶ月。読み返すと恥ずかしい内容ばかりだけれど、それは成長の証とポジティブに捉えて書き続けていきたい。Komaza入社からの一連の記事は、このリンクから見れます。
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Growth Opporunity:
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マネジメントと判断すること:
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スーパー担当者から脱却することは、一時は5人以上の上司にレポーティングしていた総合商社時代からの最大のアンラーニング。企画から完成までの一連のプロセスをボールを持って走り、途中のエンドレスな修正を乗り切っていく担当者としての成長の限界点が見えつつある。個人の生産性をあと10%−20%伸ばすことはできるのだろうけれど、会社の成長フェーズからして、課題解決を数倍にしていく必要がある今、投資すべきはチームを通じたデリバリーになる。そのためには、プロジェクトをマネージし、必要な判断をより的確かつ迅速に重ねていくトレーニングが必要になる。これは全くの未経験領域なので、やりながら学んでいくしかない。個人的に一番おそろしいと感じたのは、自分がマネージャーを自称して単なるマルチタスクプレーヤーになっていると気づかなかったこと。
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アクセルとブレーキ:
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CEOは仕事はマラソンだ、とよく言っているけれど、今年の仕事はスプリントを繰り返す、シャトルランのようで、鍛えられたけれどサステナブルな働き方ではなかった。大企業のようにバッファになってくれる人がいない中で、自分の心身が消耗してしまうことはリスクが高い。特に"Shit can always happen”なアフリカのスタートアップでは、先進国では起こりえないハプニングと相まって追い詰められる可能性だってある。無限にやるべきことが降り注ぐ中で、フォーカスを切らさないよう、スコープの判断をシビアにするべき(Must Doに注力、Nice To Haveは余程のことがないとやらない)。週末の休み方は課題が残っている。
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成長を見越したチーム作り:
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会社のお金周りを見る仕事をしていると、Burnというのが嫌でも頭にこびりついてくる。もともと、プロフェッショナル集団を作ることを目標としていたので、少数精鋭を掲げ安易な採用は避けてきた。これは貧乏性だったと反省している。会社の成長スピードに合わせて、ファイナンスの観点から解決すべき課題も等比級数的に増えてくるので、そこを目指して採用のアクセルを早めに踏むべきであった。これは年末年始の採用でカバーしていく所存。
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スキル・知識面での自己投資:
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アフリカのスタートアップという前例の乏しい業界なので、とにかくOJTに徹して自分の限界を伸ばしてきたのが入社からの1年余りだった。社内プロフェッショナルとしての最大の貢献は、プレーヤー個人が全知全能化すよりも、効率的に社内外のリソースを統合し、(めちゃくちゃ難しいけど)大企業と遜色ないレベルの経営判断と実行を支えることだと思うので、浅く広く勘所を掴んでいく学習スタイルになる。それ自体は有効であったと思うものの、1年以上が経つと、それも逓減してくる。もう少し突っ込んだテクニカルな学習に時間を使うことで、相対するプロフェッショナルと同等かそれ以上の貢献ができるようになるのではないかと思う。仕事だけで燃え尽きている今の仕事ぶりでは、決してできない。そして何より、このままでは自分の成長が組織の成長のボトルネックになってしまう。
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2019年は「実行の年」に
2017年9月から1年余りで「準備」と「証明」のフェーズが完了した今、2019年は「実行」の年にします。
会社からみたHigh Performerで終わるのではなく、会社をレバレッジして業界の歴史を塗り替えることに注力します。
具体的には、次の3つがゴールです。
どのプロジェクトも、これまでの準備と信頼の蓄積を最大限活かすことが、成功の鍵になっています。
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CEOの伴走者としてFinancingを実現する:
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そもそもケニアに来た理由はここにある。ファイナンスを武器の一つとして、社会起業家の伴走者として会社を成功に導くこと。そのためにも大型資金調達の実現は待ったなしであり、最重要ゴール。そのプロセスで関わる重要な戦略的施策については、アップサイドとして積極的に取り組んでいく。
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世界初の零細農家向け森林ファンドを立上げる:
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資金調達に奔走した2017年の約10%くらいしか時間を使っていないにも関わらず、やたらと人気を集めたこのプロジェクト。まだまだ考えるべきことが満載なので、業界の軽率さ・安直さに流されることなく、淡々とディテールを詰めていきたい。
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日本でインパクト投資のコミュニティを作る:
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20代も後半に入り、ファイナンスもソーシャルセクターも(ちょっとだけ)パブリックセクターも経験を積んできた中で、仲良しクラブではないプロフェッショナルとして尊敬できる仲間と勉強する場を作りたいと思うようになった。インパクト投資に実務で接点がある(Wanna Beではないことが大事)同世代を有志で募り、しかも言葉は英語だけという制約付きで勉強会を発足した。英語にしたのは、意識が高いからというよりは、現状のインパクト投資の事例や研究文献がほぼ全て英語であり、英語力なしに業界の一員になれないという部分が大きい。大学生の時のようなファンクラブ的な集まりでなく、実務に直結しているからこそ、インパクト投資というまだまだ狭い業界で価値を生めるのではないかと思う。まずは続けて見ることが大事だと思うので、じっくり育てていきたい。
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