MITのフィンテック講座: イノベーション分析のフレームワーク
恒例のMITフィンテック講座の復習。
フィンテックをはじめとするイノベーションの評価軸という講座で、面白いフレームワークが出てきたので、自分の勉強の復習も兼ねて、紹介したい。
この"Ten Types of Innovation"フレームワークはInnvoation Consulting会社のDoblinが開発しており、新しいベンチャーのどこがイノベーションになっており、それぞれどのような戦略を取りうるのかを考えるツールになっている。
このフレームワーク↑は、新しいビジネスのValue Propositionを10の要素に分解しており、その中のどこでイノベーションが起こっているのか/いないのかを分析できるようにしている。
以下、一つ一つ説明してみたい(日本語訳はあくまで意訳ですので悪しからず)。
Configuration(ビジネス構造)
1) Profit Model
収益構造。例えば、Huluなどのドラマ・映画ストリーミングは、ビデオレンタルのように「一本幾ら」ではなく、講読料方式を取っている。Spotifyは音楽のコンテンツ料をオーディエンスではなく広告主から取っているなど。
2) Network
ビジネスをするときに関与するプレーヤー。例えば、銀行が普及していないアフリカの農村などでは、携帯上の電子通貨M−Pesaをボーダフォンが流通させることで、銀行代わりとして使われており、これは従来金融サービスを提供する銀行以外のアクター(携帯会社、街角のキオスクなど)を巻き込んだネットワークのイノベーションといえる。
3) Structure
人材やアセットの使い方、配置などのビジネスのパフォーマンスに影響する構造。人事システムやR&D、IT化など。古い例だけど、在庫を管理し顧客情報の分析を可能にしたPOSシステムが元祖かなと。あとはUberの自動車とドライバーの調達方法もこの例ではないかと。
4) Process
提供価値に直結した競合に勝る・真似できない方法。例えば、Googleのサーチランキングや広告システムは、他社とは決定的に差別化した方法だと思う。古い例だと、コカコーラのレシピ(特許にも出ておらず、その内容は最高経営幹部でも知り得ないことで有名)とかもその手のイノベーション。
Offering(提供する価値)
5) Product Performance
製品のパフォーマンス。これはiPhoneのような全く新しいカテゴリー(スマホ)を定義する製品でも、「従来の数百倍の画質のテレビ」などでもいい。
6) Product System
製品を取り巻くエコシステム。例えば、楽天ポイントは、楽天市場をはじめとする様々な楽天のサービスを個人のアカウントにつなげ、ポイント還元システムを構築して顧客を囲い込んでいる典型的なパターン。
Experience(ユーザーエクスペリエンス)
7) Service
コアの価値提供を増強するサービス。販売する製品・サービスを支える追加のサービスのこと。例えば、アマゾンの物流システムは単なるネット通販に加えて、翌日配送などの補強的価値を提供している。
8) Channel
顧客へ価値を届けるチャネル。ネット通販が実店舗よりも便利なチャネルを提供したり、リアル店舗のセレクトショップやTSUTAYA書店がアマゾンより好まれたり、何がいいかはビジネス次第。あくまでも顧客の要望に応えているかが基準。いくつあってもよい。
9) Brand
ブランド。英語の本文では"Promise”と説明されていたが、「ここなら大丈夫!」と思われる揺るがないポイントのこと。例えば、Googleの検索は比較的信頼できるとか、わからないことがあったらまずWikipediaを見てみるとか。
10) Customer Engagement
顧客エンゲージメント。顧客の深層心理まで理解した上で、顧客の商品体験や生活を豊かにするための施策。ネットショップのおすすめ機能とかはこれにあたるのではないか。
以上、考えても見れば、「イノベーション」に限らず、競争優位性を持つ企業やビジネスのほとんどがこのいづれかに突出した価値を確立しているようにも見える。
仕事でも使える可能性大なので、わくわく。