アショカフェローになるための条件
1980年に設立されたアショカは、過去30年で世界70カ国以上、3000にのぼる社会起業家を「アショカ・フェロー」として認定している。
そもそも、“Social Entrepreneur“という言葉が存在しなかった時代に、いち早く歴史の次の一ページを予測し、それを誰の目にも明らかなフェローという具体例を通して世界へと浸透させた創設者ビル・ドレイトンの功績は小さくない。(もちろん、フェローにできるような、壮大なビジョンと強い情熱を持った人々の存在なしに、アショカは成り立ち得ない。)
世界中に「ダイヤモンド」と呼ばれる拠点を持ち、ネットワークを張り巡らせるアショカのイノベーション探知能力は、近年同じような財団やNPOが増える中でも群を抜いている。
DCにある他の有力団体の幹部へインタビューしていても「次元が違う」というコメントに何度も遭遇して僕自身驚いた。
ということで、今回はアショカが30年かけて定義した「社会起業家」(“Social Entrepreneur”)に求められる資質、そして彼らの社会で果たすべき役割について説明したい。
社会起業家とはどんな人々なのか?その問いに答えるには、アショカが掲げるフェローの評価基準を見るのが一番シンプルだ。
アショカがまだ方向性を模索していた段階で300のフェローの共通点を分析して生まれた「フェロー五ヶ条」を下に挙げた。
ちなみに、アショカの競争優位は、業界随一の社会起業家ネットワークにいるフェローたちの動向分析から編み出される優れたビジョンにある。この選定基準もその一つだ。
①「新しいアイデア」—“New Idea”
どんなに大規模であっても、どんなに有名であっても、アイデアに革新的な部分がなければいけない。
ただ、このアイデアというのは、必ずしも何か全く新しい技術や概念を発明することではなく、これまでと似たような方法を上手く組み合わせたり、同じアイデアでもやり方に工夫をしたりしている場合は、新しいアイデアとされる。
具体例を挙げると、グラミン銀行のムハマド・ユヌス氏はアショカ・フェローになることができる(実際にフェロー)が、彼のモデルをコピーしている世界中のマイクロファイナンス事業者はほとんどフェローになることができない。なぜなら、どんなに人の役に立っていても、新しいアイデアではないからだ。
②「社会へのインパクト」—“Social Impact”
社会起業家と名前に「社会」を背負うからには、その活動は社会的に効果の高いものでなくてはならない。
そして、ただ慈善事業として同じアイデアを繰り返すのではなく、常により多くの人により大きなインパクトをもたらせるかを常に模索する姿勢、そして実際にそれまで不可能とされたレベルの変化を世界に生み出す戦略が求められる。
③「クリエイティブさ」—“Creativity”
社会問題は、公共事業からもビジネスからもサジを投げられた、どうしようもない問題である。
なので、基本的に、資金や人手といったリソースは不足している場合がほとんどで、下手をすると複雑な社会構造の中で四面楚歌に陥ってしまうことさえ希ではない。
現に、事業を始めた初期のフェローの多くが、社会から猛烈なしっぺ返しを経験している。
こうした過酷な環境をもろともせず、「不可能を可能に」していくための創造力なしに、困難を乗り切ることは難しい。
一方で、普通は気がつかないような、思いがけない工夫で、解決不可能と言われた社会問題が一気に解決することも少なくない。
本来10億円いるはずの企画をコストゼロあるいはお金を払ってもらって実行してしまうような、しぶといクリエイティブさが求められる。
④「アントレプレナーとしての資質」“Entrepreneurial Quality”
自分なりの洞察をもとに機会を見出し、それをあらゆる手段を使って実現していく能力のことで、これは大体ビジネスにおけるアントレプレナーの定義と同じかもしれない。
⑤「倫理観」—“Ethical Fiber”
営利、非営利を問わず、起業家としての動機がどこにあり、なぜ社会問題の解決に挑むのかも、大切な要素になる。
別にお金儲けがいけないわけではけっしてなく、社会のために特定の問題に取り組む志がまっすぐであることが重視される。
どんなに優れたアイデアをもっていても、「この人はちょっと」という候補はどこにでもいるものだ。
こうした基準をもとに、何十時間もの審査を経て選ばれるアショカフェロー。
日本人で選ばれているフェローのリンクを貼っておくので、興味のある方はぜひ!
【グローバル・フェロー】
枋迫篤昌さん@Micromanos
【ジャパン・フェロー】
片山ます江@社会福祉法人伸こう福祉会
大木 洵人@シュアールグループ
川添 高志@ケアプロ株式会社
(*Ashoka Japan Fellow)
【続く】