気候変動スタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀をしていましたが、気候変動スタートアップを創業するためスタンフォードにいます。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

171週目:2021年のリスクとシナリオ

4日から仕事始め。
今週は昨年末にとりまとめたToDoを休暇明けのフレッシュな頭で考え直す一週間。
キックオフと称してチームに大局観を示しつつ、僕自身もプライオリティを鮮明化していく。
仕事のスピードはまだまだだが、目の前の作業に埋没したい欲求を抑えて、じっくりと考える時間をとる。
昨年9月から開始したプロジェクト群において、本質的なボトルネックがある程度見えてきている今の時期に、根本的にリスクが高い部分を特定して、先行して手を打っていく必要がある。
同時に、来週からは昨年タネを播いて水やりして育ててきた案件をしっかりプッシュするタイミング。
時機を逸せず、課題を逃さず、かじ取りが難しい。とりわけ、チームの成功に自分の時間を割くと、自分が直接取り組んでいるプロジェクトが危うくなるので、線引きには要注意である。
いろいろツッコミたい部分はあるが、あくまでも自分を緊急対応専門と位置づけ、極力オペレーションレベルでの介入を減らしていく。
デリバリーの重要局面や危機的状況など、場面を限って戦力投入していかないと8本あるプロジェクトラインの総てを年内に完了することはできない。
またストレッチされる年になりそうで、ワクワクしてきている。
 
年初の恒例行事、Blackstone Byron Wienの10 SurprisesとEurasia Group Ian BremmerのTop Risksに目を通した。
今年はByron Wienの方がマーケットと米国を中心に絞ってきた印象で、Ian Bremmerの方がトルコの経済破綻、メルケルなきヨーロッパの混迷、COVIDで打撃を受けるラテンアメリカと幅広く地政学的リスクに言及している。
コロナが大々的に混乱を生んでいて、すべてがサプライズの現状では、Ian Bremmerの分析の方が局地的なリスクやCOVID以外の争点にも目を向けていて、得るものがあった。
特に印象深かった点は、以下の通り。
 
  • 中央銀行がMMTを前提とした施策を進める
  • 米債の10年利回りが2パーセントを超える
  • Biden政権下で米中国交の改善(修復)が行われる
  • アメリカは国民の半分がBidenを大統領として認めない、不安定な状況が続く
  • ヨーロッパは、メルケルという長期のリーダーを失い、安定性を欠く
  • ラテンアメリカ、トルコ、中東など、他の地域でも火種はくすぶっている
  • Climate Changeやデータビジネス、イノベーションなど新しい領域での国際競争が加速し、G-Zeroでの殴り合いになる。結果的に、米中の利害が対立する公算が高い。

グローバルに考えることがいっぱいある年だが、目の前の事業への集中力を切らさず、スタートダッシュを続けていきたい。

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170週目:仕事はじめ

いよいよ年が明けて仕事が始まる。

正月は毎年日本で家族と過ごしてきたので、今回は初めてのひとり正月。

大みそかから三箇日にかけて、集中して考え事をしたり、今年の計画を整理できた。

ケニアでの仕事も4年目のなかばとなる今年。

慣れ合いになりそうなものだが、この数日間仕事の優先順位などを考えていると、あっという間に緊張で体がしびれてくる。

「仕事にのまれない」と自分にいいきかせて、パソコンとノートに向かう。

資金調達にかぎらず、仕事は結果がすべて。

毎年期待値を超える仕事をしては、さらにハードな目標を設定する。

ぎりぎりを超えるゴールを設定して、粘り続ける。

ケニアに来た時の、新鮮で生々しい渇望を忘れず、Comfort Zoneの外に向かってフルスイングしていく。

自分は狙いすまして計画を進めていく弓道タイプなのだが、今年はサッカーのようにパスを前に出しながら、走りながら、臨機応変にやらないと目標の達成は難しい状況に自分を追い込んでみることにした。

新年の高揚感に力をもらって、今年も仕事にむきあっていきたい。

 

威勢のいいことを書いている今も、すでに胃がキリキリと痛んでくる。

知り合いから、

「この道より 我を生かす道なし この道を歩く」

という武者小路実篤の言葉を教わって、さっそくPCのモニターの横に張り出して自分を励ます。

今年はもっとふてぶてしくありたい。死力を尽くしてなお、泰然自若としているしぶとさが欲しい。

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165-169週目:年末年始

 

4週間週次ブログを書かなかったのは初めてかもしれない。

どたばたしていたので、という言い訳は無意味なので、淡々と起きたことを書いていきたい。

 

165-167週目

年末は毎度のこと、慌ただしい。

チーム全員が必死に頑張ってくれているのを激励しつつ、困っている問題を一緒に解決していく。

複雑なイシューのしわ寄せというのが、年末にきているので、プロジェクトごとに予習をしてスケッチを描いてミーティングを望む。

不確実性との闘いは随所にあるが、シナリオをじっくり考え抜けば、リスクは限定的である。

将棋と同じで、コンピューターのようにすべての手を読む必要はなく、深刻なリスクだけを特定して、対策を打つ。

それでもこぼれるリスクがあれば、都度対応していく。

複雑な課題であっても、アプローチは単純化しうる。

もっともっと考えたいという衝動を振り切って、休暇に入る。

 

168-169週目

年末の仕事でフラフラになっていたので、思い切ってケニアの国立公園にいく。

年末年始は毎年家族で過ごしていたので、生まれて初めて異国の地で正月を経験した。

コロナ禍で帰国するのも、戻ってくるのも難儀しそうなので、仕方がない。

いつもは家族団らんで甘やかされる分、今回は淡々と本を読んだり、運動をしたり、考えを整理したりすることに充てている。

 

せっかくなので、ロードトリップの写真を!

 

まずはツァボ国立公園から

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キリマンジャロもしっかり見える。いつか登りたい。

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こちらはマラソン選手を輩出することで有名な、Iten.

泊まったホテルには、どこかのプロチームがトレーニングにきていた。ちょっとアメリカっぽい。

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所変わって、ビクトリア湖。

移動に使うフェリーが満載どころか、揚陸用の橋を出したまま移動する様子にビックリ。

ちなみに、ランドクルーザーが載っていたりした。

定期的に、フェリーの転覆事故が起きる理由がわかる気がする。

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キスムに向かう道のり。青空とサバナがなかなか気持ちいい。

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2021年は「実行の年」から「飛躍と準備の年」へ

2020年「実行の年」の振り返り

20代最後の年、面白い一年でした。
 
とりわけ印象深かったのは、7月にクロージングしたシリーズBです。
投資委員会の直前にコロナが直撃し、現地DDが中止になるなど、絶望的な状況のなか手探りでの実行となりました。
結果的に、アフリカの林業・スタートアップという敬遠されがちなジャンルにおいては業界初という象徴的なディールとなり、インパクト投資家ではなく本流の機関投資家や開発銀行からの直接投資はImpact Investing of the Yearにも選ばれました。
年初はカリフォルニアと欧州を往復して、投資家の現地DDのときだけケニアに戻る生活をしていましたが、PEやストラクチャードファイナンス、ヘッジファンドなどバラバラのバックグラウンドの投資家を相手にした交渉では、「新しいアセットクラスをつくる」という挑戦の難しさを痛感させられます。
ときには、投資家のInvestment Thesisそのものを再定義するような突っ込んだ提案もしながら、起業家と投資家双方の対話で案件をつくる過程は、この仕事の大変なところでもあり醍醐味でもあるのかもしれません。
 
限界を超えてストレッチされ、危機を克服する経験、というのは天命と努力の両方がないと得られないものだと思います。
その点で、三菱商事を退職した3年前に誓った、ファイナンスを使って事業・社会に際立った成果を上げること、起業家と投資家の双方と対話すること、テクニカルな知識を駆使してベストな解を模索すること、という当初の目的は達成できました。
「これは自分のチームで成し遂げた仕事だ」と胸を張れる最初の案件は、その過程と同じくらい、プロフェッショナルとしての成長に欠かせない通過点のような気がします。
 
加えて、9月からは資金調達の重要な投資テーマであった海外進出や、カーボンクレジット、証券化、レポーティング、ESG対応などのプロジェクトを並行して立ち上げ、マネージャー級の人材を数人抱える社内最大のチームが生まれつつあります。
ファンドレイズでは、時間との闘いだったこともあり、CEOと自分が司令塔となって枠組みと中身の両方を指示し、チームは作業に注力という不健康な状況が続いていました。
きちんと情勢判断ができていればよいのですが、いっぱいいっぱいで目の前の危機に向かっていた自分にはチームをEmpowerする余裕がなく、ゴリ押しで乗り切ったというのが正直なところです。
今回ようやく時間軸を仕切ったプロジェクトが立ち上がることになり、マネージャーがプロジェクトのオーナーとなり、自分は成功支援に注力するという、あるべき姿で再編を行いました。
結果として、レポーティングラインは5人となり、素晴らしいメンバーのリーダーシップのもと、着々と進歩が生まれています。
同時に、マイクロマネジメント型ではない形でいかに成果を最大化できるか、という点は十分改善の余地があるとみており、2021年には突っ込んだ勉強をする予定です。
9月には資金調達モードからチーム育成へと舵を切るための転換点としてコーチングを始めて、いい感じに効果が出始めています。
 
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2021年は「飛躍と準備の年」

2021年は「飛躍と準備の年」です。
 
資金調達はあくまでも始まりでしかありません。
調達した資金をいかに事業価値に換えていけるかが、実際にベンチャーの経営陣が答えなければならない問いであり、そのためにまだ出来る仕事があります。
2019年・2020年は実質的にはCFO的な仕事が中心でしたが、ここからはファンドレイズと投資実行の2面にのみ特化した攻めの仕事に注力していきます。
 
3年以上この仕事をして、自分の仕事が単なるファイナンスやファンドレイズではなく、事業の成長可能性を最大化するためにビジネスモデルや新規事業を含めて積極的に会社に提案をしていく、企画業であると思い至りました。
事業のキャッシュフローを変えていくことで、積極的に投資を行い、リスクを管理する。言うは易く行うは難し、というこのパズルを一つ一つ解いては積み重ねていくのが、2021年の主なテーマになります。
カーボンクレジットやM&Aなど新しい技法にも取り組みながら、イノベーティブなビジネスモデルを最大限生かせるファイナンスを実現していきます。
グロースフェーズに突入しつつある会社に働きかけて変化を起こす、ハンズオンとイシューの読み切りの両方が求められる一年になりそうです。
チームとしても次のレベルに飛躍することが、大切なゴールです。
 

20代から30代への転換

2021年は、30歳になる年です。もはや若者ではなく、かといって経験豊かというわけではない、危うさと面白さがちょうど半分半分に差し掛かる時期でしょうか。
20代は、留学、日本での就職、ケニアへの転職と、徹底して考えて、大胆に決断することの繰り返しでした。
世界の全体像、物事の動き方とあるべき姿、自分に合った勝ち筋を丸ごと理解できる、いわば、プロフェッショナル版のリベラルアーツプログラムとして、地域も業界も対照的なチャレンジを組み合わせてきました。
日本、アメリカ、アフリカと、それぞれの場所で納得のいく成果を出しながら、貪欲にインプットを重ねてきて、10年経ってようやく暗闇から抜け出す道筋が見えてきました。
着地点こそ見えないものの、10年間成果にコミットして出してきた実績と、意思決定のプロセスへの自信がじわじわと効いています。
ソーシャルセクター、投資、ベンチャーと業界をまたいで見えてきた世界観のようなものを、応用して仕事に換えていくのが僕の30代になりそうです。
 
20代と2020年で共通の反省点もあります。
没頭してしまうタイプで、延々と考えたり、あれこれ投げ出して目の前の課題に突入したり、周りが見えなくなることが何度もありました。
没入感が成果につながっていることもあり、これまでは必要悪のように考えていましたが、30代こそむしろ「遊び」を大切にしていく必要がありそうです。
確か5月だったと思いますが、Space Xが有人宇宙飛行を成功させた実況中継を見たときに、いかに自分の想像力が狭窄していたか、眼前の仕事やインプットにばかり意識を奪われていたかを痛感しました。
未来を見るというのは、観察や分析を超えて、自分の主観をフルに使った想像力が問われる分、単なる器用貧乏にならないように注意が必要です。
 
この1年だけで見ても、インプットの量がアウトプットの量を左右するレベルの仕事が確実に減ってきました。
メタレベルの問題解決、新しい事業に対する想像力、他者・自分に対する理解、多くの可能性がある意思決定など、経験の深さと広さが思考と行動の質に響いてくる場面では、長時間を机の前で過ごすだけでは超えられないインスピレーションが求められます。
練習でも学習でもなく、体験に基づく世界観というのは、仕事においても人生においてもますます大切になり、作業や仕事に逃げてはならない、そう直感しました。
不確実性が高い、未来志向の仕事をするからこそ、未来に対して頭を柔らかくして、日々五感で世界と接していなければならない。
未来は本にもレポートにも書いていないので、自分の感覚を頼りにリスクを取っていくしかない。
プロフェッショナルとしての経験やスキルは、うまくやる確率を上げこそするが、本質的なゴール設定はあくまで一人ひとりの人生から出てくるもの。
このあたり、深堀りをしていきたい、その意味で2021年はパワフルな30代のための「準備の年」です。
 

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「NHKプロフェッショナル」から見える5つの行動原則

NHKの「プロフェッショナル」が好きで、夏から冬にかけて全作品を観返した。

仕事が大変な時に勇気をもらうこともあれば、悩んでいた課題のヒントをもらうこともあった。

料理人から経営者まで様々な人々が登場し、全然違う仕事をしているにもかかわらず、本数観れば観るほど、共通するメッセージのようなものがある気がしている。

200作品あまりを観て感じた、プロフェッショナルの行動原則を書きだしてみたい。

 

  1. ゴールに忠実である:サービスでも商品でも、職業的行為は自分以外の誰かに対して価値を生むことを前提としている。したがって、クライアントであれ、消費者であれ、最終的なゴールとなる相手・対象にとことん向き合うのが、基本姿勢となる。また、個人の成長という観点からは、今の自分と目指す理想の距離感を常に自分に問うている。実績も出て周囲からちやほやされるようになってなお、彼らの眼中には自分の設定したゴールと自分との距離しかない。理想と現実のギャップから目をそらさない。
  2. 苦悩して、失敗して、それでも決める:ドラマ的な演出も多少はあるのかもしれないが、とにかく悩んでいるプロフェッショナルの描写が多い。挑戦をしているから、パイオニアになるわけで、普通にできないことをやっているのだから、悩むのは当たり前かもしれない。失敗の数も少なくない。それでいて、最後は悩みながらも必ず決断をしてポジションを取っている。そして、ひとたびポジションをとったら、ぶれない。また、経営者や企画者のようにチームを率いる場合は、悩んでいながらも不安を周りに伝えない。言い切る覚悟を持つことで、物事が進んでいく。不安と自信はどちらも伝染していく。
  3. 面で攻めて、点を狙う:仕事には大きく分けて、新しい領域を開拓するものと再現性を極めるものの2種類がある。不確実性が高い仕事においては、ざっくりと断面を決めて、そこからじりじりと答えを絞り込んでいく。経済性のようにわかりやすい尺度がない時ほど、本人の意思決定に恃むところが大きい。絞り切った先にあるのが、理想とする目標点であり、いわゆる職人タイプの人は、この点をいかに研ぎ澄ませるか、そして再現し続けられるか精進している。
  4. つながりを見出し、一貫性をもたらす:クライアントやお客さん、同業者やチームに至るまで、一般的なレベルの想像力を超えて神経・思考を巡らせることで、想像力の限界を超える。細やかな神経と幅広い思考で、普通の人が見えないつながりを見出す。見えてきたつながりを理解して終わりではなく、自分なりに再定義して強固な一貫性を生み出していく。つながりはインスピレーションかもしれないが、一貫性は固有の価値になり、文化になり、資産になる。
  5. 最善を尽くす:言うは易く行うは難し。外的な評価ではなく、自分で期待値を設定しにいく姿勢がある。延々と悩むことはできないと分かっていながら、ぎりぎりまで粘る。「最善」の尺度は努力の量ではなく、結果によって定義される。

 

書き出してみると、どこかのビジネス書で読んだことのある感じが否めない。

まあ、そういうことですよね。言うは易く行うは難し。