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Zeitgeist

留学した後の話。

農業分野で活躍する社会起業家:One Acre Fund

 

 

 

仕事で農業に関わる機会があったので、アグテック(農業Xテクノロジー)分野で活躍している事業をひたすら見ていて、面白いソーシャル・アントレプレナーを見つけたので紹介したい。

 

このTEDのスピーカーのAndrew Younは2006年にOne Acre FundというNPOをケニア立ち上げた。 

農業領域の社会起業家として知られる彼の変化の仮説(Theory of Change)は次の文章に凝縮されている。 

 

“Logistically speaking, it's incredibly possible to end extreme poverty. We just need to deliver proven goods and services to everybody. “

「ロジスティックの観点から見れば、極度の貧困を解決することはかなり現実的なことなのです。すでに先人たちが確立した商品やサービスを社会の隅々まで届けさえすればいいのです。」

 

課題意識と変革の仮説 

彼の課題意識は多くの国際支援団体とあまり変わらない。貧困により子どもの3人に1人が発育不良に苦しみ、10人に1人は5歳になれずに命を落とし、高校進学ともなれば4人に1人という現状を変えること。


ただ、彼が他のソーシャル・アントレプレナーと違ったのは、貧困というマクロな問題を解決するために最も効率的なレバレッジ(てこ)を探し、そこだけに注力した点。 それこそが、世界の貧困層10億人の半数が従事する農業の生産性向上である。

 

つまり、あらゆる産業の中で、農業に注力することで、貧困を改善し、食糧供給を安定化させ、しかも粗放的農業による環境ダメージを最小化できるというのが彼の主張だ。

 

解決に向けたアプローチ

アフリカを初めとする多くの農業貧困地域では、いまも青銅器時代変わらない粗放的な農業が営まれている(つまり、種をまくだけの農業)。

一方、先進国やアジアなど歴史的に農業効率を改善してきた地域では、こうした状況を劇的に改善するための手法が確立されている。

 

とりわけ、
①ハイブリッド種による品種改良
②肥料などのインプット
③農業従事者への教育と現場レベルでの改善
の3つが鍵になることが過去の事例からも明らかになっており、One Acre Fundが活動するサブ・サハラ・アフリカ(SSA)は他地域に比べて、拡大・改善の余地が大きい。 


こうした確立されたモデルに、肥料や収穫物を輸送するための物流網や、季節的に生じる資金ニーズに答えるマイクロファイナンス、現場レベルでのトレーニングなどを加えたのが、One Acre Fundの活動だ。

 

事業拡大の戦略

彼のモデルの凄さは、「貧困の解決はイノベーションそのものではなくデリバリー(届けるプロセス)にある」という仮説の普遍性にある。


例えば、One Acre Fundが取り組む食糧生産と農業の分野では、品種改良や肥料、植え付けであり、医療であればマラリア用ネットや幼少期の予防接種、寄生虫駆除、エネルギーであればソーラーランプやストーブ、教育であれば能力別授業やコンピューターを活用した個別指導など、応用の幅は数え切れない。

 

もちろん、こうしたサービスを無料で提供する必要はなく、貧困地域にあるチャネルを使ってビジネスとして拡大していくことも可能だろう。2015年の団体の報告書には、実際にソーラーランタン15万個、蒔ストーブ7千個、貯蔵用バック2万枚を販売・頒布したことが記されている。

 

こうした広大な物流・管理網を常に拡大していくために、この団体では、200名のRural Service Officerがひとりあたり200人の農家を担当し、これまでに累計40万人の農家へインパクトを届けている。

 

数字から見るOne Acre Fund

活動の概要:設立は2006年、去年がちょうど10年目になる。 東アフリカの30万人の農家、政府とのパートナーシップも含めると59万人の農家にサービスを提供し、4,000人のフルタイムスタッフを雇用。地域別に見れば、ケニアが14万人で最大、次がルワンダの11万人、ブルンジ4万人、タンザニア2万人と続く。所得の増加は100-150ドル程度。


アグレッシブな成長:この数年の拡大は毎年数十パーセントに上る。 2020年までに100万人の農家にサービスを届けることをゴールに掲げている。これとて、始まりにすぎず、アニュレポではアフリカだけで5000万人の市場規模があるとしている。

 

余談

余談がしたすぎるので専用のセクションを作ってしまった。 

 

 プレゼンテーション中、アフリカ全土の地図を50マイル四方に区切って貧困レベルで塗り分け、その最も困難な地域がアメリカの東海岸に満たない限られた面積であると言い放つシーンはとてもパワフルだ。。。(そもそも、ロジスティックが問題になるのは、面積が広いからではなくて遠隔地に貧困地域が点在しているからだというツッコミはあるが)

 

下のアフリカ地図で青く塗られた地域が最貧困地域で、その面積をアメリカに例えると東海岸の青塗り部分ほどのエリアになる。

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