Zeitgeist

留学した後の話。

WIRED CONFERENCE 2013

WIRED CONFERENCE 2013というイベントに行ってきた。そもそもWIREDはアメリカで創設された「デジタル・カルチャー誌」であり、日本へ上陸したのはごく数年前のことである。もともと、GQというこちらも世界各国で出版されているカルチャー誌と同系列の季刊誌らしい。

今回のテーマは、オープン・ガヴァメントということで、オンライン化が政府と市民との関係にいかなる影響をもたらすか、というテーマでアメリカ、エストニア、日本の専門家10名近くが7時間にわたり話をした。

 

ふるいつきたくなるような内容で、興奮のあまり膝が震える。

何より驚いたのは、編集者の感性の鋭さだ。

雑誌の方針や今回のイベントの総指揮をとるのは、若林さんという編集長。

別段格式張るでも、かといって過分にくだけた様子でもなく、彼が冒頭にさらりと言ってのけた「年四回の記事は全部だいたい前年のうちに決めてしまう」という言葉に卒然とする。

ぎりぎりまで締め切りにぎゅうぎゅうと追いつめられ、毎回ごとの編集に追われている、以前テレビで見た漫画家のような仕事ぶりを想像していた自分には、これが全く意外なものに映った。

だって、先見を自負する人々がようやくアンテナを立てているこの分野を、一年も前から企画していた、というのだから。

会場でたまたま出会った、旧知の活動家は「革命前々前夜」のようだとこの会合を評していた。

それでさえも、十分尖っていて、新しいはずなのに、それを気負いなく一年も前に見通してしまう眼力が正直恐ろしく思えた。

実は、日本で一番未来を見ているのは、いわゆる学者でも専門家でも実業家でも政治家でもなくて、全くテクノロジーにもビジネスにもバックグラウンドを持たない、音楽評論家であったのだ。

 

イベント後、興奮冷めやらぬ中、交流パーティーを端で見守る若林さんに早速質問に行く。

僕の詰問に応えて曰く、「自分は雑誌づくりの専門家であって、業界人でもなんでもない。世の中の出来事を読者目線で書いていくだけ。」と。

「大手誌が取りこぼして、これは書いておいて良いかな、と思うものを書くようにしている。」と。

 

こうした先見の明をもつ人が、日本の政治経済にどれだけいるだろうか。ひょっとすると、ファッションや、音楽といったいわゆる流行の変遷を敏感に感じ取りながら、同時に紙面を通して流行を創り出している彼らの方が、未来を先取りしたり、世間と少し離れて未来を創ったりすることに慣れているのではないか?

重ねて言うが、筆者にファッションの興味はない。だが、そこに集う人々が、未来に直接加わる人々と似たような人種であるということが、新たな発見であったことは疑いない。

僕の周りでは、しばしば、未来を拓くのはアントレプレナーだと言われることがある。でも実際のところ、アントレプレナーとか、何だとか、かっこを付けなくてもいいのではないか?

服が好き、音楽が好き、というのと同じようにして、虚心坦懐に自分ごととして物事をみることが、実は未来を体現することになるのかもしれない。

同様にして、自分の目の前に起こること、そして過去そこに起こり続けてきたことを見つめるだけで、その部分だけではない世界全体の流れまでもが見えてくるのではないのか?

 

先月発表されたロイヤルダッチシェルのシナリオを早く読みたい。