気候変動スタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀をしていましたが、気候変動スタートアップを創業するためスタンフォードにいます。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

Komaza 119週目:パロアルト出張

新年度の実働1週目。

欧米出張が入る予定で日本で待機していたところ、いきなり2日後に面談が決まり、その日のフライトに飛び乗って、カリフォルニアに来ている。

まだ対面する投資家が戻ってきていないようなので、まだクレージーではないけれど、年初の1週間でどれだけ段取りを仕切れるかどうかで、第一四半期での成果が決まると思っているので、正月ボケする頭を叩きながら、パソコンにしがみついた。

クリスマス休みで本当に1週間くらい仕事から離れた後遺症か、現場に戻ってきた負荷がいきなり厳しい笑

シリコンバレーの真っ青な空に励まされる。

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週末は1日休みをとって、パロアルト名物のコンピューター歴史博物館に行ってきた。

ワンフロアしかないこじんまりした展示だけれど、IBMがInternational Business Machineとして穴あきパンチを媒体としたデータシステムを開発した時代の話から、現代にいたるまで、実機がずらっとならぶ様子は圧巻。

コンピューター史の理解が浅すぎて、「すごいなー」しか感想がないのが悔やまれる。

 

 

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(保険のアナログ計算機、こんなんカチカチやりながらしていた時代を想像できない)

 

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(戦前のIBMの主力商品が意外とクールなデザインだった件。マットブラックの質感が、Thinkpadっぽい?)

 

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(ミサイルの軌道計算など、軍事技術としての計算機の役割はやはり大きかったらしく、冷戦下では軍事予算で兆円規模の投資が惜しげもなく投入された)

 

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(ニーマンマーカスが発売した世界初の家庭用レシピ・コンピューター。材料から作り方までコマンドがまさかの数字入力、数字表記だったこともあり、購入者にはもれなく1か月のプログラミング講習付き。一台も売れなかったらしく草)

 

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(PIXARの映像エンジン)

 

 

新興国でリープフロッグを実現させるものは何か?

正月休みに「新興国でリープフロッグを実現させるものは何か?」という議論をしていて、初歩的ながら実は考えたことなかったと思うので、書いてみたい。
 
日本やアメリカから「社会起業」やら「ソーシャル・イノベーション」やら「スタートアップ」のお勉強をしていた時は、アイデアの新しさや使われている技術にばかり目を奪われていたのだけれど、今となっては、アイデアをスケールを持って実行する難易度が高いアフリカ含む新興国では、「①モデルを作り、②スケールして、③生き延びる」を達成している事例が少なすぎて、5年以上インパクトを出しながら生き延び、スケールできれば、ほぼ自動的にイノベーションといえるのではないかとすら思えてきた(極論!)。
 
周りの事例を見る限り、①~③をすべて満たすために必要な要素は、次の7つに集約される印象。
  1. Entrepreneurship:最初に手を挙げて、何かを始める人がいなければ、イノベーションはアイデアで終わってしまう。理想にコミットして行動を起こす人がいることが、当然ながら第一歩になる。
  2. Technology:最先端かは別として、課題の解決に最も適した技術を選択し、開発し、適用できるか。新しいことは必ずしも価値ではなく、むしろ「カッコいい」アイデアほど、新興国などでは苦戦したりする。課題に直球で応える技術というのは、意外となかったりするので、古い技術を組み合わせたり、開発フェーズを規模で分けたり、工夫の余地はたくさんある。不確実性ありまくりの事業環境で「普通に動く」システムはほぼイノベーションといえる気がするくらい、稀である。
  3. Team / Talent:パイロットフェーズでは意欲ある2-3人が集まれば、何とかなる。ただ、これを事業化しようとすると、中間管理職を含めたミドル層など、きちんとした組織を構成するメンバーや、経験豊富な専門家もあわせたチーム作りが必須になる。当たり前のことに思えて、これが意外と難しく、アフリカで人材を外から引っ張れる欧米系企業がいまだに有利な理由だと思う。
  4. Finance:創業資金はもとより、技術開発や非線形的な成長のための投資をいかに効率的に集められるか(資金集めが大変すぎると事業づくりができない)、投資家と起業家の間のリスクリターンの目線があっているか、適切なインスツルメントが用意できるか。
  5. Economics:経済性を早い段階で意識できるか。課題も技術もたくさん考えることはあるなかで、どうすればBreakevenまで持っていけるかの仮説と検証。バーンそのものはスタートアップの宿命だけれど、コントロールできるかどうかが、投資家の資金提供が不安定な新興国では割と大切。各国の市場規模も大きくない中で、複数拠点化する際には特に大切。事業がオペレーションとして成立していても(それだけでも大変だし、すごいこと)、経済的に破綻しているケースが散見される。
  6. Ecosystem:事業が良ければ、成長する、というのは必ずしも正しくない。事業をサポートできるエコシステムがあるだけで、成功のハードルは一気に下がる。加えて、既得権益がある業界であれば、政府や他事業者などとステークホルダーマネジメントをする必要がある。
  7. Governance:細かいところはキリがないけれど、賄賂やら横領やら死亡事故やら、基本的な部分で足元をすくわれる話も聞くので、死なないようにする。IFCのPerformance Standardとかは網羅的でよくできているけれど、アーリーだと完璧な対応は難しい。

 

あるVCは、シリコンバレー的な一点突破主義よりもマネジメントのバランスを重視していて、「うわーすごい!」と思う会社ではなく、「しっくりくる」会社に投資する、といっていた。

新興国VCは、テック重視・マイノリティ保有のPE投資に近いので、わからないでもない。

先進国VCでおなじみのPower Lawが新興国でも通用するのかは、興味深いテーマだと思う。

Komaza 118週目:2020年仕事始め

 
今週はまだオフィスも投資家もオープンしていないので、落ち着いて仕事始めをする。
去年の積み残しや途中で終わってしまった会話をまとめて、淡々とメールを送っていく。
嵐の前の静けさという感じで、ここぞとばかりに抽象的な大仕掛けを考えることに注力する。
目の前の仕事に追われ続けた12月よりも、冷静に論点を整理できた。
 
正月休みは家族とゆっくり時間を過ごせたのもよかった。
18か月ぶりの休暇らしい休暇だったので、体を休め、運動をし、英気を養うことに注力した。
あとは、コーチングと振り返りなど、内省にじっくり時間を割くことができて、いつものように本を読み込んだりできなかったものの、満足している。
12月末に帰国してから、軽い燃え尽き症候群になったりもしていたので、何とか挽回。
あまりにしんどかったので、しばらく前に書いたブログや日記にいたく励まされた。
もちろん読者の方の役にも立ちたいけれど、ブログは未来の自分のために書いているのだなと再確認する。
 
 
年末振り返りでも書いた通り、今年は実行をやり切る年なので、最後まで心と体のバランスを保って、乗り切りたい。
 

屈原「漁夫の辞」

中国最古の選集である文選に採録されたこの短編は、楚の王族であった屈原が讒言により追放された実話に題をとっている。
初めてこの作品に触れた高校生の時は、さらっと読み流してしまったのだけど、正月休みにふとこの作品を目にして以来、頭から離れない。
面白いので解釈について考えてみたい。
 
物語は、歯に衣着せぬ物言いで都を追放された屈原が、出会った漁師の老人に「なぜあなたはこのようなところへ至ってしまったのか?」と問われるところから始まる。
屈原は「汚れ切った世の中で、澄み切った自分は受け入れられなかったのだ」と説明すると、漁師の方は「聖人は表面的な物事に固執することなく、うまく世の流れに合わせて変化するものです。どうしてそんなに物事を考えすぎて、自分を高いところにおいて、自分を追い込んでしまうのです?」と尋ねる。
「穢れと清らかさは共存できないもので、自分まで穢れてしまうなら、いっそのこと死んでしまうほうが良い(実際にこの屈原は投身自殺する)」と突っぱねる屈原に、漁夫は意味深長なほほえみを与えて、「川の水が清らかなら、冠のひもを洗い、川の水が濁っていれば、足を洗う。それでいいではないか」と唄いながら、舟をこいで去っていく。
 
この物語の面白いところは、その先が語られないことで、漁夫がにこりと笑ってから、説話にありがちな「人生というのは~」とか「聖人はそもそも~」とかいう解説が一切なされない。
屈原はそのまま死に向かって進んでいくし、漁夫は歌を歌いながら去っていく。
人生に対する2つの極端な態度が明示されながらも、「正解」を提示されることがない、ちょっと捉えがたい作品だ。
 
自分にとってのあるべき姿に限りなく忠実にあろうとする屈原と、表面的な善悪は適当にあしらいながら世の中を渡ることを勧める漁夫、どちらが正しいのだろう。
中国の古典を読んだことのある人ならだれもが触れたことがある普遍的なジレンマだ。
岩波の新訳を待つ間に、ネットでさらっと論評を読んで回った限り、解釈は基本的に漁夫に好意的で、「極端はいけない」だとか「世渡り上手であってよい」だとかをメッセージとして感じる人が多いらしい。
 
一方、僕は必ずしもこの作品のメッセージは必ずしもどちらか一方に正解を持たせているわけではないと思う。
屈原の清濁を混ぜることはできない、という言葉には「善悪の基準を曲げることができない」という内的な信念の強さと「それを世の中全体にいきわたらせたい」という対外的な願望の強さの両方が含まれる。
対する漁夫の「考えすぎで孤立しては仕方ないでしょう」という問いかけは、必ずしも屈原の潔癖な信念そのもの(前者)を批判しているのではなく、むしろ後者の世の中も自分の信念に従うべき(=世の中は間違っている)という部分について疑問を投げかける。「自分の信念を放棄する必要はないけれど、必ずしも自分が正しいとは限らないし、世の中の些事にいちいち首を突っ込んで反論していたらやってられないよ」程度のものであって屈原の持つ信念そのものを漁夫は認めている。
 
現に漁夫は屈原の「志を曲げるならいっそ自殺する」という言葉には反論せず、笑顔で応えた。
漁夫が最後に残した「莞爾」(にっこりと笑うさま)の意図が軽蔑なのか、承認なのか、がこの文章の最大の鍵である。
相手の思いを汲み取り、激しい反論にも笑顔で応える漁夫の態度そのものが、「自分は自分、他人は他人であり、違う意見であってもいちいち噛みつく必要はないし、自分と同じ意見になってもらう必要はない」という多様性を尊重する姿勢の象徴なのかもしれない。
 
そう解釈するならば、この作品のメッセージは「聖人のように善悪をきちんと弁えることは大切だが、いちいち世間の俗事に気を患わせて、独善的な行動をとり続ければ自分の身を滅ぼしてしまう。考え方は正しくとも、一人でお高くとまっているのが正しい態度なのか?相手のことを受け入れて世間に合わせることも考えないといけない」という意味なのではないか。
内的な善悪と外的な清濁を区別しないと、よくても独善になり、わるければ追放される、そういう意味なのではないか。
「聖賢であっても左遷されてしまうのか?」という意地悪な質問に漁夫はどう答えるのだろう?

2020年は「実行の年(続)」

1年前の振り返りで2019年は「実行の年」だと定義して、社内で積み上げた実績をテコに思い切った仕事を積み上げることを目標に掲げた。 

新興国のベンチャーという有象無象の世界に飛び込むということは、本当にチャレンジングなタイミングでいかに創業者のビジョンと事業の意義、そしてチームを信じて、不可能を可能にできるかを問われ続けることだと気づかされた。

出来ない理由は辞書をかけるくらいはあるけれど、それを一つ一つクリアして、苦い思いも飲み込みながら形にしていく。

そうやって匍匐前進を続けた先に、「あのベンチャーがこの領域を切り開いた」と言ってもらえる成果があるのだと思う。

ドラマのような決定的瞬間は(Bad Surpriseを除いて笑)まだ遭遇していない。いくつもの準備を重ねて、それらが徐々に好循環を生んで、施策の総体として奏功するというサイクルを辛抱強く回していきたい。

他責は何も生まないし、自分の能力不足を理由にするのもイケていないので、会社の実務内外でもしっかりとキャリアを作っていきたい。


本音を言えば、めちゃくちゃ怖いし不安だし、苛立ちや焦り、ストレスで押しつぶされそうなわけで、迷いに迷いながらもファイティングポーズをどうにかとり続けているというのが現実に近い。

それも含めてVenture Experienceだと思うので、CEOのTrusted Advisorとして、あるいはFinance Professionalとしての仕事を存分にやっていきたい。

それができるだけの準備を自分はしてきたのだと信じて、思いっきり振り抜きたい。

 

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(ビーチに新しいレストランができたせいで5キロ太ったのが今年最大のハイライトかもしれない)

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(CEOとチームで談笑している写真を撮るために談笑している図。あふれ出る勝手にトレーニー感)

 

2019年の振り返り

  • 仕事総括:これまでで最もチャレンジングな1年になった。2018年秋に急遽会社の財務全般を引き継ぐことになり、そこからしゃかりきになってチームを作り、オペレーションから戦略に至るまであらゆるプロジェクトを本職の資金調達と合わせて実行した。長期コミットも合わせれば東アフリカでもそれなりのトラックレコードになる金額をオリジネーションからエクゼキューションまで調達してきたわけで、単なるスタッフから管掌役員へ、あるいはプレーヤーとしての仕事にモードが切り替わった実感がある。想像以上に苦戦したことも少なくなく、「もう無理」というタイミングが定期的にやってきた。ギリギリの戦いの連続は消耗するし、もっと勉強しておきたかったと毎度慚愧に堪えないわけだけれど、振り返ってみればそういう環境で頭を絞った経験が、実感値として実務能力の非線形的成長につながっている気がする。自分が追い詰められて研ぎ澄まされる中で見えてくる自分自身の姿に驚いたこともあるし、納得したこともある。吉川英治の小説「宮本武蔵」で、一乗寺下がり松の乱戦の中で本能的に二刀流を見出した宮本武蔵と同じく、追い詰められた中のとっさの判断の蓄積から、いかに自分の強みと弱みを理解し、それをWinning Strategyに昇華できるか、というのが今のキャリアの問題設定なので、これは想定通り。

     

  • やったこと:
    • 森林ファンド:投資家からの関心は引き続き強い。会社本体の資金調達がようやくめどがついてきたので、ようやく時間を使えそう。

    • 資金調達:これも時間がかかっているのだけれど、順調にクロージングを重ね、峠を越えた印象。まだ全貌は発表されていないのだけど、FastGrowにも記事が掲載されている。

    • 戦略系プロジェクト:地域拡大や事業性にまつわるDD、既存オペレーションの経済性評価。その時ごとの炎上案件のサルベージ。

    • パートナーシップ:JICA、ケニア政府、グローバル森林保護NGOのConservation Internationalとの戦略パートナーシップ締結。ベンチャーだとスピード勝負と思われがちだけれど、公的機関のプレゼンスが大きい分、1年単位の仕込みだった。

    • 財務キャパシティ・ビルディング:会社の財務チームとガバナンスの支援。アーリーとグロースの間は、これまで「何とかなっていた」問題が顕在化する時期であり、エコシステムとしての財務周りの地盤固めをした。商事で正直いやいややっていた事業投資先管理業務がいかんなく発揮された笑

    • チーム:人材が集まらないといわれるアフリカにあって、自分を含む5人のチームになった。経験と技量もさることながら、めちゃくちゃハードワークして開発銀行等の重くて長いDDを同時並行でさばききる投資銀行・PE出身者のみのチームだ。資金調達後はバリューチェーンやオペレーションにも付加価値付けを強化していきたいので、戦略コンサル・投資銀行出身の我こそはという方はぜひ!

    • ポジション:社内財務担当からCEO室長・CFO的な役割に(結果的に)激しくシフトした1年だった。ファイナンスといいつつも、先進国の上場企業のように充実した法制度や資本市場があるわけでもない辺境のスタートアップなので、必然的に経営判断の筋の良し悪しが、財務上のインパクトを左右する。そうしていくと、会社の事業で重要になるイニシアチブの成功を支援することが仕事に入ってくる。年初にかけていくつか炎上していたリサーチ・分析ベースの仕事を引き受けたのがいい意味での転換点になった。炎上案件は短期にオペレーションの中まで入れ、かつ成果さえ出せればコントロールもしやすいので、ラーニングとしても割のいいプロジェクトだった。そうして全事業への人的・機構的・事業的理解を深めたことが、CEOのAdvisory業務につながっている。この3か月ほどは、実感値ベースで半分はCEOと話すことと話すための準備に充てられていた。ファイナンス専門家になるのではなく、ファイナンスをツールとして経営を議論する立ち位置へのステップアップができている。

    • Thought Leadership:自分の未熟さは百も承知の上で、それでもEmerging Fieldに飛び込んだからには、声を上げないといけない。新しいアイデアを発表し、業界の異なる専門家とオープンに議論しなくてはならない、「ソーシャル・エンタープライズ=被支援者」という構図はおかしいし、アメリカや中国のスタートアップが最高の人材を集めるように、難しい課題に挑む事業の側も頭を絞って業界にソリューションを提案し続けないといけない。日経SDGsフォーラムや、TICAD7といった日本系のイベントでKomazaを紹介したほか、国連のFAOではPrivate Finance for Sustainable Forestry in Africaというテーマでワーキンググループの一員として提言を行った。こうした活動は、すぐに効果が出るわけではなく、Distractionにもなりうるのだけれど、世界の片隅でひとりよがりの仕事をするのも同じく悪手なので、これはという機会に絞って続けていきたい。

 

  • 仕事以外:仕事で生き延びるのがやっと、という年で、まとまった旅行や勉強、趣味ができなかった。一方、60冊くらいの本を読めたこと、コーチングを始めたこと、来年に向けたフェローシップをとれたこと、など隙間に重ねたことは自分でもよかったと思っている。「忙しい時ほど、寝る前の15分を自分の未来のために使え」という前職のメンターの言葉に感謝している。あと、ブログも何とか(数週まとめというチートを含め)続けられていて、納得のいく記事も何本か書けた。

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(ケニア森林研究所・JICAとのパートナーシップ。関係者の皆様の1年以上の努力の積み重ねと先人の20年以上の研究に深謝)

 

Growth Opportunity

  • 「理解できないことが理解できない」という場面が何度もあった。黎明期の業界で、新しくて大規模なことに挑戦するからには、プレーブックは存在しなくて当たり前。それでも数多のステークホルダーが同じ景色を見れるようにあの手この手を尽くして仕事をする中で、「自分に何が理解できていないのか」や「相手に何が理解されていないのか」という基本的な問いに立ち返り、謙虚に地道にギャップを埋めていく大切さを痛感している。対社内・外でも誰よりも自社とファイナンスについて理解していないければいけない半面、自分の思考だけが先に進んで周りを取り残していないか、定期的に振り替える必要がある。あとは、年末にかけて疲れがたまってくると、理解できないことそのものへの怒りで視野が曇っていたように感じた。大変な仕事をしながら、泰然自若でいられるようになりたい。また、今年は初めて取り組む仕事が多かった分、来年以降はもう少し定型化・ナレッジ化していきたい。

 

  • 同じ会社で2年も過ごしてくると、自分の守備範囲の業務では誰よりも自分が詳しい「無双状態」になってくる。無双状態は学習の妨げになるので、スピードよりも速くカバレッジを広げていくことが大切で、その結果としてFellowから今の役割へと突き進んできたわけだけれど、そろそろ自社最適化が進みすぎているきらいがある。なので、2020年は意識的に社外との接点を広げてみようと思う。ちょうどボッシュ財団のフェローシップにも通ったので、こうした機会をフル活用して、自分の領域外に出ていきたい。あとは、今佳境のプロジェクトが終わって余裕ができたらコンサルなどもありかもしれない。異なる領域や事例を通じて、頭を切り替えたり、経験を抽象化したりしたい。最近は周りのベンチャーCFOのお誘いも頂くようになってきている。転職する気は全くないものの、Mark to Marketで実力を評価し、伸ばしていきたいし、自分の成長が会社の成長のボトルネックになることだけは避けたい。

 

  • いい加減30代が視野に入ってきて、Lifeというものの重みを感じられるようになってきた。20代前半のLife(実生活)はほぼFun(仕事・勉強以外のお楽しみ)と同義だったはずだが、結局のところそれは家族や周囲に対する参加責任を放棄していることでもあるわけで、「今は自分の人生に集中したい時期なので」という言い訳が効かなくなっていく気がする。仕事や研究以外には無頓着な自分のような人間は、意識的に課題設定をして取り組んでいかないといけないだろう。Management Professionalとしての学びを応用して、Life Managementという新しい領域を開拓するのだと考えるほかない。

 

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(日経SDGsフォーラムでの講演。大会場がいっぱいになるくらいに林業やSDGsへの関心が高まっていることに驚いた)

 

2020年は「実行(完了)の年」に

2019年の目標としたマイルストーンはまだ完了できていないので、それらを確実にモノにすることが、今年の目標というか至上命題。

1年前は「本当に色々大変だけど、ようやくスタートラインらしきものに立てた」という淡い実感があったのが、12か月の奮闘を経て、「ゴールが見える」ところまでたどり着けた。

まだまだ安心はできないけれど、必死になってやればなんとかできそう、という感じがするので、冒頭にも書いたようにあとは全力でクロージングを重ねていくのみ。

完了した後については、資金調達の本質的な目的である、予算実行のフェーズに入るわけで、ここもまだまだやらないといけないことがある。

ほかにも、視野を広げるためにも、インパクト投資やアフリカベンチャー周りで何か面白い企画をやってみたい(チームの皆さん、やるやる詐欺ですみません。。。)。

やりたいことは山ほどあるけれど、まずは目の前の仕事を片っ端からGet Doneしていく、そんな一年になりそうです。

今年もよろしくお願いします!

 

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