Komaza 104週目:ケニア3年目に突入
丸の内の高層ビルでの仕事を離れて、ケニアのド田舎で仕事を始めて今週で丸2年がたった。
ポジションがないフェローからCEOに自分のピッチをするところから始めて、チームを作り、東アフリカのスタートアップとしては珍しい投資銀行やPE出身者で固めたチームを形にできた。
同僚や先輩、色々な人の善意に支えられて、最初の頃は孤独にさえ感じていた「自分だけで頑張っている」という感覚がどんどん薄れていっている。
最近は、自分が周りについていくのが精いっぱいの無力感を覚えるほどで、これは仕掛けを業とする自分として一番うれしい悲鳴だ。
感想やら抱負やらは、年末年始に誕生日と何度も書いている気がするので、せっかく書き溜めた100本以上のブログを振りかえってみることにする。
ここからすべてが始まった。
色々な人にも言われたけれども、Great Decision!という感想は変わっていない。
いわゆる「有益な経験」かは今後の成果次第だが、やっていること、成し遂げたこと、今から挑戦すること、いずれにおいても後悔が一切ない。
卒論以来の気持ちの良い仕事だ。
情報こそが力であり、正しい情報を集めるためにあちこちにアンテナを張り、考えながら情報を拾い続けることが、正解らしきものに近づく数少ない道だと思う。
社会人になった時から、”It is my job to know”と言い聞かせて仕事をしてきたけど、これには何度も助けられている。
途上国なのか新興国かはさておき、ネット回線もちゃんとつながるし、ケニアのド田舎といっても、仕事の仕方はスタバがない以外、丸の内のオフィスと変わらない。これは結構すごいことで、昼夜関係なくヨーロッパやらアメリカとコールをつなぎ、情報を収集し、必要なデータのやり取りをする。
もちろん出張もするけれども、それはほぼクロージングのタイミングのみで下準備をきっちりできる分、まとまった成果を並行して出しやすい。
田舎で仕事をするとゆったりなイメージがあるが、むしろ自分と仕事しか向き合うことがないので、職業人生が大変充実している。
あとから振り返ると、職業人としての転機だったと思う。
Climate Policy InitiativeのClimate Finance Innovation賞を受賞したことが、業界にネットワークを広げ、国際会議で登壇が許され、単なるスタートアップの財務担当者ではなくKomazaのTomoとしての仕事につながっている。
加えて、前職の時から勉強してきた実務をいかんなく昇華できた案件でもあり、コンペティションの時はHBS出身やら新興国ファイナンス20年のベテランやらグローバル最大規模の財団CFOやら、とんでもない候補者と戦わされて脂汗をかかされた。
それでも、この時にUnderdogとして勝ち抜いた自信は、今でも苦しい仕事のたびに支えになっている。
この時でさえ、それなりにまとめていたけれど、この後体験したハードシップは、次元が違った。
環境が変わり、責任が変わり、仕事が変わり、チームが変わり、色々な変化が次々にやってきて、泳ぎ切った実感はなく、おぼれていないのだけは確からしい。そんな感覚。
死にそうになりながら必死に勉強して案件を片付けていくと、なぜか巡り合う問題の大きさもついてくる(汗)
この時の「炎上」くらいなら、今の自分は3件同時に定常業務と合わせて鎮火できるし、そもそも発火前にすべて抑えているだろう。
それくらい、事業の成長ペースは速く、覚悟を持って自分をストレッチさせないと、あっという間に陳腐化してしまう。
2年しかいないのに、色々な人がポジションの成長についていけずに脱落していった。
芸風の記事でもふれたとおり、異質な経験と異質な才能が合わさった時に、特異な成果が生まれるのだと思う。
なので、Komazaでの仕事は、仕事そのものとして面白いだけでなく、Extraordinaryな成果を残すための大切な投資でもある。
いうまでもなく、特異であることと優れていることは必ずしも一致しない。
けれども、これと思ったものを信じて追いかけ続ける意義を僕は信じているのだと思う。
というか、止められても追いかけてしまう。
それが自分なのだと素直に受け入れられるようになったことが、この2年の最大の成長かもしれない。
本当の勝負はこれからだ。
Komaza 103週目:KEFRIとJICAとのパートナーシップ締結
ハンズオンへのアプローチ
レベル1:分かっていることが実行できない
レベル2:なんだかずるずる遅れている
レベル3:何が何だかわからない
Komaza 102週目:
今週は月曜日からフルスイングで、進行中のリサーチプロジェクトを進める。
社内のリソース配分が見直され、自分のチームに投下されているAnalytical Forceは約3倍になった。
外部のリソース活用も含めると、相応に大きな所帯になってきたので、仕事の仕方や考え方も変えないといけない。
日々試行錯誤しながらも、大きなビジョンを持たないと自分で作った波に呑まれてしまう。
優秀なチームと千載一遇のチャンスをものにするために、できることをやっているのか、自問するだけで胃が痛くなるのを、ぐっと飲みこむ。
入社した時からCEOにも伝えているが、自分の成長速度が組織の成長の足かせになった瞬間が、自分の仕事の終わりである。
すれすれの毎日でも、何とか追い越されずに先を走れている。
これだからチャレンジはやめられない。
この数週間、あるフェローシップに応募するためにエッセーを書いている。
大学入試もそうだったけれど、優れた選考プロセスというのは、出願完了時点でプログラムで学ぶことの半分くらいは感じ取れる。
Reflectiveな設問、未来に対するビジョンの確認、ひとつひとつが仕事の頭の外で自分をストレッチさせてくれる。
課題解決をすることは大切だけれど、理想を考えることをやめてはいけないのだ、そういわれている気がする。
Komaza 101週目:バブルを探せ
「バブルはどこにあり、なぜ起こり、いつ崩れるのか?」
三菱商事一年目のとき、定期開催される部会のマーケット定点観測をしていた際に、毎回部長が言っていた問いだった。
当時は、原油と船舶のバブルが激しい局面を迎えていて、 投資先や関係部署、社内外から情報収集しながらのマーケット観測は非常に勉強になった。
新聞などに出てくる「バブル」は景気全体を指すことが大きいが、値段がつけられ投資の対象になるものはすべて局所的な需給バランスによって、波を生み、バブルが発生と崩壊を繰り返す。
昨今の米中貿易摩擦にせよ、Brexitにせよ、WeWorkにせよ、いい加減この好景気も終わるのではないか、ということマーケットがいちいちイベントに反応するびくびくした感じは去年末からずっと続いているわけで、資金調達命のスタートアップとしては、考えないわけには行けない。
ちゃんと数字を追い切れていないけれど、アセットクラスごとの印象としてはこんな感じだろうか。
Real Asset:不動産は価格上昇が続き、利回りと金利のスプレッドはぎりぎりまでさがっている。一方で、都市化やら経済発展やらで都市中心部のコア不動産などは、中長期的にはバリューを保てそうで(次のバブルでまた上がりそう)、価値が暴落しうるのは周縁部で「バブルだから」投資されたもの。インフラも相変わらず値段が高いし、森林もNCREIFはじめリターン目線はじりじり下がっている。リーマン後の量的緩和・低金利で安定収益を失った機関投資家がキャピタルゲインなどのアップサイドよりもキャッシュを求めて流れ込んできているので、信じられない低利回りでも投資家がついている。景気の修正局面直前な雰囲気はあるが、前回のサブプライムのように、コントロール不能なリスクは相当規制されているので、金融インフラそのものがぶっ飛ぶようなことはなさそうだ。90年代の日本のような不良債権化というのも、新興国やDistressedでない限り、リアリティがない。
Private Equity:マルチプル高い。そして、空前のファンドレイズ好調。うろ覚えだけど、2兆ドルに膨れ上がったドライパウダーの太宗は、修正局面まで投資期間ギリギリで待つものと思われる。PEファンドは閉じるまでわからないので、うまくタイミングが合って不景気で流れてきたディールが消化できれば、やばいやばい言われている2018~ビンテージのファンドもリターンが出せるかもしれない。同じ流れを、原油バブルの底だった2015年のエネルギー専業ファンドでよく見かけた。彼らは、関連産業企業のリファイナンスが一斉に焦げ付くタイミングを待って、底値でDistressedの優良アセットをつかみに行って、最高レベルのリターンを叩き出していた。
Venture Capital:ヤバそうな話の総本山、今回のバブルの中心な気している。バリュエーションの高騰もさることながら、グロースステージの資金調達が、IPOからファンドに移ったことで、価格が狭いコミュニティの中で作られるようになってしまっている。ただでさえも内輪意識が強いVCの中で作られた期待値と、市場の冷めたShort Termisimな見方がぶつかると、がっかりIPOになる。WeWorkのバリュエーションやら直前の創業者のさばき方やらには、末期感が漂っている。修正局面は"Cash is king"かつ外部調達が難しくなるので、Uberのように”Burn till make it”な企業は相当大変になるはず(デット調達もコストが上がっちゃうし)。一方、すでに水面に顔を出しているAmazonやらAppleやらGoogleやらキャッシュリッチな大企業が周辺企業を買いまくることになるのかもしれない。Softbankがどっちの側かは、判断が難しい(CashもあるけどDebtもある笑)。後述のPublic Marketとも、GAFAはじめとして直接つながっているので、象徴的なディールが崩れると、一気に資金が引き上げる可能性が高い。
Hedge Fundほか:ヘッジファンドが厳しい状況にあることは周知。そんな中でもトップファンドはリターンを出していたけれど、その筆頭格でリーマンを生き抜いたRay Dalioも今年苦戦しているなんて記事が出ている。ただ、資金流失はすでに進んでいるので、バブル崩壊の起点になることはなさそう。そういえば、MBSの後継商品として、再保険とかのCDOがリーマンショック以前と比べて数倍とかになっていた気がするけど(中身一緒笑)、これもシステミックなリスクはなさそう。
Public Equity:GAFAを筆頭にテックが引っ張っているのもあって、高い。あと、リーマン後に機関投資家相手に商売できなくなった投資銀行・金融機関のリテール進出は目を見張るものがある。ETFの拡大を憂慮する記事が出ていたけれど、リテール販売の爆増、中央銀行などによる買いオペレーション、低金利でリターンを求めてエクスポージャーを増やしたGPIFはじめとする超大型機関投資家のお金がぎっしり詰まっている上場株式は、それなりにやられるかもしれない。とはいえ、これは教科書通り。
Debt・Bond:リーマンショックの主役になったデットだが、その後の規制強化で、以前ほどマテリアルなリスクはなさそう。もちろん、ぎりぎりまで下がった金利とリスク基準が逆ぶれすることで大やけどするリスクテイカーたちは出てくるだろうけれど、それが経済全体を圧迫するとは思わない。ギリシャの危機なんて、Brexitのニュースですっかり忘れ去らてるけど、ヨーロッパの中央銀行の一つや二つデフォルトすることはあるかもしれない。
修正局面に至る道:
せっかくなので、ポジションをとっておこう。
今回の修正局面は、「テックバリュエーションの崩壊→上場株全体への波及→リスクオフによるクレジット収縮→修正局面突入→中央銀行機能不全→景気回復の長期化→政策による回復策(排外的関税、大型公共政策含む)」となると予想。
リーマンショックは、バブルが国際金融システムの中枢で大爆発して、システムそのものが連鎖的に破綻してしまったことで、Free Fallが起こったわけだけれど、今回は規制強化もあって、国際金融制度が崩壊するようなショックになるとは考えにくい。前回ほど深い落ち方はしないだろう。
一方、本当に怖いのは、一気に下降局面に突入した時に、すでに限界まで量的緩和をしている中央銀行が介入手段を失って、何もできなくなってしまうことだと思う。
既に各国とも長期金利がマイナスになったりして、投資家のバランスシートが徐々に狂っていっている中、マイナス金利を思いっきり強化するとも思えず、最終的には公共政策による政府セクター投資で乗り切る以外に景気刺激ができなくなってしまうとなると、なんだか戦間期のような感じだ。
今回のバブルを生んだのが中央銀行なら、今回のバブルのリスクも中央銀行にあるのではないか。
(実のところ最大のバブルは中央銀行のバランスシートであり、金が余っている状況でこれ以上金を増やすことが、経済を好転させることになるのか?)
そしてそれはショックの直接の原因ではなく、ショックを緩和する策が限られることで、回復にかかる時間が長引いたり、公共政策メインのポピュリスト的な政策(自国経済中心主義含む)に世界が傾くことなのではないか。
リーマンショックのキーワードがInterconnectednessだっただけに、今回はIsolationismがキーワードになるとすると国際政治的には興味深い。
ダメージの深さよりは長期化、InterconnectednessよりはIsolationismというのが今回の修正局面の特徴ではないかと思う。
というのが、ケニアのド田舎でぼんやり考えた今回の修正局面の見立て。どうなることやら。