気候変動スタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀をしていましたが、気候変動スタートアップを創業するためスタンフォードにいます。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

Komaza 50週目:同期たちがやってきた

今週は、水曜日・木曜日と新卒の会社の同期女子3人が来てくれた。
この前も同じ部署の後輩たちもきてくれていて、日本から1万キロ以上離れたアフリカの僻地にいてもなお、関心を持ってもらえることはありがたい。
30時間以上も移動に費やして、味噌汁やらカレーやらワサビやらを持って来てくれた彼らはもう仏様。
2日間だけでも、夢のような時間だった。
 
膨大な支援物資を早速活用して、今週はチキンカレーを作ってみる。
うまい、うますぎる。
一時帰国の時にカレールーを大量に持ち帰ることが確定。
 

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(旬のナスも入れてみた)

 

 

余談:

日本に残してきた生活、自分が挑戦するために手放した世界を久しぶりに突きつけられた気がした。
入社当時の幼さはすっかり消えて、みんな現場の若手中堅として落ち着いて仕事をしているのだろう。
彼らは商社という海外志向の強い職場であっても、伝統的な日本のメインストリームにいる。
彼らと話していると、ケニアに来てからわずか1年しか立たないのに、世界の片隅で自分の腕一本で挑戦をする生活が自分を変えてしまったことを実感する。
自分の中で変わった実感などほとんどなかったのに、随分ガツガツしてしまったなあと、なんだかしみじみしてしまった。
 
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Komaza 49週目:メンターとの再会

ドタバタしている間に、あっという間に1週間が過ぎてしまう。
先週末は、またしても投資家訪問で電撃ナイロビ出張。
目的は、90年代から韓国、インド、スリランカ、アフリカと新興国PE投資をして来た業界の大先輩に3年ぶりに再会すること。
70代(?)に突入した今でもニューヨークからいまだに東アフリカやインドにバリバリ出張をこなしているらしく、「ニューヨークで会うよりナイロビで会おう!」となった。
彼と最後に会ったのは大学の卒業式の直前。
アショカでインターンを通じてメンターになってくれていた彼に、インパクト投資をキャリアにするためにPEの世界に飛び込むと伝えた時だった。
 
世界トップクラスのマイクロファイナンス機関のボードも務めるザ・金融マンの彼なので、ファイナンスの勉強をすることは当然応援してもらえるものと思っていたら、「なんでもできる今みたいな時期こそ東京やニューヨークの高層ビルで仕事をしないで、現場に入っていって欲しい」とぼやかれたのを今でも覚えている。
「投資=ファイナンス」というイメージしかなく、テクニカルな勉強が重要だと思っていた当時の自分にはイマイチしっくりこなかったのだけれど、総合商社の中から投資判断とエクゼキューションの狭間にある絶壁をみるうち、「当たり前」が通用しない新興国市場でエクゼキューションの経験を積む意味がわかるようになった。
 
自分は言われたことを反芻して理解するタイプなので、これはという人からのアドバイスは定期的に見返しながら、咀嚼しようとする。
今回のKomazaへの転職も、実はこの言葉がきっかけになっていたりする(その後、試行錯誤しながら、最終的なアクションまで約2年かかったことになる)。
 
そんなわけで、Komazaでの仕事は喜んでもらえて、今回も貴重なアドバイスをもらうことができた。
なんだかんだ週末も仕事になってしまったけれど、人生と仕事は切り離せない時期だと思うので、試行錯誤を楽しんでいきたい。

Komaza 48週目:

今週はナイロビ出張。
ドナー支援の一環として、某戦略コンサルのチームと、会社の海外進出戦略についてブレストする。
社内で現場と経営の両面で議論をしていると、いつの間にか堂々巡りになってしまうこともあり、外の世界から客観的なフィードバックをもらえるのは非常にありがたい。
 
特に、開発やドナーの世界でありがちな、個人のこだわりやファンドの投資テーマの押し付け、特定の結論への誘導といったトラブルもなくプロジェクトを進められているのは、アフリカのソーシャルエンタープライズとしては珍しいことなのではないだろうか。
経営の優先順位づけの誤りが会社の危機に直結するベンチャーの世界で、ドナーの要求に負けて経営を誤ってしまう(例:事業モデルを見定めるために試行錯誤しないといけない時期に、特定のプランに沿ったプロジェクト実行を求められる)というのはスタートして間もないソーシャルエンタープライズにありがちな話。
そういうリスクを避け、ドナーと良い意味で信頼関係を作るためにも、プロジェクトのスコーピング段階で侃侃諤諤の議論を厭わずやりきる必要がある。
Corporate FinanceにGrant Fundingは一般的には含まれないが、一般的な資金調達が難しい新興国にあっては、機動的・戦略的にグラントやドナーを活用することも、ファイナンスの重要な機能だと思う。

Komaza 47週目:起業参謀という仕事

今回もスタートアップ・ネタ。

New York Timesに掲載されたElon Muskのインタビューは目を通した人も多いのではないか。

週120時間働き、人生を削りに削って仕事に向かう痛々しい姿に、それが優れた経営者の姿かは別として強い印象を受けた人は少なくないのではないか。

数日後には、ハフィントンポストの創業者Ariana Huffinton(本人も昔はスーパーハードワーカーとして有名だった)が公開書簡でElon Muskの仕事への姿勢は誤っていると糾弾するなど、実現すれば史上最高額だったMBOの撤回と合わせて議論を呼んでいる。

An Open Letter to Elon Musk(イーロン・マスク氏に宛てた公開書簡)と題された記事では、 

”This is not about working hard -- of course you’re always going to work hard. It’s about working in a way that allows you to make your best decisions.”

(抄訳:ハードワークしてはいけないという意味ではありません。最良の決断を下せるような働き方をするということです。)

といって工場やオフィスで寝泊まりする働き方が、本当に会社のために最も良いことなのか問いかけている。

 

 

 

もともとElon Muskのマッチョな働き方は有名だったけれど、個人的にはHuffinton氏の記事に対してTwitter上で、

 

 

と反論した姿に考えさせられるものがあった。

追い詰められているのは本当なのだろうし、ソフトウェア以上にコントロールすべき要素が多い大変な業界なのだと思う一方、経営者の孤独という語り尽くされたテーマを改めて思い浮かべてしまう。

特に象徴的だったのが、"You think this is an option. It is not.という言葉。

今の自分の役回りはプロとしてCEOに”Option"を示し、比較し、最善の決断をしてもらうことなので、今回のTeslaのように事業の状況が逼迫してきた時にどこまで役立つアドバイスができるのかは大切な問いだ。

 

 

結局プロフェッショナルとして会社にいる限り、CEOと同じ視点に立つことはできない。

第一線のヒリヒリ感を疑似体験したり、想像はできても、同じプレッシャーを感じることは不可能だし、むしろ同じプレッシャーを感じること自体にはなんの価値もない(だってみんなで不安になって、仲良しクラブしていたら、一体誰が冷静に経営を考えるのだろう)。

むしろ不安で押しつぶされそうになり、孤独感の中で戦う起業家をいかに(多少は)プレッシャーが少ない経営チームが支えること。

あるいは、中長期のシステムづくり、経営体制づくりを通じて起業家の知らぬ間にプレッシャーを軽減してしまうこと、それこそが経営における参謀やマネジメントチームの価値なのだと思う。

 

能力ギリギリで粘りながら、誰よりも切迫感と現実感を持って経営に向き合えるか、それが僕にとってのケニアでの挑戦だ。

CEOと話す前には毎度胃が痛いし、夜中に目がさめる。

仕事に失敗することの不安よりも、自分が独りよがりで仕事をしていないか、自己満足で本質的なインパクトのあるプロとしての提案ができていないのではないか、そもそも存在価値がないのではないか、そういう根源的な不安でうなされる。

 

スタートアップの仕事は、大企業なら「そんなの無理です」という仕事を「楽勝です」と言って引き受け、工夫をしながらなんとかしていくプロセスでもある。

そういう意味では、虚勢を張りまくるための根拠のない自信なしに成功は望めない。

一方で、まっさらな紙に事業の構想を書くときに感じる全能感に浸って、自己満足に陥れば、事業を危険にさらすことになる。

自分の能力をシビアに図りつつ、不安と対峙することで仕事の質を上げていくことが必要だ。

ときに自分の存在価値さえも疑いながら、自分の役割を研ぎ澄ました先に、プロとしてのあるべき姿があるのではないか、そう信じて「起業参謀」の仕事をしていきたい。

Komaza 46週目:閑話休題

先週の記事をかなりの数の方々に読んで頂いて、いい気になっていたら、ブログの更新を1週間飛ばしてしまったことに気が付いてしまいました。。。

なので、今回の記事が正式には「先週」の定期更新になります。 

tombear1991.hatenadiary.com

 

ケニアに転職すると伝えたとき、何人か「絶対行くよ!」といってくれた人たちがいて、来週から何組か三菱商事時代の同期や後輩が遊びに来る。

仕事の方は相変わらず忙しいのだけれど、ケニア有数のリゾート地なので迎えられるのを楽しみにしている。

国際機関やビジネスでいらっしゃる日本人の方に公私ともにお越しいただく機会も増えているので、ケニアのコーストの魅力が伝えられれば嬉しい。