気候変動スタートアップ日記

ケニアのスタートアップで企業参謀をしていましたが、気候変動スタートアップを創業するためスタンフォードにいます。米ブラウン大→三菱商事→ケニア。

Samuel Ullman "Youth"

安藤忠雄の本の「私の履歴書」の中にSamuel Ullman (1840-1924)というアメリカの詩人の詩が出てきて、非常に印象的なので備忘録代わりに。現地では無名だったこの詩人の詩をどこから出てきたのか、日本人が先に取り上げて里帰りをしたのだとか。アラバマ州には博物館も立てられているらしい。

 

"YOUTH"

Samuel Ullman

Youth is not a time of life; it is a state of mind; it is not a matter of rosy cheeks, red lips and supple knees; it is a matter of the will, a quality of the imagination, a vigor of the emotions; it is the freshness of the deep springs of life.

Youth means a temperamental predominance of courage over timidity of the appetite, for adventure over the love of ease. This often exists in a man of sixty more than a boy of twenty. Nobody grows old merely by a number of years. We grow old by deserting our ideals.

Years may wrinkle the skin, but to give up enthusiasm wrinkles the soul. Worry, fear, self-distrust bows the heart and turns the spirit back to dust.

Whether sixty or sixteen, there is in every human being's heart the lure of wonder, the unfailing child-like appetite of what's next, and the joy of the game of living. In the center of your heart and my heart there is a wireless station; so long as it receives messages of beauty, hope, cheer, courage and power from men and from the infinite, so long are you young.

When the aerials are down, and your spirit is covered with snows of cynicism and the ice of pessimism, then you are grown old, even at twenty, but as long as your aerials are up, to catch the waves of optimism, there is hope you may die young at eighty.

混在するアイデンティティ

今日は会社の仕事として日本のマイクロファイナンスの第一人者の方にお会いする機会があって、ホクホクしていたのだが、ふと思いついた質問が収奪型資本主義ではないかとの指摘を受けて、少なからず衝撃を受けている。

昨日の記事に引き続き、今日も社会事業をキャリアとするときに考えねばならないパズルについてずっと考えている。

自分が「これが未来だ!」と信じている世界観の中に、思わぬ固定観念が潜んでいる。

別にそれ自体は必ずしも悪いことではないんだが、高度に練り上げられたストーリーを携えて事業をやってみて、結局は表層的な固定観念で自分がそれをやっていたと気づくことほど空しいことはない。

週末に踏み込んで考えてみないといけないなと思う。

アメリカの大学で学んだこと、世界を動かすNPOや、戦略コンサル、留学という行為、そうした過去の経験のみならず、自分のアイデンティティそのものも今の僕のストーリーを支配している。

もともとは自分がストーリーの作者であったはずなのに、ストーリーが自分の作者担ってしまっているのではないか。

そう考えると夜も眠れない。

 

 

社会課題へ挑戦するというストーリー

大学時代にLearning for Allという学習支援を行うNPOで教師をしていた時からの付き合いで、教師教育者としても同世代のリーダーとしても尊敬する友人の留学報告会があった。

その時、アメリカの大学のNPO熱について非常に興味深い議論があり、考えの整理も兼ねてメモしておきたいと思う。

 

議論というのは、米国のあるNPOの参加者数がリーマンショック直後に急増しており、これは本来であれば金融業界などに行く予定であったトップ学生がその後のキャリアアップを視野に入れつつ金融を避けたためではないかというもの。

ここでは別にリーマン後にNPOに行った彼らを悪者としているのではなく、より大きな問題提起として、キャリアとしてNPOに行くことが果たしてSocial Justiceなのか、あるいは立身出世とSocial Justiceはかくも容易に両立してしまうものなのかを問ういている。

実際、Peace Corp, TFAなどのNPOや大学後の途上国支援をサポートするフェローシップなどは往々にしてエリートの登竜門とされ、そこの卒業生は名だたる一流企業や大学院への切符を手にすることがしばしばある。

ソーシャル領域への関心がようやく高まりつつ日本から見れば、それだけ立派なキャリアとしてソーシャル事業体が見做されていること自体がポジティブな驚きである一方、果たしてキャリアのためにごく限られた期間「社会課題に挑む」若者たちが、本当に社会課題の解決に貢献しているのかという問いは見逃されてはならないだろう。

 

ストーリーで人を説得するのは、アメリカ文化の重要なピースだ。

オバマが人種差別を語る、ヒラリーが女性のエンパワーメントを語る、トランプが事業化としての立身伝を語る、「体験した」「実践した」ということを重視するアメリカ社会において、社会課題に関わる体験は非常にパワフルなコミュニケーションツールになりうる(大手メーカーがブランド戦略として使う環境性・社会性アピール用ストーリーの数々にもこの傾向は明らか)。

才能ひしめく環境では、こうした説得のための戦術を駆使してやっと、抜きん出ることができる。

ただ、そうしたストーリーを戦術として使う中で、いつの間にか自分の目的と携わる事業の矛盾に鈍感になってしまうことは、何よりも恐ろしいことだと思う。

 

大学時代の開発経済学や政治経済学の授業で、国際機関による独りよがりの「後進国」支援がもたらす弊害について何度となくケースを読まされたが、当時は「どうしてこれだけ社会のためにと言っている人々がこうも自分の事業の結果に無頓着なのか」と首を傾げていた。

だがこの話も今回のテーマに鑑みれば、援助機関の人々も同じような立場に置かれて目的が倒錯してしまったのかもしれない。

そう考えると自分はどうなのか。ストーリーのためにやることと本来的な課題解決はマッチしているだろうか?

現場に立って、時間がかかろうとも執念を持って取り組む決意はあるのだろうか?

 

 

リラックスする時に眺めて楽しむ本

この前、「リラックスする時は何をしているのか?」と友人から聞かれたので、リラックスする時に読む本を紹介したい。

普段はビジネスや金融、ソーシャルイノベーション分野のコテコテの本やコンサルのレポートが多いので、その合間にビールでも飲みながら寝るまでに眺める本の幾つかをあげてみる。

 

いきなり!な感じがするかもしれないが、腕時計の名機30機についてその開発から現在に至るまでの経緯や進化を丹念に記した一冊。写真を見てるだけでも綺麗な時計があり、余裕があれば本文も見ると技術とビジネス(特にストーリーを伴ったマーケティング)両面から楽しめる。ちなみに、時計業界はスウォッチグループを中心に大手ブランドホルダーによる業界再編が急速に進んでおり、PEの視点からも非常に興味深い(そんなうがった見方で楽しむ人は少なかろうが)。

アイコニックピースの肖像 名機30 (東京カレンダーMOOKS)

アイコニックピースの肖像 名機30 (東京カレンダーMOOKS)

 

 

こちらはもう少しビジュアル系。シャネルやアルマーニなど、誰もが知るファッション界の重鎮たちの邸宅を写真にしたもの。とにかく世界観が圧倒的(生活感はゼロ)。

モードデザイナーの家

モードデザイナーの家

 

 

 日本随一の写真家土門拳の力作。「被写体にしたい」と思った人物をかたっぱしから障子に墨書して、ひとりひとり何年もかけて撮ったポートレート集。川端康成、三島由紀夫といった文豪から、尾崎行雄といった政治家、棟方志功のような画家に至るまで、魅力的で凄みのある昭和の傑人集でもある。画面からみなぎるエネルギーによく元気をもらう。

土門拳 風貌

土門拳 風貌

 

 

 同じシリーズの現代版。こちらはシリコンバレー版「風貌」。ジョブスとその周りの開発者の激動の日常をスナップしている。今の洗練されきった企業像とは違った、ベンチャー感みなぎるネクストの開発シーンなどが見どころ。

無敵の天才たち スティーブ・ジョブズが駆け抜けたシリコンバレーの歴史的瞬間

無敵の天才たち スティーブ・ジョブズが駆け抜けたシリコンバレーの歴史的瞬間

 

 

 新聞やテレビなどで誰もが一度は見たことのある有名な写真がどのように取られ、その前後に取られたカットの中からどうやって選ばれたのかを調べた一冊。写真集としても面白いが、その背景やシーンを切り取るための写真家の工夫などのエピソードも楽しめる一冊。

写真家のコンタクト探検―一枚の名作はどう選ばれたか

写真家のコンタクト探検―一枚の名作はどう選ばれたか

 

 

Elitism Fallacy: Illusion of Being Common

結局のところ、優秀であるかでは勝敗がつけがたい場に入ってしまえば、最終的には人との関係性、リーダーシップで価値評価が決まっていく。

その中で、いかに自分以外の価値尺度に対してエンパシーを持てるかが鍵になることは疑いのないことだ。

一見して愚かしくとも、無意味に見えても、そこに対して敬意を失わずに耳をすませ、内省できるか。

構成メンバーの感情に対して敏感になれるのかは、リーダーの重要な資質。

突出した極め方をしたものにこそ、Commonな心情や機微を学ぶ必要があるのではないか。

自己研鑽だけでは、どこへも行かないのだという戒めに。